Vol.51 エンジニアからデザイン組織のトップへ 49歳で進んだ未知の世界 キャリアアップナビ
キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、富士通でデザインセンター長を務める宇田哲也(うだてつや)さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
──24年勤めた日立を辞め転職を決めたきっかけは?
大学卒業後は日立製作所に入社し、国内や海外の通信事業者向けに光通信システムの開発を行うエンジニアをしていましたが、2001年頃になると通信バブルが崩壊。次の商機としてビッグデータの活用に注目が集まり、日立でも2010年頃からデータ分析事業に乗り出すことになりました。僕は2016年にアメリカに渡り、日立ヴァンタラという現地法人でAIソリューションの開発や経営企画に従事することに。その経験が買われ、2020年に富士通に採用されました。
日立時代にアメリカで仕事をしていた時、アメリカ人から「企業にインタビュー(面談)に行っているか?」と聞かれたんです。「転職するつもりはないから行っていない」と答えると、「自分の市場価値を知るために行った方がよい」と助言をくれました。それ以来、いろんな会社に行っては、「僕が貢献できることはありますか?」「僕が入ったら給料はいくらですか?」なんて質問をするように。そして新しい環境に行きたいと思い始めた頃、折よく、富士通から声がかかったんです。
当時の富士通はDXビジネスに本腰を入れるタイミングで、僕の採用もその推進のため。最初は関連サービスの開発などを担う部署に配属されました。でもその翌月、別の職務記述書(Job Description)を渡されたんです。
富士通グループのデザイン全般を担っていた子会社を本社に吸収合併し、「デザインセンター」を発足させる。その責任者をやってほしいということでした。システムインテグレーターである富士通がDXビジネスに挑戦するためにはブランディングとイノベーションが不可欠。それを推進し、デザイン経営を牽引する組織のトップです。
デザイン経営を進めるには、デザイン組織の責任者が経営に参画するのが一般的ですが、吸収合併した子会社ではその準備が整っていなかった。デザインが企業価値にどう貢献できるかは、事業全体を知らないと説明しづらいからです。そこで、同業他社で企業のバリューチェーンを全部経験していて、かつエンジニアという背景を持つ僕が適任だと会社は考えたのでしょう。システムや設計思想の構築も、ある意味ではデザインですから。
──ミッション変更に抵抗はなかったのですか?
逆に「チャンスだ」と思いました。新しいことへの挑戦は好きですし、期待に応えたい気持ちもありました。でも、僕はデザインの感性や経験はなかったので、とにかく勉強しました。有名なデザイナーのYouTubeを見たり、美術館に行ったり、他社のデザイン部門のトップに話を聞いたり…。興味を持ったというよりは、強制的に知識を頭に入れていきました。周りには笑われましたよ。「デザインは頭を柔らかくするためのものなのに、宇田さんは筋肉でデザインをとらえようとしている」って。でも、そうでもしないと自分の中に入ってこなかったんですよ。49歳までずっとエンジニア。ロジカルシンカーだったんですから。
強制的に知識を入れることは、今でも大事にしています。例えば、1週間分のビジネス系のテレビ番組を録画し、日曜日にその内容を要約してデザインセンターのメンバーに配信しています。自分の興味があることだけを見ていると、視野が狭くなる。一方で、強制的に見せられれば、知識をアップデートしていけると思うんです。 ──インハウスデザイナーに必要なことは何でしょうか。
自社事業や製品・サービスに直結したデザインができるのがインハウスデザイナーの良いところです。成果も実感しやすいと思います。
ただ、視野が狭くなりがちという問題がある「。自社の事業に貢献する」という考え自体は悪くはありませんが、デザイナーがそういう思考にとらわれると、担当する事業領域しか目に入らなくなり、社会に価値を生み出す役割が果たせなくなる。そこで富士通のデザインセンターでは、メンバーが社外に目を向ける機会を持つため、グループ外の仕事も受けるようにしています。
それに、大きなプロセスの一部として仕事をしていると、時間の使い方を自分でコントロールできなくなるという懸念もあります。しかし時間的な余裕、余白を持つことが、成果につながると考えています。
これは仕事以外でも同様です。ゴルフ好きで、年間150回ほどコースを回っていたアメリカ時代は、自分を追い込みすぎてボールが少しでも思った方向に飛ばないとピリピリしていた。帰国を機に、仲間と一緒に景色や会話を楽しんで、のんびりプレーすることを心掛けたら、なんとスコアが上がったんです。
仕事でも、成果を上げたければ余白を持ち、視野を広げて楽しんだ方がいい。日々の業務に追われても、組織の歯車のように働くのではなく、気持ちに余裕を持ち、自分のありたい姿に向けて興味のあることを追求してほしいと思いますね。
大学卒業後は日立製作所に入社し、国内や海外の通信事業者向けに光通信システムの開発を行うエンジニアをしていましたが、2001年頃になると通信バブルが崩壊。次の商機としてビッグデータの活用に注目が集まり、日立でも2010年頃からデータ分析事業に乗り出すことになりました。僕は2016年にアメリカに渡り、日立ヴァンタラという現地法人でAIソリューションの開発や経営企画に従事することに。その経験が買われ、2020年に富士通に採用されました。
日立時代にアメリカで仕事をしていた時、アメリカ人から「企業にインタビュー(面談)に行っているか?」と聞かれたんです。「転職するつもりはないから行っていない」と答えると、「自分の市場価値を知るために行った方がよい」と助言をくれました。それ以来、いろんな会社に行っては、「僕が貢献できることはありますか?」「僕が入ったら給料はいくらですか?」なんて質問をするように。そして新しい環境に行きたいと思い始めた頃、折よく、富士通から声がかかったんです。
──エンジニアから、なぜデザインセンター長に?
当時の富士通はDXビジネスに本腰を入れるタイミングで、僕の採用もその推進のため。最初は関連サービスの開発などを担う部署に配属されました。でもその翌月、別の職務記述書(Job Description)を渡されたんです。
富士通グループのデザイン全般を担っていた子会社を本社に吸収合併し、「デザインセンター」を発足させる。その責任者をやってほしいということでした。システムインテグレーターである富士通がDXビジネスに挑戦するためにはブランディングとイノベーションが不可欠。それを推進し、デザイン経営を牽引する組織のトップです。
デザイン経営を進めるには、デザイン組織の責任者が経営に参画するのが一般的ですが、吸収合併した子会社ではその準備が整っていなかった。デザインが企業価値にどう貢献できるかは、事業全体を知らないと説明しづらいからです。そこで、同業他社で企業のバリューチェーンを全部経験していて、かつエンジニアという背景を持つ僕が適任だと会社は考えたのでしょう。システムや設計思想の構築も、ある意味ではデザインですから。
──ミッション変更に抵抗はなかったのですか?
逆に「チャンスだ」と思いました。新しいことへの挑戦は好きですし、期待に応えたい気持ちもありました。でも、僕はデザインの感性や経験はなかったので、とにかく勉強しました。有名なデザイナーのYouTubeを見たり、美術館に行ったり、他社のデザイン部門のトップに話を聞いたり…。興味を持ったというよりは、強制的に知識を頭に入れていきました。周りには笑われましたよ。「デザインは頭を柔らかくするためのものなのに、宇田さんは筋肉でデザインをとらえようとしている」って。でも、そうでもしないと自分の中に入ってこなかったんですよ。49歳までずっとエンジニア。ロジカルシンカーだったんですから。
強制的に知識を入れることは、今でも大事にしています。例えば、1週間分のビジネス系のテレビ番組を録画し、日曜日にその内容を要約してデザインセンターのメンバーに配信しています。自分の興味があることだけを見ていると、視野が狭くなる。一方で、強制的に見せられれば、知識をアップデートしていけると思うんです。 ──インハウスデザイナーに必要なことは何でしょうか。
自社事業や製品・サービスに直結したデザインができるのがインハウスデザイナーの良いところです。成果も実感しやすいと思います。
ただ、視野が狭くなりがちという問題がある「。自社の事業に貢献する」という考え自体は悪くはありませんが、デザイナーがそういう思考にとらわれると、担当する事業領域しか目に入らなくなり、社会に価値を生み出す役割が果たせなくなる。そこで富士通のデザインセンターでは、メンバーが社外に目を向ける機会を持つため、グループ外の仕事も受けるようにしています。
それに、大きなプロセスの一部として仕事をしていると、時間の使い方を自分でコントロールできなくなるという懸念もあります。しかし時間的な余裕、余白を持つことが、成果につながると考えています。
これは仕事以外でも同様です。ゴルフ好きで、年間150回ほどコースを回っていたアメリカ時代は、自分を追い込みすぎてボールが少しでも思った方向に飛ばないとピリピリしていた。帰国を機に、仲間と一緒に景色や会話を楽しんで、のんびりプレーすることを心掛けたら、なんとスコアが上がったんです。
仕事でも、成果を上げたければ余白を持ち、視野を広げて楽しんだ方がいい。日々の業務に追われても、組織の歯車のように働くのではなく、気持ちに余裕を持ち、自分のありたい姿に向けて興味のあることを追求してほしいと思いますね。