十五度めまして! さつまです!

21_21 DESIGN SIGHTの吹き抜け、ワクワクします!
21_21 DESIGN SIGHTの吹き抜け、ワクワクします!
ART FUN FANをご覧の皆さん、こんにちは! もしかしたら、こんばんは。さつま瑠璃です。

21_21 DESIGN SIGHTさんといえば、広告・マーケティング・クリエイティブ業界で働く皆さんの中には、行ったことがある人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。「デザインを通じて日常を考え、提案を行う展示施設」と表現されているこの場所では、さまざまなインスピレーションが湧き起こる魅力的な企画を発信しています。

3月8日(日)まで開催中の企画展「デザインの先生」は、デザイン教育の現場や自身の制作を通じて時代の先を探り、社会に新たな局面をもたらした人物たちを「デザインの先生」として紹介する展覧会です。若い世代のデザイナーにも、そんな先駆者たちの功績や思想に現物を通して触れてもらい、次なるクリエイションへのヒントを得てほしいという願いが込められています。それでは行ってみましょう、出席!
21_21 DESIGN SIGHTは六本木駅・乃木坂駅より徒歩5分の東京ミッドタウンにあります
21_21 DESIGN SIGHTは六本木駅・乃木坂駅より徒歩5分の東京ミッドタウンにあります

ようこそ!私たちが、デザインを教えましょう

まずは展示室の入り口、6名分のバナーが来場者を迎えます。
左右に3名ずつの巨大バナーは圧巻!
左右に3名ずつの巨大バナーは圧巻!
それぞれが語った力強いメッセージを伝える、縦の垂れ幕にもご注目
それぞれが語った力強いメッセージを伝える、縦の垂れ幕にもご注目
作風や活躍しているジャンルは6名とも異なりますが、共通点といえるのは、主に第二次世界大戦後にデザイナーとして活躍したということ。戦後に社会が大きく変化する中で、人々の暮らしをより良くするにはどうしたらいいかを真剣に考えていた先生たち。それぞれが信念を持ち、自分らしいアプローチで突き進んできました。

現代も、社会が大きく動いているという点では、先生たちの時代に重なる部分があるかもしれません。先人たちの取り組みから何を感じ取れるか、というのが本展の見どころの一つです。

激動の時代にデザインで向き合った、6名の先生

展示室へ進んでいくと、最初に現れるのはミニチュアの椅子。これはエンツォ・マーリが手がけたプロジェクトの展示です。このプロジェクトでマーリは椅子の図面を公開し、「誰でもこの図面を使って、自分の手でつくってみなさい」と呼びかけました。自分でつくる、つまり手を動かし自分で考えることに意義があると訴えたのです。
図面を公開するのは当時では斬新なことで、賛否両論が巻き起こったとか
図面を公開するのは当時では斬新なことで、賛否両論が巻き起こったとか
映像と年表のコーナーを経て、実際に先生たちの作品を見られる空間が広がります。ここからは、6名それぞれの展示を見ていきましょう!
ブースのように6つに区切られている空間は、さながら各先生のクラスルーム!
ブースのように6つに区切られている空間は、さながら各先生のクラスルーム!
ブルーノ・ムナーリ(イタリア生まれ、1907–1998年)

日本でも有名なムナーリの絵本は、絵柄が描かれたページを並べたり、順番を入れ替えたりすることで、子どもが自分でストーリーを考えられる仕組みになっています。
感性を育てる絵本、小さい子どもにプレゼントとして贈りたくなる
感性を育てる絵本、小さい子どもにプレゼントとして贈りたくなる
さつまの目に留まったのは、この不思議な立体。「旅行のための彫刻」というタイトルで、折りたたむと平面状になり、手軽に持ち運べる仕組みになっているのだそうです。今回の6名の中で、ムナーリは一番の年長者。戦時下の暗い歴史を生きてきた中で、こんなふうにユーモアがあって、人の気持ちを明るく楽しくさせるようなデザインを残してきたというのは、勇気を感じさせてくれます。
「旅行のための彫刻」
「旅行のための彫刻」
アキッレ・カスティリオーニ(イタリア生まれ、1918–2002年)

照明をはじめ、インテリア用品を手がけたカスティリオーニ。よく見てみると、意外な素材が使われていることに驚きます。自動車のヘッドライト、釣竿のパーツ、イーゼルの脚にバネ……こうした既製品の組み合わせから新しいものをつくり出したのが、カスティリオーニの面白いところです。
バネの部分で煙草の灰を落としやすい灰皿
バネの部分で煙草の灰を落としやすい灰皿
こちらは自転車のサドルをほぼそのまま使った椅子。日常の中で一瞬だけ腰掛けられるような椅子がほしいと考えていたところ、農家の乳搾り用の椅子から着想を得て生み出したそうです。
例えば、電話がかかってきたときに少し腰掛けられるようなラフさが良い
例えば、電話がかかってきたときに少し腰掛けられるようなラフさが良い
カスティリオーニを一言で例えるなら、好奇心の塊。生前のスタジオには棚の中に物がごちゃごちゃと入っていて、さまざまな種類の日常使いの道具をたくさん集めていたことがわかります。普段よく使うツールを改めて観察し、なぜその形なのか、どんなふうに使われてきたのかを深く読み取ることを大切にする姿勢には、学ぶべき部分が大いにあるなと感じます。

エンツォ・マーリ(イタリア生まれ、1932–2020年)

先ほど見たミニチュア椅子の実寸大がここに。今回は多摩美術大学の学生が、図面のとおりに製作しました。図面には寸法などが書いてあるものの、詳しい組み立て方は載っておらず、頭を使いながらつくる必要があったそうです。
「自分で手を動かし、考えなさい」というメッセージを改めて考えさせられます。
「自分で手を動かし、考えなさい」というメッセージを改めて考えさせられます。
日本とも縁の深かったマーリには、展覧会ディレクターの田代かおる氏や、21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務める深澤直人氏が実際にお会いしていたそう。お二人曰く、マーリの印象は“厳しい先生”。「人の生活を良くしたい」という信念を持ち、厳格な姿勢を貫く方だったそうです。

その根底にある熱意を感じられる作品の一つが、こちらの磁器のシリーズ。「タタラ」と「紐」という技法に基づく、紐状のパーツと平らな面を組み合わせたお皿です。
マーリは、「この技法を応用してデザインの種類をもっと広げてほしい」と職人たちに伝えていました
マーリは、「この技法を応用してデザインの種類をもっと広げてほしい」と職人たちに伝えていました
オトル・アイヒャー(ドイツ生まれ、1922–1991年)

1972年のミュンヘンオリンピックのデザインを担当したオトル・アイヒャーは、グラフィックを多く手がけていました。本展でもポスターなど、平面のデザインを中心に紹介しています。
90年代前後の作品とは思えないくらい古さを感じず、洗練されていてかっこいい
90年代前後の作品とは思えないくらい古さを感じず、洗練されていてかっこいい
さつまが心惹かれたのは、こちらの配色のセンス。色ごとの幅が絶妙で、確かなバランス感覚を感じます。水色や黄緑、オレンジなどの色合いは、さっぱりとした爽やかさや元気のある印象です。
マスコットキャラクター(?)の犬が何ともいえずかわいい
マスコットキャラクター(?)の犬が何ともいえずかわいい
敗戦国となったドイツでは当時、この時期にオリンピックを開催するにあたって、「明るいオリンピックにしよう」という強い思いがあったそうです。それをデザインやビジュアルの観点から盛り上げたという功績は大きいもの。どんな状況下でも希望を持ち、「また頑張ろう」「人の気持ちを明るくしよう」という熱量を持っていたことが窺えます。

マックス・ビル(スイス生まれ、1908–1994年)

ビルを一言で表すなら、超多才。建築家でもあり、グラフィック作品や彫刻作品、家具などのプロダクトも手がけたデザイナーです。

数ある作品の中では、まずこのスツールにご注目。持ち上げるとコの字の面に物を置いて持ち運べる、という発想が面白く、さまざまな用途に転用できる設計です。奥の丸テーブルにはスリットが入っていて、折りたたむことで四角いテーブルに変わります。
今日は丸の気分?四角の気分?なんて選べるのは楽しそう
今日は丸の気分?四角の気分?なんて選べるのは楽しそう
一見バラバラに見えて実は規則性がある、数学的思考に基づいたデザインも必見。こちらの平面は、円と二つの弧というすべて同じ要素で構成されていますが、それぞれが与える印象はまったく異なります。
ビルの試行錯誤の形跡が見えるような、複数のパターン
ビルの試行錯誤の形跡が見えるような、複数のパターン
なお、ビルと先ほどのアイヒャーは、ともにドイツのウルム造形大学という芸術系の学校を創立したメンバーです。そこへ留学していたのがデザイナー、詩人、そして教育者の向井周太郎でした。向井さんは後に武蔵野美術大学の基礎デザイン学科を創立した方として、本展では関連展示を行っています。訪れた方はぜひ、お見逃しなく。

ディーター・ラムス(ドイツ生まれ、1932年–)

長くドイツのブラウン社でデザイン部門の責任者を務めていたラムス。彼の作品には個人のコレクターも多く、今も高い人気を誇るのだそうです。
温かみのある木の素材や、白よりもグレーを基調とした色彩は現代の感覚にも合う
温かみのある木の素材や、白よりもグレーを基調とした色彩は現代の感覚にも合う
作品は50年代から90年代と古い時代のものですが、今見てもおしゃれでかっこいいものばかり。シンプルでモダンな機能美の中に、使い手の日常に寄り添うセンスが光ります。
背面も見えるように展示したのが今回のこだわり
背面も見えるように展示したのが今回のこだわり

「もし好奇心がなければ、おやめなさい。」先生の格言を刻んで

最後は先生の一人、カスティリオーニの格言を心に刻みました。これは大学で講義を行っていたとき、「良いデザイナーになるためにどうしたらいいですか?」と学生から質問を受けた際の回答です。デザイナーはもちろん、あらゆる仕事や社会活動をする私たちにとって、深い学びとなる言葉たちが出口までを飾ります。
「もし好奇心がなければ、おやめなさい。」
「もし好奇心がなければ、おやめなさい。」

おわりに

デザインの先生たちの授業、アートライターの私にも刺激や発見の多いものでした。これを見て若いデザイナーたちが学び、成長していくことが、今回の展覧会に込められた願いだといいます。

広報担当の横川さんは、「開催にあたり、先生たちと実際に接していた方々にもたくさんご協力いただいたことで、一次情報としてお伝えできる内容がたくさんあります。今この展覧会を開催する意義の一つは、そこにあると思っています」と伝えてくれました。皆さんも、この先生たちに会いに行ってみませんか?

[イベント情報] 
会期:2025年11月21日(金)~2026年3月8日(日)
開館時間:11:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:火曜日
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
写真
さつま瑠璃
文筆家・アートライター。1994年神奈川生まれ。日本女子大学文学部で日本近代文学を専攻。会社員を経て、2021年よりフリーライターとして独立。芸術を主軸としつつ、カルチャー、旅、SDGsなど幅広いジャンルで執筆している。日本伝統文化検定2級。SNSでも情報を発信中。Web: https://www.rurisatsuma.site X(旧Twitter): @rurimbon
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