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コロナ禍でネットスーパーの需要が伸びるも…

矢本さんは、2017年7月に10Xを創業。現在は、献立の食材をネットスーパーでまとめて注文できるアプリ「タベリー」と、開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能な「Stailer」(ステイラー)といった2つのサービスを主軸に提供しています。

「タベリー」について矢本さんは、「例えば、5日分であれば5日分、食品が余らないように買い物リストが表示され、そこからワンクリックするとネットスーパーで、(献立に)必要なもの全部、必要な数量だけカゴに入った状態にできる機能があるんです。なので、献立を決めてクリックするだけで買い物が終わってしまう。あとは届くのを待つだけ」と説明。

そして、今年6月にローンチしたばかりの「Stailer」は、大手スーパーの「イトーヨーカドー」が導入しているそうで「同店の非常に使いやすいネットスーパーでの買い物と、『タベリー』でやっているようなレシピから買い物するものを探せる、両方の機能を持ったアプリを提供している」とのこと。

通常、システム開発や既存のシステムを大幅に変更するにはかなりの費用がかかりますが、「僕らは初期費用0円なんです。代わりに、基本的にはレベニューシェアでいただいています。なので、低いコストから(ネットスーパーを)始められて、成功していくに従って、お互いがちゃんとサクセスできるプライシングモデルとして提供しています」とメリットをアピールします。

新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発令された前後は、自宅で食事をする家が増えたこともあり、ネットスーパーへのアクセスが集中。矢本さんによると、平時の5~10倍だったそうですが、「商品を買えないユーザーが数多くいた」と言います。

その要因の1つは、アクセスが殺到したことによるサーバーダウン。さらには、配送枠の問題や注文された商品をピックアップする人員の不足もあって、コロナ禍で需要は大幅に伸びたものの、「供給が耐えられなかった」とネットスーパーが抱える課題について触れます。それを機に、「小売り・流通の経営者の方々のマインドは、もう1回これから(ネットスーパーを)つくり直しする方向にガラッと変わってきている」と実感を語ります。

「タベリー」が生まれたきっかけ

矢本さんにとって、大きな転機となったのは2011年に発生した東日本大震災。当時、23歳で宮城県仙台市にある東北大学大学院に在学中だった矢本さんは、「津波の被害で友人や友人の親族が命を失った」と言います。

そんな体験に、「自分がいま生きているのは“運”だなというのと、いつ死ぬかもわからないし、それって自分で決められないんだなということを衝撃的に理解させられた。人生を無駄にしてはダメだと気づいた」と振り返ります。

そして、ボランティア活動を経て丸紅に就職。大手総合商社という環境で仕事をしていくなかで、「もう少し身近な人のため、自分が“助けたい”と本当に思える人のために仕事ができて、小さくて経営の手触り感のある場所にいたい」という思いが芽生え、退職。その後、NPOでの勤務などを経験し、“自分でスタートアップをやろう!”と決意。しかしすぐには踏ん切りがつかず、「ちゃんと成長している会社の内側を知ったほうが成功への近道になる」と考え、メルカリへ。

矢本さんは、「これまでの仕事を通じて、わかったことが2つあった。1つは、いまの時代、ソフトウェアやインターネットのテクノロジーから発想ができるものでないと、未来が描けないこと。もう1つは、実在する誰かが深く抱えている課題をちゃんと見抜くこと。それをベストな形で解決するには、どういう仕組みやソフトウェア、プロダクトが必要か、両方を合わせて考える必要がある」と話します。

「タベリー」を思いついたきっかけは、妻の存在。第2子出産直後、育休を取得した矢本さんは、家事を手伝うなかで「1週間分、なにをつくるかを考えたり、それを買い物に落とし込んだりするという妻がやっていた作業を、そのままコピーして自分でやってみたらものすごく大変だった。これを解決する必要があるなと。モバイルやアプリで簡単にできたらいいなとか、AIや機械学習のようなテクノロジーが使えそうだな、といったことが合わさって『タベリー』が生まれた」と話します。

“選択肢を増やす”ことが楽しいにつながる

現在、同社では「未来に向けて、買い物の“選択肢を増やす”ことをやっている」と矢本さん。例えば、「1時間以内に(商品が)欲しいけど家から出られないとか、帰り道にパックされたものをドライブスルーで受け取って帰りたいとか、きちんと冷蔵された状態で“置き配”のような形で置いてもらうとか、店舗に行く以外の受け取り方のほとんどが、いまの世の中で実装されていない」と課題を挙げます。

選択肢を増やしていくためにも、「ユーザーの生活がこれだけ多様化しているなか、サービス側もしっかりと(ニーズに)合わせていけるようにスピードを上げていくことが必要だと思う」と語ります。

ハヤカワさんが「ネットスーパーの普及率が上がったら、ユーザー側としてどう生活が変化していくでしょうか?」と問うと、矢本さんは「食事を考えることや料理をすることなどの自由度がものすごく広がると思う。いまは、ネットスーパーの商品が届くから、その時間は家にいて料理のアイデアを考えて届いてから料理をする、みたいな“順番を固定された社会”になっている。

もっと、その流動性や自由度が上がると、“いつでもできること”に変わっていく。料理って、誰かのためにしたり、最後は自分で食べるという体験が残っていたりするので、創作性がある。その周りにある“負”を取り除いてあげると、楽しい部分が残るんじゃないかな」と話していました。

次回7月18日(土)の放送も、引き続き矢本さんをゲストに迎えてお届けします。どうぞお楽しみに!

2020年7月17日 イラストレポートを追加しました。

番組概要

番組名:マスメディアン 妄想の泉
放送日時:毎週土曜 24:30~25:00
パーソナリティ:ハヤカワ五味
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/mousou/
番組Twitter:@mosonoizumi_TFM

PODCASTPODCAST

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【パーソナリティ】
ハヤカワ五味
課題解決型アパレルブランドを運営するウツワ代表取締役。1995年生まれ。大学入学後にランジェリーブランド《feast》、2017年にはワンピースの《ダブルチャカ》を立ち上げ、D2Cで販売する。「ファッションデザイナー」と「事業家」の2つの顔を持つ。
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