全日本広告連盟(全広連)は2月4日、第13回「全広連日本宣伝賞」を発表した。

同連盟は12月12日、第13回「全広連日本宣伝賞」選考委員会を開き、「松下賞」を井上礼之氏(ダイキン工業 名誉会長)、「正力賞」を一力雅彦氏(河北新報社 代表取締役社長)、「吉田賞」を谷喜久郎氏(新東通信 代表取締役会長)、「山名賞」を奥村靫正氏(TSTJ 代表アートディレクター)にそれぞれ贈賞することを決定した。各賞は、5月15日に開催する、福井市のフェニックス・プラザでの「第73回全日本広告連盟福井大会」式典内で贈賞が行われる。

「全広連日本宣伝賞」は、日本宣伝クラブが昭和30年代から行ってきた、「日本宣伝賞」の顕彰事業を同連盟が2013度より継承した賞である。「松下賞」として広告主から、「正力賞」として媒体社その他のメディア関係会社及びイベントその他のコンテンツのプロデューサーから、「吉田賞」として広告関連会社から、「山名賞」としてクリエーターからそれぞれ、広告の社会的使命の促進に係る広告界の向上・発展に尽くし寄与した個人を、年1回顕彰する。また、「特別賞」として、広告の社会的使命の促進に特別に功労があった、と認められた場合は、上記4賞に加えて個人または団体を顕彰している。

各賞の受賞者と贈賞理由は下記のとおり。なお、特別賞は発表されていない。

松下賞

井上礼之氏(ダイキン工業 名誉会長)
井上礼之氏(ダイキン工業 名誉会長)
受賞者:井上礼之氏(ダイキン工業 名誉会長)
贈賞理由:同志社大学経済学部卒業。1994年ダイキン工業代表取締役社長に就任、2002年代表取締役会長兼CEO。ダイキン工業現代美術振興財団理事長、関西フィルハーモニー管弦楽団理事長等を歴任。2019年旭日重光章を受章。社長就任時に約4千億円だった同社の売上高を4兆円超に押し上げ、積極的な広告展開の他、今年で38回を数える「ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント」など、スポーツやエンターテイメントに対するスポンサー活動を長年幅広く実施。環境保護やエネルギー効率を重視する企業として環境に優しい製品を訴求するキャンペーンを展開、環境を意識した広告制作の重要性を示した。

1997年から続くドア上広告活動や、2016年からは「空気で答えを出す会社」というビジョンを打ち出し継続して広告活動を実施するなど、ブランドイメージの構築や社会的課題への対応を通じて、広告が持つ可能性を広げる役割を率先して果たしてきた点が高く評価された。

正力賞

一力雅彦氏(河北新報社 代表取締役社長)
一力雅彦氏(河北新報社 代表取締役社長)
受賞者:一力雅彦氏(河北新報社 代表取締役社長)
贈賞理由:宮城県仙台市出身。1986年河北新報社入社、2005年より現職。公社ACジャパン副理事長、一般社団法人日本新聞協会理事、東北経済連合会副会長を歴任。2021年「東日本大震災10年」と題した特集を展開し、新聞協会賞を受賞。翌年には特集をまとめた単行本『復興を生きる 東日本大震災 被災地からの声』(河北新報社編集局編)を出版した。

社是に「不覇独立 東北振興」を掲げ、「東北の飛躍のための新聞」を主張。中央ではなく東北の地から地域密着型の情報発信を続けている。地域連携が東北の未来を開くとし、東北各県との地域連携を推進。地域イベントやデジタル媒体を活用した広告展開を進めることで、地域企業や全国規模の広告主に多様な選択肢を提供し、広告を単なるプロモーション手段ではなく、地域社会の課題解決やブランディングに役立つものとして位置づけた。

特に東日本大震災後、復興のための情報発信に積極的に取り組み、特別広告企画「今できることプロジェクト」を立ち上げ、企業や自治体が広告を通じて支援活動や復興メッセージを発信する場を提供。同社を広告界において重要な存在とし、その発展を牽引した点が高く評価された。

吉田賞

谷喜久郎氏(新東通信 代表取締役会長)
谷喜久郎氏(新東通信 代表取締役会長)
受賞者:谷喜久郎氏(新東通信 代表取締役会長)
贈賞理由:名城大学法学部卒業。創業者として1972年新東通信を設立。1980年名古屋オリンピック誘致を掲げ「名古屋シティマラソン」を企画運営。1989年世界デザイン博・名古屋城会場「ガウディの城」を企画運営。2001年地域広告会社コンソーシアムとしてメイシスを設立。2005年「愛・地球博」では誘致活動から参加し、各パビリオン、イベントを企画運営した。2006年スペイン国王よりアルフォンソ十世勲章、2016年旭日双光章、スペイン・カタルーニャ州政府よりサン・ジョルディ十字勲章を受章。2023年には世界最古(創設800余年)のスペイン・サラマンカ大学より世界初の国際功労賞を受賞。

同社は現在、愛知県に本社を置く独立系の総合広告会社として全国で取扱額1位に位置し、「地方と共存共栄して、地方を元気にする」ことを目標に掲げ活動を展開。ローカルの個性と独立性を活かし、都市型シティマラソンの先駆けとなる名古屋シティマラソンの開催や、名古屋城の活性化など名古屋市を中心とした地域創生に積極的に取り組んでいる。

また、フリスビーの普及や「サン・ジョルディの日」キャンペーンなど、愛知県から日本全国、さらに世界に向けて人の心を動かす仕事を次々と展開。広告界の第一線を長年走り続けた功績が高く評価された。

山名賞

奥村靫正氏(TSTJ 代表アートディレクター)
奥村靫正氏(TSTJ 代表アートディレクター)
受賞者:奥村靫正氏(TSTJ 代表アートディレクター)
贈賞理由:桑沢デザイン研究所卒業。1970年WORKSHOP MU!!設立に参加し、はっぴいえんど、細野晴臣氏、大瀧詠一氏らのレコードジャケットを手がける。1977年ザ・ステューディオ・トウキョウ・ジャパン(現TSTJ)を設立。YMO、加藤和彦氏、山下達郎氏、佐野元春氏、ムーンライダーズ、チェッカーズなどのアートディレクションを担当。広告、書籍、雑誌など活動のフィールドを広げる。

1980年代より日本画の様式やMacintoshを用いたグラフィック作品を発表。1982年からADC賞を4回受賞、2014年ADC会員賞受賞。2005年女子美術大学芸術学部ヴィジュアルデザイン専攻教授に就任、2014年より客員教授。神戸芸術工科大学 客員教授、東京TDC、JAGDA会員。2023年には『奥村靫正作品集』(グラフィック社)を発表。アーティストやアートディレクターとして長年にわたる多彩な創作活動が高く評価された。