9月4日、日本新聞協会は「第44回新聞広告賞」の受賞者が発表された。なお、贈賞式は、10月21日に帝国ホテルで開かれる第67回「新聞広告の日」記念式典で行われる。

「新聞広告賞」は1981年に設立された広告賞。「広告主部門」と「新聞社企画・マーケティング部門」の2分門で構成されており、優れた広告活動を展開した広告主、新聞社に贈られる賞である。

今回は、「広告主部門」225件(すべて単独広告主)、「新聞社企画・マーケティング部門」49件(単独企画47件、共同企画2件)の合計274件の応募があった。そのうち、広告主を対象として新聞広告大賞1件、新聞広告賞5件、優秀賞10件を、新聞社を対象として新聞広告賞5件、奨励賞6件が選出された。新聞広告大賞、各部門賞の詳細は、以下の通り。

新聞広告大賞

「土用の『うしの日』問題」
賞:新聞広告大賞
カテゴリ:広告主部門
広告会社:九州博報堂
ブランド:鹿児島県・鹿屋市
講評:「『土用の丑(うし)の日』に食べるのは、ウナギなのか牛なのか――。鹿児島県鹿屋市はふるさと納税の返礼品としてウナギの申し込みが多い時期に、もう一つの名産品である和牛もPRする新聞広告を地元紙と全国紙に掲載した。それぞれの食材を勧める生産者の掛け合いを紙面の表裏で展開し、メインコピーと本文で双方の思いを伝え、読者の好奇心をかき立てた。二次元コードで地元出身のお笑いタレント・サンシャイン池崎氏が登場するコミカルな動画に誘導し、両者の魅力をさらに発信。SNSやテレビ番組で取り上げられ、大きな反響を呼んだ。新聞広告を起点に、立体的な展開で自治体の知名度向上と地場産業の活性化に大きく寄与した広告企画として高く評価された。」

広告主部門

「団ランランタン」
賞:新聞広告賞
カテゴリ:広告主部門
ブランド:味の素
講評:「家族の温かい団らんが増えるクリスマスを前に、食事中のスマートフォン操作に気を取られコミュニケーションが希薄にならないよう、食卓での会話を促す新聞広告を掲載した。紙面を切り取ってランタンを作り、ライトをつけたスマートフォンに置くことで隠れていたイラストやメッセージが表れるという仕掛けで、自然と会話が促される空間を創出した。北海道のレストラン・カフェ10店舗では、スマホをテーブルに置いてランタンの明かりで食事と会話を楽しむイベントを実施し、テレビ番組やネットニュースで取り上げられSNSでも話題となった。紙の質感を生かし、食を大切にする企業姿勢を斬新な発想で伝えた広告企画として高く評価された。」
「生物多様性沖縄2紙マルチ新聞広告 『わたしたちが、絶滅危惧種になるまえに。」
賞:新聞広告賞
カテゴリ:広告主部門
ブランド:沖縄セルラー電話
講評:「沖縄県の2紙と地元企業が、豊かな自然の価値と保全の大切さを伝えるため、共同で広告企画を展開した。沖縄タイムスは『海』、琉球新報は『陸』をテーマに絶滅危惧種を含む動植物の原寸大のイラストを掲載した。1面から終面にかけて、広告枠を生物の形に合わせ大胆に配置したクリエーティブは、メディアやSNSで取り上げられ、普段新聞に触れない若者の間でも話題になった。紙面の大 きさを斬新なアイデアで活用し、読者の好奇心をかきたてながら問題意識を高め、沖縄県の生物多様性を伝えた広告活動として高く評価された。」
「『僕のヒーローアカデミア』シリーズ1億部突破記念キャンペーン」
賞:新聞広告賞
カテゴリ:広告主部門
ブランド:集英社
講評:「人気漫画『僕のヒーローアカデミア』がシリーズ世界累計発行部数1億部を突破したことを記念し、ファンへの感謝の気持ちを伝える広告活動を7日間かけて実施した。90人以上のキャラクターが集合したビジュアルを初日に全国紙に掲載。47都道府県を6地区に分け、主人公のクラスメートなどが1日ごとに地区を移動し、各地方紙に登場する広告を展開した。最終日には日本一周を終えたキャラクターが再び全国紙に登場した。キャラクターが全国の観光名所や特産品を楽しむクリエーティブは、SNSで大きな反響を呼んだ。全国紙と地方紙を組み合わせ、新聞の訴求力を生かし広範囲に話題を喚起した広告企画として高く評価された。」

「DAM1,000銘柄」
賞:新聞広告賞
カテゴリ:広告主部門
ブランド:第一興商
講評:「業務用通信カラオケDAMの販売30周年を記念し、サービス開始以来歌われてきたカラオケランキング上位1000曲の一覧を証券面に見立てた新聞広告を掲載した。株式銘柄のように曲名や歌手、選曲番号、順位を並べるとともに、読者に気付いてもらうため全ページ広告の右下部分に『一曲どうぞ。』というコピーの小枠広告を配置。さまざまな年代の曲があることで世代を超えて誰もが楽しめるようになっており、読者が自分の好きなアーティストの順位をコメント付きでSNSに投稿するなど大きな反響があった。読者になじみある紙面を広告枠のクリエーティブとして活用し、企業ブランディングに貢献した広告企画として高く評価された。」

「物流の2024年問題意見広告『Sorry Xmas!』」
賞:新聞広告賞
カテゴリ:広告主部門
ブランド:日本物流団体連合会
講評:「トラックドライバーの時間外労働の上限規制適用に伴い、輸送能力の低下により国民生活や経済活動に大きな影響が発生することが懸念される物流の『2024年問題』を消費者に問い掛ける新聞広告を掲載した。12月26日付紙面にクリスマスまでにプレゼントを届けられなかったサンタクロースが『Sorry Xmas!』と書き換えて謝るクリエーティブで、業界が直面する課題を伝えた。二次元コードから遷移する読者アンケートでは、物流関係者へのねぎらいや人手不足の現状に理解を示す声が多数寄せられた。新聞広告の表現力と日付を指定して掲載できる媒体特性を生かし、深刻な社会問題を分かりやすく伝えた広告活動として高く評価された。」

新聞社企画・マーケティング部門

「フェムケアプロジェクト×国際女性デー企画『知るって、やさしい一歩!』」 
賞:新聞広告賞
カテゴリ:新聞社企画・マーケティング部門
ブランド:産経新聞東京本社 メディアビジネス局
講評:「3月8日の国際女性デーを中心に、編集局と連動し女性特有の悩みに関する相互理解を促すプロジェクトを実施した。国際女 性デーのシンボルフラワーであるミモザをあしらった紙面を制作し、題字も花の色に合わせて変更した。お互いに背を向ける男女が描かれたラッピング紙面を折ると、2人が向き合い『ぜんぶは、わからなくていいかもね。あなたと私はちがうから』というメッセージが表れるクリエーティブを展開。男性をはじめ読者に広く自分事として捉えてもらうメッセージを発信した。多くの広告主から賛同を得て、SNSやフリーマガジン、イベントと連動し、テレビやラジオで取り上げられるなど大きな反響を呼んだ。新聞社の総合力を結集し、多様な生き方への関心と共感を広げた広告活動として高く評価された。」
「ハコブトチギ」
賞:新聞広告賞
カテゴリ:新聞社企画・マーケティング部門
ブランド:下野新聞社 ビジネス局
講評:「10月9日『トラックの日』の特集を皮切りに、物流問題に関する理解促進を図る広告企画を展開した。武骨なイメージの運送業や倉庫業などのイメージを払拭するため、柔らかでポップなイラストで物流を表現した全面広告を掲載。インフルエンサーでもある現役女性ドライバー『トラックめいめい』さんを起用した広告展開は、SNSで多くの注目を集め、反響は栃木県外にも及んだ。ほかにも、消費者にとって身近な食や宅配ボックスを取り上げた特集紙面による情報発信、ドライバー向けの『癒やし(フットケア等)』提供、子ども向けの見学・体験イベントを実施。これまで取引がなかった企業からも協賛を得て、物流業界をめぐる現状と課題を県民に伝え、関心を高めた広告企画として高く評価された。」

「長所県長野県~素晴らしき日々のそばに~」
賞:新聞広告賞
カテゴリ:新聞社企画・マーケティング部門
ブランド:信濃毎日新聞社 マーケティング局
講評:「創刊150周年を迎え、長野県の魅力を県内外に発信し、再発見してもらうキャンペーンを実施した。読者から募った長野県の長所計150点を、紙面やSNSと連動して発信。寄せられた長所を食用インキで印字した『そば新聞』を限定販売し、わずか1日半で完売する売り場もあるなど、好評を博した。創刊日の7月5日には『視点を変えれば、長所しかない。』のメッセージとともに、判読しづらい長体文字を使用 した縦長の見開き広告を制作し、離れて下から読むと『長所県長野県』という文字が浮かび上がるクリエーティブを掲載した。新聞社の企画力と表現力を生かし、協賛社とともに地域への愛着と誇りを高めた広告活動として高く評価された。」
「北日本新聞創刊139周年広告特集『OKANE QUEST』」
賞:新聞広告賞
カテゴリ:新聞社企画・マーケティング部門
ブランド:北日本新聞社 メディアビジネス局
講評:「2024年1月の新NISA制度開始前に、富山県民の金融に関する知識が十分ではないという調査結果を踏まえ、金融リテラシーを高める特集紙面を発行した。往年のロールプレーイングゲームの世界観を想起させるクリエーティブで読者の興味を引き、県民のお金にまつわるデータや専門 家へのインタビューを通じて主人公とともに金融知識を高めていく物語を創作。物価高騰や低迷する賃金など全国で抱える問題を取り上げ、幅広い知識を習得できる構成とした。営業活動で使いたいと金融機関から紙面提供の依頼があり、小学校では出前授業の教材として活用されるなど大きな反響を呼んだ。例年の周年企画を上回る協賛を得て、金融教育という難しいテーマを親しみやすく伝えた広告活動として高く評価された。」

「岡山たからもん~人のつながり 地域のチカラ~」
賞:新聞広告賞
カテゴリ:新聞社企画・マーケティング部門
ブランド:山陽新聞社 営業局
講評:「2018年7月に未曽有の被害をもたらした西日本豪雨災害から5年の節目に、21年から展開している『岡山たからもん』プロジェクトの一環として、被災地で前向きに生きる人々を紹介する広告企画を実施した。32ページにわたる別刷り特集では、『守った絆、生まれた希望』をテーマに、災害を糧に活躍する12人の歩みを表情が際立つ印象的な写真とともに紹介した。ウェブサイトでは岡山から生まれた防災の取り組みを発信したほか、紙面から抜き取って使える防災ハンドブックの掲載、若年層を意識したシンポジウムの開催など、防災意識の普及に努めた。地域に寄り添う地元新聞社が、多くの協賛社を得て、未来志向で災害の風化防止に取り組んだ広告企画として高く評価された。」