宝島社がI&S BBDOと共同で立ち上げたプロジェクト「Mood Booster(ムードブースター)」は、広告表現におけるジェンダー意識についての調査を実施した。

近年、特に高い関心を集めているジェンダーというテーマ。社会の考え方が変わり、これまで一般的とされていたことが昨今アップデートされている。今回Mood Boosterでは、「女性におススメ」「女性でも○○」といった広告表現に注目し、広告におけるジェンダーの扱い方を女性はどう受け止めているのか、宝島社の女性読者モニタ(20~60代、各世代200名)を対象にアンケート調査を実施。その結果、広告や商品説明における不用意な「女性」という言葉の使用は、商品の購入意欲を下げてしまう可能性があることがわかった。

約半数が「女性にオススメ」などの広告表現に違和感

「女性も食べやすくてオススメ!辛さ控えめキムチ」「女性でも簡単!組み立て式ベッド」などと謳う広告。調査によると、回答者の約8割が普段から見かけると答えた。また、こうした「女性におススメ」「女性でも○○」といった広告表現に対して、約5割の人は違和感を覚えていることが明らかになった。

こうした違和感の正体を探るべく、さまざまな例を挙げて、違和感を覚えやすい「女性」の使われ方を探ったところ、ひとつは「女性も食べやすい! 辛さ控えめキムチ」、「女性でも飲みやすいフルーティな日本酒」など味覚的な表現に共通していた。そのほか、DIY作業が不要であることを表す「女性にありがたい! 配線や接続までおまかせの引っ越しセンター」や、体力づくりのハードルの低さを表す「女性でも続けやすいトレーニングビデオ」も違和感を覚える人の割合が比較的高くなった。また、これらの表現に違和感を覚える人は20代、30代で特に高い傾向にあった。

ジェンダーフリーの説明に対しては好感を抱く人も

一方、力仕事の楽さを表した「女性でも軽く持ち運べる掃除機」、「女性でも簡単! 組み立て式ベッド」、ファッションの男女の境界線を越えやすくする「女性にもオススメのメンズパーカー」といった表現には、違和感よりも好感のほうが高く、「女性」という言葉が筋力の性差やジェンダーフリーの説明になっている場合は、むしろ喜ばれることもわかった 。

違和感を覚える広告表現にはどのような原因があるのかを探ったところ、「女性におススメ」「女性でも○○」などの表現に対して、5割弱の人が「わざわざ『女性』という言葉を使う必要があるのかわからない」と回答しており、最も多い回答結果となった。これは、ほとんどの表現に当てはまるため、「女性」 を使ったどの表現に違和感を持つ人にも共通した認識と考えられる。特に60代においてこの考え方が顕著に見られた。

約3割の人は、一度違和感を覚えた商品は今後買わないと回答

「女性におススメ」「女性でも○○」と表現された商品を「違和感を感じたら買わないことがあると思う」人は、 回答者で最多の3割弱存在した。また、「必要である限り購入はするが、商品・サービスの好感度は少し下がると思う」と答えた人も2割程度。その場で買われないことはもちろん、好感度の低下も重なれば商品やサービス、ひいてはブランドや企業にも悪影響を与える懸念がある。一方、「特に問題を感じず購入することがほとんどだと思う」と回答した2割強を含め悪い影響はないと考える人も一定数存在するものの、商品やサービスの売り上げを左右すると回答した人の方が上回ったことは、見逃せない結果と言える。

では、いかに「女性」という言葉を不用意に使わずに、オススメしたい人に商品やサービスの特徴を伝えるられるか。回答者の案によると、例えば「女性も食べやすい! 辛さ控えめキムチ」は「辛いものが苦手な人にも!」「辛さレベル○○で控えめ」「みんなで食べられるマイルドキムチ」などに言い換えることができる。

味覚的なもの以外でも、単純に嗜好タイプを特定したり、客観的な基準を設けたり、対象の幅の広さを示したりと、「誰向けのどのような特徴がある商品・サービスなのか」のより具体的な表現が考えられる。少し表現方法を変えることで、「女性」「男性」というジェンダーで人を区別しなくなってきているいまの世の中で、より好意を持って受け入れられるのではないかと、調査を行ったMood Boosterは提言している。


<調査概要>
調査目的:広告表現におけるジェンダー意識調査
調査手法:インターネット調査(メールマガジンで配信)
調査期間:2021年8月7日~8月10日
調査対象:全国の宝島社雑誌の女性読者モニタ
回答者数:20~60代の各年代200名、計1000名