日本パブリックリレーションズ協会は、設立40周年を記念し、フォーラムを、13日オンラインで開催した。フォーラムのテーマは「PRへの期待と可能性」。畔柳一典理事長は「コロナ禍の混乱でコミュニケ-ションの重要性が再認識されている。社会の復興、円滑な生活にはPRの力は必須。PRが培ってきた相互信頼における合意形成力、信頼関係の構築力はソーシャルイノベーションに寄与する」と話した。

フォーラムでは、同協会の会員を対象とした調査「コロナ禍とパブリックリレーションズ」(回答者:232名)の結果を発表。「広報・PRが重視するステークホルダー」に関しては、コロナ後「従業員」が顕著に伸び。「強化すべき項目」で最も多かったのは、「従業員エンゲージメント」となり、インターナルコミュニケーション重視の傾向が見て取れた。

「コロナ禍での広報・PRへの姿勢」に関しては、「倫理観」への意識が高まっており、「経営判断が倫理性に欠けていた場合に、経営層へ率直に意見を言えますか」という問いには、8割以上が「言える」と答えた。また9割が、広報・PRは「ソーシャルイノベーションに寄与できる」と回答している。

倫理観や信頼感に基づいたPRの知見は、コロナ禍で対面コミュニケーションが難しくなった社会においても、人々の間に共感を生み出し、社会課題を解決することにも役立つ。そうした想いは、協会が同日発表した「2020年PRSJ宣言」の中にも表れた。
<前文>
Covid-19は世界を大きく変えました。
それは会うことの難しさを受け止めながら動いていく社会です。
対面によるコミュニケーションが難しい時代の中で、
私たちはこれからの社会のあり方を模索しています。
社会はさらに複雑になりつつあります。
価値観が多様化していく中で、
考え方が違う相手に対して不寛容な社会も生まれ、
世界で様々な対立や衝突が起こっています。
企業にとってもこうした環境は、
事業の見えないリスクになっていくと考えます。
今、私たちが手にしている数多くの課題、
それは対話なくして解決できないものです。
だからこそ、私たちは伝えたい。
パブリックリレーションズがこれからの社会において
果たせる役割と可能性の大きさを。
パブリックリレーションズは
様々なステークホルダー間の対話による関係構築の概念です。
それは倫理観と信頼感に基づいた、
全ての人々を幸福にできるコミュニケーションです。
私たち日本パブリックリレーションズ協会は
今日まで培った数多くの経験と知見を生かし、
対話の難しい社会の中で人々の間に確かな共感を呼び起こし、
社会課題の解決に寄与していきたいと考えます。
世界を変えるソーシャルイノベーションは、
人と人をつなげる言葉と、他者への共感を大切にした
コミュニケーションから湧き上がってくるものです。
私たちは変化する時代を受け止めながら、
新たな気持ちで動き始めます。
パブリックリレーションズの力によって
世界をより良い方向へ変えていくために。
 

<宣言>
日本パブリックリレーションズ協会は
倫理観と信頼感に基づいた創造的な対話づくりの力で、
人々の中に共感を生み出し
世界を変えるソーシャルイノベーションに
寄与していきます。 協会理事4名によるトークセッションでは、本田哲也氏(本田事務所)がモデレーターを務め、上岡典彦氏(資生堂)、飾森 亜樹子氏(NEC)、松本理永氏(サニーサイドアップ)が登壇。経営に資するコミュニケーションとして、共感をキーワードに、社会・社員・会社のエンゲージメントを高めていくための共感と、社会全体に価値ある企業として認めてもらうための共感について議論が進んだ。共感を得ようと、声高に一方的に主張するより、社員の姿や製品といった事実から滲み出たもの、加えて時代・社会を主語にしたストーリーが、本物の共感を作るのではないか。そんな問いかけもなされた。

テクノロジーの力で共体験の作り方が変わる中、業界を超えた深い共感は、共創につながり、不確実な時代においても、新たな価値やムーブメントを生み出す可能性がある。そんなメッセージを発信するセッションとなった。
トークセッションの様子
トークセッションの様子
同協会は1980年、事業会社の広報関係者団体である日本PR協会と、PR業協会とが合併統合し発足している。40周年を機に、協会の発展に貢献した計12名に功労賞が贈られた。各部会が推薦し決定した受賞者と授賞理由は以下のとおり。

◎PR業部会推薦(5名)/五十音順
◇井之上 喬氏(井之上パブリックリレーションズ代表取締役会長)
協会の理事時代はIPRAとの関係強化などを通じ日本のPRのグローバル化に尽力。本年、設立50周年を迎えた井之上パブリックリレーションズを創業、日本のPR業界を長くけん引してきた一人。多数の著作を通じてPRの理論と実践両面から業界に貢献。

◇越智 慎二郎氏(元・電通)
理事2年、常務理事2年を務めPRプランナー資格認定事業を、構想段階から一貫してプロジェクト牽引。事業化をなしえた。プランナー資格取得者はのべ3,000人を数え、協会の公益事業の柱となっている。

◇近藤 義昭氏(内外切抜通信社 代表取締役社長)
毎日新聞社会部記者を経て、メディアクリッピング・モニタリング会社を経営する傍ら、主に教育委員会委員として協会活動に参画。豊富な知見と人脈を生かして講座・セミナーの企画などに長年に渡って貢献。

◇西谷 武夫氏(ウェーバー・シャンドウィック・ワールドワイド日本法人会長)
グローバルPRエージェンシー日本法人のトップとして、長年にわたり日本のPR業界を牽引。パブリック・アフェアーズの重要性を啓発し、2011年には『パブリック・アフェアーズ戦略』を上梓。協会の理事を2年、監事を10年に亘り就任、その間、国際委員会(現国際・交流委員会)委員として、オランダ大使館訪問をはじめ、協会会員の国際的視野を広げるための多くの活動に直接関与。

◇橋爪 清氏(元・ピーアールコンビナート 代表取締役社長)
PR会社経営の傍ら、顕彰委員会活動などで長年に亘って協会事業に尽力。現在のパーソン・オブ・ザ・イヤー、シチズン・オブ・ザ・イヤー、PRアワードグランプリの前身である「日本PR大賞」創設時の中心的メンバーとして活躍。その後も長きにわたって当該事業の発展に貢献、本事業を主力公益事業として根付かせた。


◎企業部会推薦(5名)/五十音順
◇潮見 登氏(元・野村総合研究所、元・東京工業大学大学院 連携教授)
2011年から現在に至るまで、PRプランナー資格検定試験の専門委員として、すべての試験問題作成において尽力。豊富な経験に裏打ちされた幅広い知見と洞察が、試験問題のクォリティの維持、品質向上に寄与。PRプランナー資格制度の地位向上と発展に貢献。

◇柴山慎一氏(社会情報大学院大学教授、日本広報学会理事長)
2008年から2年間、PRプランナー資格制度の黎明期を協会理事・資格委員会委員長として、また、試験専門委員や協会内外におけるセミナー講師などの活動を通して資格制度の発展と普及に貢献。現在も、日本広報学会や社会情報大学院大学で精力的に活動、PRプランナー資格制度をサポートしている。

◇八木 隆氏(フォース代表取締役社長)
協会理事を2期4年にわたって務め、その後も、様々な場面で協会活動に尽力。特にPRプランナー資格試験制度の創設期、制度の基本的な設計、運営方法、試験会場の提供、さらに自ら試験問題作成に取り組み、資格制度実施に向け大きな役割を果たす。企業部会においても、長らく指導的立場を務め、今日の活性化した活動の基礎を築いた。

◇山田 悦朗氏(インターネットイニシアティブ)
理事2年、副理事長4年、監事4年と長期に亘り協会発展に多面的に尽力し、功績を残した。加えて、企業部会長として「企業部会フォーラム」「広報活動研究会」「広報ゼミ」の活動の基礎を築き、その人格に育まれた自由闊達な風土と文化は継承され今も生きている。

◇渡邉 幹夫氏(凸版印刷)
理事、副理事長として長年に亘り協会活動で活躍。特に広報委員会委員長として、協会自体のPRに努めた。また、ガバナンスを強化するために倫理綱領の刷新の必要性を訴え、改定草案を自ら作成。PR業と企業側との意見を何度もすり合わせ、2016年通常総会で採択された。


◎関西部会推薦(1名)
伴 一郎氏(元・伴ピーアール代表取締役社長)
1984年の関西部会創設時から尽力、幹事、理事の要職を務め、部会発展に大きく貢献。本業に加え環境保全など社会活動にも注力。水都大阪の活性化で日本河川協会、日本初の電池推進船就航で国土交通省から表彰され、また琵琶湖ヨシの保護活用で2001年PRアワード受賞するなどしている。
※伴一郎氏は2019年9月逝去されました

◎事務局推薦(1名)
岩渕昭子氏(東京経営短期大学教授/経営総合学科学科長)
2008年から2019年まで12年間にわたって協会監事を務め、管理会計の専門家として、協会経理事務の合理化と財務健全化に貢献。2012年の公益認定に際しても専門的知見を遺憾なく発揮。