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コピーライターという仕事

「ヒノノニトン」や「電気代にうる星やつら」など、数多くの名コピーを手掛け、まだ世の中に存在していない日本語を妄想してまとめたヒット書籍『妄想国語辞典」(扶桑社)の著者でもある野澤さん

少年時代は、「深夜ラジオが大好きで、1人で静かに聴いてクスクスしているような陰キャ(陰気な性格)な感じ」で、ラジオ番組のコーナーにネタを投稿する、いわゆる「ハガキ職人」だったそう。現在の職業とは、「出されたお題に対して、こちら側が言葉やひらめき、アイデアなどで打ち返すメカニズムに興味を持って、就職活動していくなかで出会った」と言います。

「お題を出す人たち(ラジオ番組)が広告主に変わった感じで、構造自体は似ているのではないか」との思いでコピーライターの門をたたいてみたものの、「やってみたら全然違った(苦笑)」と野澤さんは話します。

特に違ったこととして挙げたのは、コピーライターの仕事は報酬をもらって請け負うため「広告主の課題に対して、ビジネス的な成果で応えなければいけないこと」。

野澤さんいわく、コピーライターの仕事では「“広告主”“世の中の人たち”“自分”の3つの軸でアイデアを考えていく」とのこと。これに対し、ハガキ職人は“世の中の人たち”“自分”の2つの軸で「単純に、お題に対して面白いアイデアを出すこと」と、一見同じようでまったく異なるそう。

多くの人は、コピーライターと聞くと“キャッチコピーを考える人”とイメージしがち。しかし、「商品の名前をつくったり、CMのセリフやストーリーを考えたりすることもある」と野澤さんは言います。

さらに、「一番大きな役割は、その商品や企業が向かっていきたい方向に、言葉で矢印を立てていくこと。言葉によって社内の人たちが意思統一されたり、世の中の人たちのイメージがそこにセットされたり、表現の域だけでなく、事業領域や経営領域まで入っていくこともある。ビジネス戦略をつくっていくための言葉を考えるような仕事のほうが多い。そのやり方が理想的であるし、最近はそれを求められることが多い」と実感を語ります。

「なにをやっているかもすごく明快に…」

ハヤカワさんが興味を示したのは、野澤さんが影響を受けた人が誰なのか。

野澤さんは、「志村けんさんが最も会ってみたい人だった。言葉をつくるときの学びになっている」と声を大にします。

誰かを置き去りにした表現は多くの人の心には刺さらず、「ちゃんと誰にでもわかるような言葉を使うことや誰でも理解できるなど、お茶の間に対して“真摯な態度で向き合うことが意外と大切な商売だな”って、やってみて思う。そしてそれを、志村さんは “笑い”という形でやっていらっしゃった方だなって。

子どもからお年寄りまでみんな笑えるし、なにをやっているかもすごく明快にわかる。でも、いまの芸人さんでそれができている人はたくさんいなくて、すごく難しいんだろうなと思う。だから、全然違う商売ですけど、志村さんのスタンスに憧れますし、すごく刺激をもらっていました」と野澤さんは答えました。

最近「わからない」が増えている

コロナ禍のいま感じていることを尋ねると、野澤さんは「世の中やコロナの影響とリンクしているかどうかはわからないですけど、遠回しな表現が理解されにくくなっているなと感じています」と話します。

自身の業界では、コピーライティングしたものを世に出す前に、感想などをモニターに調査することがあるそう。「“わからない”と答える人が、特に若者に多いんです。“面白い”とか“つまらない”ではなく、“わからない”って言われてしまうと身も蓋もない。そこをいかにしてわかるようにするか、は以前よりも増えてきていますね」と語ります。

これにハヤカワさんは「例えば、おばあちゃんが使う言葉と若者が使う言葉って普段のままでしゃべると、結構通じづらいのかなと思う。だからこそ、パッと見て“わかりづらい”や“すぐに理解できない“などになってくるのかなって。幅広い人たちに届けるためには、ある意味、手腕が問われるのかもしれないですね」と感想を口にすると、

野澤さんも大きくうなずきながら「“みんながわかる言葉を発信し続ける”というのは基本ではあるのですが、意外とそこを求められているのかも」と気づきがあったようでした。

次回11月7日(土)の放送も、引き続き野澤さんをゲストに迎えてお届けします。どうぞお楽しみに!

※2020年11月6日 イラストレポートを追加しました。

番組概要

番組名:マスメディアン 妄想の泉
放送日時:毎週土曜 24:30~25:00
パーソナリティ:ハヤカワ五味
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/mousou/
番組Twitter:@mosonoizumi_TFM

PODCASTPODCAST

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【パーソナリティ】
ハヤカワ五味
課題解決型アパレルブランドを運営するウツワ代表取締役。1995年生まれ。大学入学後にランジェリーブランド《feast》、2017年にはワンピースの《ダブルチャカ》を立ち上げ、D2Cで販売する。「ファッションデザイナー」と「事業家」の2つの顔を持つ。
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