日本からソニー「Access™ コントローラー」など10団体が金賞受賞! 「IAUD国際デザイン賞2023」発表
国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)は、「ユニヴァーサルデザイン(UD)の更なる普及と実現を通して、社会の健全な発展に貢献し、人類全体の福祉向上に寄与すること」を基本理念とした活動を行っている。その一環として、民族、文化、慣習、国籍、性別、年齢、能力などの違いによって、生活に不便さを感じることなく、「ひとりでも多くの人が快適で暮らしやすい」UD社会の実現に向けて、特に顕著な活動の実践や提案を行っている団体・個人を表彰する「IAUD国際デザイン賞」を実施している。
今回、「IAUD国際デザイン賞2023」は、アメリカ、イスラエル、英国、カナダ、韓国、タイ、中国、日本の世界8カ国の44件のエントリーから、受賞作品を選出。2月20日には、受賞者の表彰と、金賞以上の受賞者および学生デザインチャレンジ優秀賞によるプレゼンデーションが行われた。
大賞、金賞受賞作品は以下の通り。
部門:地域計画部門
製作者:Michael Van Valkenburgh Associates
製作国:アメリカ
作品説明:
「『Gathering Place for Tulsa(タルサの集いの場)』は、オクラホマ州タルサ市の中心からわずか2マイルのアーカンソー川沿いに広がる66エーカーの公園です。市や地域の人々の協力のもと開発された「集いの場」として、年齢、身体能力、バックグラウンドなど関係なく、人々を公平に受け入れている大規模多目的公園です。さまざまな移動手段を利用する人々のための広い離合スペースや、手話の会話もゆっくりできる静かな環境スペースを備えるなど、法的要件をはるかに上回っています。生態系を考慮し、さまざまな素材を贅沢に使用したこの想像力豊かな遊び場は、タルサ地域でまだ支援を受けていない団体にも喜ばれる施設としてつくられています。」
審査員のコメント:
「ユニヴァーサルデザインの原則に根ざした公共スペースプロジェクトとして優れています。さまざまな方法で幅広く市民も協力しています。プロトタイプ、モックアップや模型を繰り返してできた包摂的なデザインは、模範的であり深く考えさせられます。この公園は人間の多様性や異なるニーズ、能力、経済的状況を配慮して創られており、人々の健康増進だけでなく、異なる民族、悲劇的歴史から出来た地域内をつなぐ特筆すべき場所です。」
部門:プロダクトデザイン
製作者:ソニー・インタラクティブエンタテインメントLLC
製作国:日本
作品説明:
「障害を持つプレイヤーがゲームをより簡単に、快適に、かつ長時間にわたってプレイできるように設計された、カスタマイズ性の高いPlayStation®コントローラーキットです。コントローラーの配置は、さまざまな身体的ニーズに合わせて自由に構成でき、さまざまなボタンやスティックキャップが位置変更可能なアナログスティックと共に組み込まれています。このコントローラーは、障害を持つプレイヤーと、主要なユーザー団体との協議を経て開発され、ゲームへのアクセスを広げ、ゲーム環境をより自由にコントロールできるように開発されました。」
審査員のコメント:
「Accessコントローラーは、アクセシビリティとPS5™の洗練されたデザインを融合させ、機能性だけでなく、美しさも兼ね備えています。このアプローチは、包摂的なデザインを重視し、すべてのユーザーがより没入感と満足感のあるゲーム体験を楽しめるようにしています。また、ゲーマーの身体的および個人的な要件に合わせてカスタマイズできるため、特殊な製品にまつわる差別や偏見を回避し、すべてのゲーマーに柔軟な解決策を提供します。」
「FACT-X現金自動取引装置」
部門:プロダクトデザイン
製作者:富士通/富士通フロンテック
製作国:日本
作品説明:
「FACTシリーズは、業界で初めてユニヴァーサルデザインのコンセプトを取り入れた自動現金預払機(ATM)でした。その後も進化を続け、UD対応では国内ATMを主導し、より多くの人々がATMを通じて金融サービスを利用できる社会の実現へ貢献しています。最新モデルであるFACT-Xは、操作部の視認性向上、操作部・画面案内の色調統一、文字サイズとコントラストの向上、誤操作や修正方法・箇所のわかりやすさなど、より多くの人々に安心して操作できるようにデザインされています。」
審査員のコメント:
「FACT-Xは、すべての人にとって安全で使いやすいことを保証する多くのUDイノベーションを含むATMデザインにおける重要な前進であり、富士通はこの分野で長期にわたって明確に先導的な役割を果たしてきました。審査員は、デザインプロセスにおけるユーザーの関与について言及がなく、それがデザイン決定に影響を与える可能性があったことについて若干の留保をつけました。」
「リハビリ・ウェルビーングゲーミフィケーション」
部門:医療・福祉
製作者:ソニーグループ/ソニー・インタラクティブエンタテインメント
製作国:日本
作品説明:
「上肢または体の片側に麻痺のある患者やシニア向けの新しいリハビリゲームです。認知、運動、反復を重視し、リハビリテーションの厳しいプロセスへゲームを取り入れることで、より楽しく継続しやすくすることを目指しています。テレビに接続されたカメラがプレイヤーの手の動きを追跡し、画面上に可視化され、落ちてくる妖精を捕まえてキノコに乗せることで、動くことや反応することを促進します。」
審査員のコメント:
「このプロジェクトはソニーの二つの部門間で共同開発され、イノベーション・プロセスにおける共創を優先し、操作機器の代わりにプレーヤーの手がインターフェースとなっています。ソニーはリハビリテーションの目標を支援し、ユーザーに楽しさを提供するためにゲーム使用時の大きな障害を取り除くことに成功しました。」
「世界の失明と視覚障害を新眼科医療機器『Smart Eye Camera』で根絶」
部門:医療・福祉
製作者:OUI
製作国:日本
作品説明:
「世界の盲人人口は4300万人で、そのうち半数以上は白内障などの予防可能な状態によるものですが、低開発地域や農村では医療従事者が不足しており、知識と資源に乏しい救急隊員に頼っている状況です。OUI Inc.は、スマートフォンのアタッチメントであるSmart Eye Cameraを中心とした包括的な眼科診断モデルを通じて、救急隊員が遠隔地の眼科医と画像を撮影・共有することでこの問題に対処することを目指しています。さらに、位置情報を取得することで、疫学研究に役立つという利点もあります。」
審査員のコメント:
「医療施設、人材、設備が乏しいアフリカやその他の十分な医療を受けられない国々における眼疾患に関連する診断の課題に対するシンプルで実用的、かつ公平な解決策です。訓練を受ければ誰でも簡単に使用でき、救急隊員や専門家ではない人材への迅速なトレーニングを可能にし、農村地域に効果的に専門医療を拡大できます。」
「要介護認定訪問調査システム ALWAYS® V」
部門:医療・福祉
製作者:東芝/東芝デジタルソリューションズ
製作国:日本
作品説明:
「介護ニーズ調査の効率化は、需要の増加と著しい熟練労働者不足のために喫緊の課題となっています。ALWAYS® Vは、ソーシャルワーカーが限られた時間内で、介護が必要と予想される受給者の健康状態を十分かつ慎重に診断できるようにデザインされたタブレット型PCアプリケーションです。手書き入力とタッチ入力を自由に切り替えることで、効率的なメモ書きと並行してクライエントとの対話を促進し、正確で公正な調査とデータ収集を保証します。」
審査員のコメント:
「すべての患者の客観的で平等な評価を保証する、健康データの収集と介護ニーズの評価の効率的で標準化された方法です。日本は医療介護分野におけるペーパーレスシステムへの移行がやや遅れており、これは日本の介護保険制度と連動して、必要な人々に対して公正で質の高いケアを保証する重要な一歩となります。」
「口腔洗浄器」
部門:医療・福祉
製作者:豊洋製作所/九州大学
製作国:日本
作品説明:
「口腔洗浄器は、介護が必要な高齢者にとって特に重要な口腔衛生を十分かつ効率的に行うことができ、使用方法も簡単で安全なため介護者の負担を軽減することができます。マウスピースを咥えるだけで、細かい気泡が放出され口腔内全体を優しく洗浄し、すすぎ水は安全に排出されます。研究開発チームは医療とデザインの経歴を生かして特定のニーズを把握し、高齢者による反復テストを経てエンドユーザーに受け入れられる製品を開発しました。」
審査員のコメント:
「介護を必要とする高齢者にとって良好な口腔衛生を確保するための便利な機器であり、有効な解決策がなかった問題への画期的な解決策です。ユーザーテストの結果、快適で使いやすく効果的な機器であり、簡単にメンテナンスが可能なことが確認されました。」
「ヘルスケア領域のデータポータビリティ『ポータブルカルテ』」
部門:医療・福祉
製作者:富士通
製作国:日本
作品説明:
「カルテの一元化は諸外国では進んでいますが日本ではまだ黎明期にあり、この新しいクラウドベースのサービスは、医療領域におけるデータの移行をシンプルかつ高度に整理された方式で迅速に行います。患者は、使いやすいインターフェイスのスマートフォンアプリを通じて、自分の健康・医療データを主体的に閲覧・整理することができ、医療従事者は、ダッシュボード形式で表示される大画面で患者データを確認することができます。」
審査員のコメント:
「電子カルテは日本ではまだ新しいシステムですが、今後、標準的なものになると思われます。医療情報へ安全で便利にアクセスできることは、カルテの共有とアクセスへの重要な一歩であり、効率性を高め、ミスを減らし、コミュニケーションを促進します。重要なのは、各個人の医療情報が医師ではなく個人に属するという考えが、将来、人間中心の医療システムの中心概念になることです。」
「デジテク・カード~ユーザー視点と技術視点をつなぐアイデア発想ツール~」
部門:共創デザイン
製作者:富士通
製作国:日本
作品説明:
「デジタルテクノロジーカードは、専門家でなくてもデジタルテクノロジーを直感的に把握できるアイデア発想支援ツールで、日常生活で生まれる課題へ新しいアイデアや解決策を生み出すように設計されています。27枚のカードで構成されており、高齢者施設、NGO、ボランティア団体、地方自治体、営利団体などの主要分野において、新しいデジタルサービスやソリューションの革新と開発にエンドユーザーの参加を促すことで、デジタルトランスフォーメーションを加速させることを目的にしています。」
審査員のコメント:
「あらゆるビジネスや組織におけるアイデア発想や製品開発プロセスにおいて、専門家とそうでない人とのギャップを埋めるための非常に興味深く有用なツールです。その目的は、共創し、ハイブリッド・コラボレーションを促進し、技術革新が、恵まれない人々や新技術にあまり馴染みのない人々を含む、すべてのユーザー・グループにとってアクセスしやすく有益なものになるようにすることです。」
「Collaborative Spaces: Embracing Diversity and Inclusion at BDP's Toronto Studio」
部門:インテリアデザイン
製作者:BDP Quadrangle
製作国:カナダ
作品説明:
「BDP Quadrangleでは、トロントにある新しいスタジオと北米本社に代表されるように、インクルーシヴデザインをすべてのプロジェクトの根底に据えています。同社は18の社内ガイドラインを開発しており、これは単なる物理的デザイン配慮を超え、すべてのユーザーが平等に考慮され、評価され、力を発揮できると感じる空間をつくり出すためのものです。『Collaborative Spaces:Embracing Diversity and Inclusion at BDP’s Toronto Studio(コラボレーション・スペース:BDPトロント・スタジオにおける多様性と包摂性の受け入れ)』は、コラボレーションとインクルージョン、アクセシビリティとウェルネスを促進する刺激的な空間であり、その結果、すべての人にとって健康的で回復力のある職場となっています。」
審査員のコメント:
「大企業がインクルーシヴデザインに意欲的であることは注目に値します。BDPがより良い包摂的な職場環境のための18のガイドラインを挙げたことは、その良い証拠であり、同社のトロントスタジオは、COVID後の多様な働き方に対応する真に包摂的な職場となっています。しかし、ナビゲーションとオリエンテーションに関するいくつかの問題はまだ十分に対処されていないと審査員は感じました。」
「XRキャッチボール」
部門:インタラクションデザイン
製作者:ソニーグループ
製作国:日本
作品説明:
「視覚障害を持つ父親が、息子とキャッチボールをしたいという願いから着想を得て、SonyのチームはXR Catchと呼ばれる仮想ボールを使用するゲームを開発しました。これにより、障害の有無にかかわらず、あらゆる年齢の人がキャッチボールの喜びを体験できるようになりました。「仮想ボール」という制約が、プレイヤーの想像力を刺激し、誰もが楽しめるゲームを生み出すとわかったことは、ユーザーと一緒にプロジェクトを進める中で、ソニーのチームが得た多くの気づきのひとつです。」
審査員のコメント:
「ソニーは、視覚障害の有無にかかわらず、他の人と楽しく一緒に運動するための創造的なゲームを開発することで一歩先を行っています。このプロジェクトは、あらゆる年齢層や身体能力の異なるユーザーからの意見を取り入れてゲーム体験を向上させることで、ユニヴァーサルデザインの模範となっています。この協力的な開発プロセスにより、幅広い人々がゲームを楽しめ、アクセスしやすくなっています。」
「発達障がい児童のためのセンサリールーム観戦の取組み」
部門:多様性包摂文化
製作者:富士通
製作国:日本
作品説明:
「富士通のチームは、誰もがスポーツを楽しめるようにすることで、包摂社会の実現と障害への理解を深める取り組みの一環として、日本で初めて、発達障害を持つ子供たちのために感覚ルームにおけるスポーツ鑑賞体験を実施しました。アメリカンフットボールと女子バスケットボールの9試合において、感覚ルームの試験運用を行い、大きな音、明るい光、賑やかな人混みが苦手な子供たちが怖がらずに、家族と一緒に選手たちを応援できるようにしました。」
審査員のコメント:
「音や光に過敏に反応する発達障害のある子どもたちが、家族と一緒にゲームを楽しめるようにすることで、あまり注目されず、解決策もほとんど存在しない真のニーズに応える、興味深く称賛に値する取り組みです。この取り組みは、発達障害に対する包摂性と認識を促進し、インクルーシヴ・スポーツ施設のモデルとなり得ます。」
「Life Skills Training Center at Washington State School for the Blind」
部門:住宅・建築
製作者:Washington State School for the Blind(Client)/Mahlum(Architect)/Chris Downey(Blind and Low Vision Consultant)
製作国:アメリカ
作品説明:
「『Life Skills Training Center at Washington State School for the Blind(ワシントン州立盲学校における生活技能訓練センター)』は、全盲や弱視の若者たちが成人期を乗り越える力を与えることを使命としており、自立した生活を送るために必要なツールを提供するだけでなく、日常生活に必要な物や建築資材を複数の形式で示したり、日常生活の主要な活動に不可欠な製品や設備とのさまざまな関わり方を紹介しています。目標は、参加者が自立して生活する能力を高め、利用可能な選択肢の実体験に基づいて具体的なニーズを明確に説明できるようになることです。」
審査員のコメント:
「ユニヴァーサルデザインとデザインジャスティスの概念を融合させた実践的でユーザー中心のアプローチの素晴らしい例であり、視覚障害のある若者が自分たちの環境について決定権を持ち、自信を持って自立生活を送るための必要なスキルを身につけることを可能にしています。」
今回、「IAUD国際デザイン賞2023」は、アメリカ、イスラエル、英国、カナダ、韓国、タイ、中国、日本の世界8カ国の44件のエントリーから、受賞作品を選出。2月20日には、受賞者の表彰と、金賞以上の受賞者および学生デザインチャレンジ優秀賞によるプレゼンデーションが行われた。
大賞、金賞受賞作品は以下の通り。
IAUD国際デザイン賞2023 大賞
「Gathering Place for Tulsa」部門:地域計画部門
製作者:Michael Van Valkenburgh Associates
製作国:アメリカ
作品説明:
「『Gathering Place for Tulsa(タルサの集いの場)』は、オクラホマ州タルサ市の中心からわずか2マイルのアーカンソー川沿いに広がる66エーカーの公園です。市や地域の人々の協力のもと開発された「集いの場」として、年齢、身体能力、バックグラウンドなど関係なく、人々を公平に受け入れている大規模多目的公園です。さまざまな移動手段を利用する人々のための広い離合スペースや、手話の会話もゆっくりできる静かな環境スペースを備えるなど、法的要件をはるかに上回っています。生態系を考慮し、さまざまな素材を贅沢に使用したこの想像力豊かな遊び場は、タルサ地域でまだ支援を受けていない団体にも喜ばれる施設としてつくられています。」
審査員のコメント:
「ユニヴァーサルデザインの原則に根ざした公共スペースプロジェクトとして優れています。さまざまな方法で幅広く市民も協力しています。プロトタイプ、モックアップや模型を繰り返してできた包摂的なデザインは、模範的であり深く考えさせられます。この公園は人間の多様性や異なるニーズ、能力、経済的状況を配慮して創られており、人々の健康増進だけでなく、異なる民族、悲劇的歴史から出来た地域内をつなぐ特筆すべき場所です。」
IAUD国際デザイン賞2023 金賞
「Access™ コントローラー」部門:プロダクトデザイン
製作者:ソニー・インタラクティブエンタテインメントLLC
製作国:日本
作品説明:
「障害を持つプレイヤーがゲームをより簡単に、快適に、かつ長時間にわたってプレイできるように設計された、カスタマイズ性の高いPlayStation®コントローラーキットです。コントローラーの配置は、さまざまな身体的ニーズに合わせて自由に構成でき、さまざまなボタンやスティックキャップが位置変更可能なアナログスティックと共に組み込まれています。このコントローラーは、障害を持つプレイヤーと、主要なユーザー団体との協議を経て開発され、ゲームへのアクセスを広げ、ゲーム環境をより自由にコントロールできるように開発されました。」
審査員のコメント:
「Accessコントローラーは、アクセシビリティとPS5™の洗練されたデザインを融合させ、機能性だけでなく、美しさも兼ね備えています。このアプローチは、包摂的なデザインを重視し、すべてのユーザーがより没入感と満足感のあるゲーム体験を楽しめるようにしています。また、ゲーマーの身体的および個人的な要件に合わせてカスタマイズできるため、特殊な製品にまつわる差別や偏見を回避し、すべてのゲーマーに柔軟な解決策を提供します。」
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部門:プロダクトデザイン
製作者:富士通/富士通フロンテック
製作国:日本
作品説明:
「FACTシリーズは、業界で初めてユニヴァーサルデザインのコンセプトを取り入れた自動現金預払機(ATM)でした。その後も進化を続け、UD対応では国内ATMを主導し、より多くの人々がATMを通じて金融サービスを利用できる社会の実現へ貢献しています。最新モデルであるFACT-Xは、操作部の視認性向上、操作部・画面案内の色調統一、文字サイズとコントラストの向上、誤操作や修正方法・箇所のわかりやすさなど、より多くの人々に安心して操作できるようにデザインされています。」
審査員のコメント:
「FACT-Xは、すべての人にとって安全で使いやすいことを保証する多くのUDイノベーションを含むATMデザインにおける重要な前進であり、富士通はこの分野で長期にわたって明確に先導的な役割を果たしてきました。審査員は、デザインプロセスにおけるユーザーの関与について言及がなく、それがデザイン決定に影響を与える可能性があったことについて若干の留保をつけました。」
「リハビリ・ウェルビーングゲーミフィケーション」
部門:医療・福祉
製作者:ソニーグループ/ソニー・インタラクティブエンタテインメント
製作国:日本
作品説明:
「上肢または体の片側に麻痺のある患者やシニア向けの新しいリハビリゲームです。認知、運動、反復を重視し、リハビリテーションの厳しいプロセスへゲームを取り入れることで、より楽しく継続しやすくすることを目指しています。テレビに接続されたカメラがプレイヤーの手の動きを追跡し、画面上に可視化され、落ちてくる妖精を捕まえてキノコに乗せることで、動くことや反応することを促進します。」
審査員のコメント:
「このプロジェクトはソニーの二つの部門間で共同開発され、イノベーション・プロセスにおける共創を優先し、操作機器の代わりにプレーヤーの手がインターフェースとなっています。ソニーはリハビリテーションの目標を支援し、ユーザーに楽しさを提供するためにゲーム使用時の大きな障害を取り除くことに成功しました。」
「世界の失明と視覚障害を新眼科医療機器『Smart Eye Camera』で根絶」
部門:医療・福祉
製作者:OUI
製作国:日本
作品説明:
「世界の盲人人口は4300万人で、そのうち半数以上は白内障などの予防可能な状態によるものですが、低開発地域や農村では医療従事者が不足しており、知識と資源に乏しい救急隊員に頼っている状況です。OUI Inc.は、スマートフォンのアタッチメントであるSmart Eye Cameraを中心とした包括的な眼科診断モデルを通じて、救急隊員が遠隔地の眼科医と画像を撮影・共有することでこの問題に対処することを目指しています。さらに、位置情報を取得することで、疫学研究に役立つという利点もあります。」
審査員のコメント:
「医療施設、人材、設備が乏しいアフリカやその他の十分な医療を受けられない国々における眼疾患に関連する診断の課題に対するシンプルで実用的、かつ公平な解決策です。訓練を受ければ誰でも簡単に使用でき、救急隊員や専門家ではない人材への迅速なトレーニングを可能にし、農村地域に効果的に専門医療を拡大できます。」
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部門:医療・福祉
製作者:東芝/東芝デジタルソリューションズ
製作国:日本
作品説明:
「介護ニーズ調査の効率化は、需要の増加と著しい熟練労働者不足のために喫緊の課題となっています。ALWAYS® Vは、ソーシャルワーカーが限られた時間内で、介護が必要と予想される受給者の健康状態を十分かつ慎重に診断できるようにデザインされたタブレット型PCアプリケーションです。手書き入力とタッチ入力を自由に切り替えることで、効率的なメモ書きと並行してクライエントとの対話を促進し、正確で公正な調査とデータ収集を保証します。」
審査員のコメント:
「すべての患者の客観的で平等な評価を保証する、健康データの収集と介護ニーズの評価の効率的で標準化された方法です。日本は医療介護分野におけるペーパーレスシステムへの移行がやや遅れており、これは日本の介護保険制度と連動して、必要な人々に対して公正で質の高いケアを保証する重要な一歩となります。」
「口腔洗浄器」
部門:医療・福祉
製作者:豊洋製作所/九州大学
製作国:日本
作品説明:
「口腔洗浄器は、介護が必要な高齢者にとって特に重要な口腔衛生を十分かつ効率的に行うことができ、使用方法も簡単で安全なため介護者の負担を軽減することができます。マウスピースを咥えるだけで、細かい気泡が放出され口腔内全体を優しく洗浄し、すすぎ水は安全に排出されます。研究開発チームは医療とデザインの経歴を生かして特定のニーズを把握し、高齢者による反復テストを経てエンドユーザーに受け入れられる製品を開発しました。」
審査員のコメント:
「介護を必要とする高齢者にとって良好な口腔衛生を確保するための便利な機器であり、有効な解決策がなかった問題への画期的な解決策です。ユーザーテストの結果、快適で使いやすく効果的な機器であり、簡単にメンテナンスが可能なことが確認されました。」
「ヘルスケア領域のデータポータビリティ『ポータブルカルテ』」
部門:医療・福祉
製作者:富士通
製作国:日本
作品説明:
「カルテの一元化は諸外国では進んでいますが日本ではまだ黎明期にあり、この新しいクラウドベースのサービスは、医療領域におけるデータの移行をシンプルかつ高度に整理された方式で迅速に行います。患者は、使いやすいインターフェイスのスマートフォンアプリを通じて、自分の健康・医療データを主体的に閲覧・整理することができ、医療従事者は、ダッシュボード形式で表示される大画面で患者データを確認することができます。」
審査員のコメント:
「電子カルテは日本ではまだ新しいシステムですが、今後、標準的なものになると思われます。医療情報へ安全で便利にアクセスできることは、カルテの共有とアクセスへの重要な一歩であり、効率性を高め、ミスを減らし、コミュニケーションを促進します。重要なのは、各個人の医療情報が医師ではなく個人に属するという考えが、将来、人間中心の医療システムの中心概念になることです。」
「デジテク・カード~ユーザー視点と技術視点をつなぐアイデア発想ツール~」
部門:共創デザイン
製作者:富士通
製作国:日本
作品説明:
「デジタルテクノロジーカードは、専門家でなくてもデジタルテクノロジーを直感的に把握できるアイデア発想支援ツールで、日常生活で生まれる課題へ新しいアイデアや解決策を生み出すように設計されています。27枚のカードで構成されており、高齢者施設、NGO、ボランティア団体、地方自治体、営利団体などの主要分野において、新しいデジタルサービスやソリューションの革新と開発にエンドユーザーの参加を促すことで、デジタルトランスフォーメーションを加速させることを目的にしています。」
審査員のコメント:
「あらゆるビジネスや組織におけるアイデア発想や製品開発プロセスにおいて、専門家とそうでない人とのギャップを埋めるための非常に興味深く有用なツールです。その目的は、共創し、ハイブリッド・コラボレーションを促進し、技術革新が、恵まれない人々や新技術にあまり馴染みのない人々を含む、すべてのユーザー・グループにとってアクセスしやすく有益なものになるようにすることです。」
「Collaborative Spaces: Embracing Diversity and Inclusion at BDP's Toronto Studio」
部門:インテリアデザイン
製作者:BDP Quadrangle
製作国:カナダ
作品説明:
「BDP Quadrangleでは、トロントにある新しいスタジオと北米本社に代表されるように、インクルーシヴデザインをすべてのプロジェクトの根底に据えています。同社は18の社内ガイドラインを開発しており、これは単なる物理的デザイン配慮を超え、すべてのユーザーが平等に考慮され、評価され、力を発揮できると感じる空間をつくり出すためのものです。『Collaborative Spaces:Embracing Diversity and Inclusion at BDP’s Toronto Studio(コラボレーション・スペース:BDPトロント・スタジオにおける多様性と包摂性の受け入れ)』は、コラボレーションとインクルージョン、アクセシビリティとウェルネスを促進する刺激的な空間であり、その結果、すべての人にとって健康的で回復力のある職場となっています。」
審査員のコメント:
「大企業がインクルーシヴデザインに意欲的であることは注目に値します。BDPがより良い包摂的な職場環境のための18のガイドラインを挙げたことは、その良い証拠であり、同社のトロントスタジオは、COVID後の多様な働き方に対応する真に包摂的な職場となっています。しかし、ナビゲーションとオリエンテーションに関するいくつかの問題はまだ十分に対処されていないと審査員は感じました。」
「XRキャッチボール」
部門:インタラクションデザイン
製作者:ソニーグループ
製作国:日本
作品説明:
「視覚障害を持つ父親が、息子とキャッチボールをしたいという願いから着想を得て、SonyのチームはXR Catchと呼ばれる仮想ボールを使用するゲームを開発しました。これにより、障害の有無にかかわらず、あらゆる年齢の人がキャッチボールの喜びを体験できるようになりました。「仮想ボール」という制約が、プレイヤーの想像力を刺激し、誰もが楽しめるゲームを生み出すとわかったことは、ユーザーと一緒にプロジェクトを進める中で、ソニーのチームが得た多くの気づきのひとつです。」
審査員のコメント:
「ソニーは、視覚障害の有無にかかわらず、他の人と楽しく一緒に運動するための創造的なゲームを開発することで一歩先を行っています。このプロジェクトは、あらゆる年齢層や身体能力の異なるユーザーからの意見を取り入れてゲーム体験を向上させることで、ユニヴァーサルデザインの模範となっています。この協力的な開発プロセスにより、幅広い人々がゲームを楽しめ、アクセスしやすくなっています。」
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部門:多様性包摂文化
製作者:富士通
製作国:日本
作品説明:
「富士通のチームは、誰もがスポーツを楽しめるようにすることで、包摂社会の実現と障害への理解を深める取り組みの一環として、日本で初めて、発達障害を持つ子供たちのために感覚ルームにおけるスポーツ鑑賞体験を実施しました。アメリカンフットボールと女子バスケットボールの9試合において、感覚ルームの試験運用を行い、大きな音、明るい光、賑やかな人混みが苦手な子供たちが怖がらずに、家族と一緒に選手たちを応援できるようにしました。」
審査員のコメント:
「音や光に過敏に反応する発達障害のある子どもたちが、家族と一緒にゲームを楽しめるようにすることで、あまり注目されず、解決策もほとんど存在しない真のニーズに応える、興味深く称賛に値する取り組みです。この取り組みは、発達障害に対する包摂性と認識を促進し、インクルーシヴ・スポーツ施設のモデルとなり得ます。」
「Life Skills Training Center at Washington State School for the Blind」
部門:住宅・建築
製作者:Washington State School for the Blind(Client)/Mahlum(Architect)/Chris Downey(Blind and Low Vision Consultant)
製作国:アメリカ
作品説明:
「『Life Skills Training Center at Washington State School for the Blind(ワシントン州立盲学校における生活技能訓練センター)』は、全盲や弱視の若者たちが成人期を乗り越える力を与えることを使命としており、自立した生活を送るために必要なツールを提供するだけでなく、日常生活に必要な物や建築資材を複数の形式で示したり、日常生活の主要な活動に不可欠な製品や設備とのさまざまな関わり方を紹介しています。目標は、参加者が自立して生活する能力を高め、利用可能な選択肢の実体験に基づいて具体的なニーズを明確に説明できるようになることです。」
審査員のコメント:
「ユニヴァーサルデザインとデザインジャスティスの概念を融合させた実践的でユーザー中心のアプローチの素晴らしい例であり、視覚障害のある若者が自分たちの環境について決定権を持ち、自信を持って自立生活を送るための必要なスキルを身につけることを可能にしています。」