国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)は2月28日、「IAUD国際デザイン賞2024」表彰式を開催した。

IAUD国際デザイン賞は、1人でも多くの人が快適で暮らしやすいUD社会の実現に向けて、特に顕著な活動の実践や提案を行う団体・個人を表彰している。今回はアメリカ、イスラエル、イタリア、英国、韓国、日本、ノルウェー、ブラジル、フランスの世界9カ国から36件のエントリーがあり、審査委員会により大賞3件、金賞7件、銀賞6件、銅賞11件、併せて、学生デザインチャレンジ部門では優秀賞1件、通常賞1件が選定された。

「IAUD国際デザイン賞2024」の大賞と金賞の受賞詳細は以下の通り。

大賞

「ClassAll's Accessibility Tools for Equal Learning Opportunities(ClassAllのアクセシビリティ・ツールによる学習機会の均等化)」
部門:教育部門
受賞企業・団体:Woongjin Thinkbig
国:韓国
作品詳細:ClassAllは、すべての子どもたちに平等な学習機会を確保することを目標に、教育現場での活用が進むデジタル教科書に適応可能なユーザーインターフェースをつくろうという本格的な試み。教師はデータに基づいた授業をデザインし、生徒はパーソナライズされたAI最適化コンテンツに取り組み、保護者は子どもの学習活動の詳細な最新情報を受け取る。ユーザーカスタマイズが可能な機能により、視覚や認知に障害のあるユーザーの読みやすさや理解しやすさが向上し、教師にはパフォーマンスに基づいた有益なフィードバックが生成され、生徒には追加の練習問題や情報が提供される。ユーザーからのフィードバックは、継続的な開発プロセスの重要な一部となっている。

「あたらしい『やさしさ』をつくる パナソニックのインクルーシブデザイン」
部門:事業戦略部門
受賞企業・団体:パナソニック ホールディングス
国:日本
作品詳細:2006年のIAUD国際ユニヴァーサルデザイン会議において、パナソニックの戸田一雄副社長は、ユニヴァーサルデザインのビジョンの源泉として、「古来より日本人の中に息づいてきた(独自の)配慮と気配りの精神」を挙げた。20年以上にわたり、パナソニックはこのアプローチを支持し、世界をより良い方向に変革するデザインの可能性に対する深い理解を反映した、模範的なデザインの印象的なポートフォリオを生み出してきた。パナソニックはこの理念を社内に浸透させ、最近ではユニヴァーサルデザインからインクルーシブデザインへの移行を成功させた。これは、イノベーションの原動力として、多様性、ライフスタイル、願望をより良く理解するために、ユーザーの能力とその限界を超えたところに目を向けることの価値と利点を認識したものである。この豊富な経験は現在、インクルーシブデザインの知識ベースとしてまとめられ、同社は社会変革と社会包摂の広範な推進を支援するため、惜しみなくオープンに共有している。
「Inclusive Multisensory Signage(包摂的多感覚サイネージ)」
部門:地域計画部門
受賞企業・団体:OKEENEA
国:フランス
作品詳細:このイノベーション・パートナーシップの目標は、研究、開発、実施、検証の全プロセスに参加型デザインプロセスを適用することで、2024年パリオリンピック・パラリンピック選手村のために、耐久性があり、長持ちし、適応性のあるサインシステムを制作することであり、模範的な方法でこれを達成した。2024年パリオリンピックのサインは、あらゆる意味で先駆的な実証プロジェクトであり、その方法論と学んだ教訓を共有しようとする重要なプロジェクトでもある。これは、他の都市で自由に複製し、他の文化や環境に適応させることができる、テストされ証明されたサインシステムであり、最高のインクルーシブデザインの背後にある集団精神の素晴らしい例である。

金賞

「メタモルフィック・ラバトリー ~誰もが使いやすい航空機のバリアフリートイレ~」
部門:未来への提案部門
受賞企業・団体:宇宙航空研究開発機構/ジャムコ
国:日本
作品詳細:現在、高度な介助を必要とする乗客や、既存の設備が手狭で利用しにくい乗客のための航空機トイレには大きな問題がある。メタモルフィック・ラバトリーは、限られた機内スペースを最も効率的に利用できる拡張可能なアクセシブルラバトリー設計により、さまざまな乗客のニーズに対応する。地上施設と同じように、介助者を伴って使用することが可能で、かつ実用的であることを保証することで、全介助が必要な乗客にも対応することができる。また、乳幼児や発達障害児、オストメイトにも配慮した設計となっているため、すべての人が利用できる。

「THE TOKYO TOILET」
部門:公共空間デザイン部門
受賞企業・団体:渋谷区/MASTER MIND
国:日本
作品詳細:2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、渋谷区内にある17の公衆トイレを改修し、多様性を受け入れる社会としての日本をアピールすることを目的とした「THE TOKYO TOILET」プロジェクト。16人の著名な建築家やデザイナーが、使い勝手の悪かった設備を、社会包摂と喜びの名所へと変貌させることに挑戦した。このプロジェクトを際立たせているのは、その構想や実現に携わったクリエイティブな才能を持つスターたちの顔触れや、その野心的なスケールの大きさもさることながら、東京の象徴的な地区に誕生した17の画期的なトイレ空間の質の高さである。あまりにも軽視され、疎外されがちな公衆トイレを日本人の配慮の象徴に変えることで、THE TOKYO TOILETチームは真に日本的な精神で多様性の祭典を実現し、スタイリッシュで温かみのある人間中心の社会包摂を実現した。
「Treetop Walk for all - Hamaren, Fyresdal, Norway(誰もが楽しめるノルウェーの樹上散歩)」
部門:公共空間デザイン部門
受賞企業・団体:EFFEKT/HØGDE(FAUN)/FYRESDAL KOMMUNE
国:ノルウェー
作品詳細:ノルウェー初の樹上散歩は、ノルウェーのハマレン・アクティビティ・パークを楽しくエキサイティングに彩るものとして、2023年にオープンした。1kmの板張りの遊歩道が林床から頂上まで支柱の上に伸びており、誰もが森の樹冠にアクセスできるようになっている。ハマレンのチームと地元コミュニティが、この模範的な施設の発展と2021年の大賞受賞の継続にコミットしているのは素晴らしいことである。高レベルの利用者参加と地元の関与が相まって、普遍的にデザインされた体験が提供され、年齢、能力、身体的制限に関係なく、自然を愛するすべての人々に、樹上を歩くというセンセーショナルな感覚を提供している。

「Busan Metropolitan City's Universal Design Pilot Project(釜山市ユニバーサルデザインモデル事業)」
部門:公共空間デザイン部門
受賞企業・団体:釜山広域市/釜山デザイン振興院
国:韓国
作品詳細:影島区社会福祉センターは、施設の老朽化にもかかわらず、24時間利用可能なバリアフリートイレや地域中心のプログラムにより、地域住民にとって欠かせない空間となっている。そのリデザインは、市政府によって行われ、センターの利用者とのインタビューやワークショップを通じて特定されたさまざまな主要課題に基づき、ユニヴァーサルデザインによる解決策が導き出された。地元コミュニティとの完璧なリサーチ、ステークホルダー・マッピングやカスタマージャーニーの把握など、確立されたインクルーシブデザインの手法に基づく段階的な参加型共同デザインプロセスは、アイデア創出と検証のための明確な文脈を提供し、センターのより良いデザイン提案につながった。

「CEATEC 2023 Sony's Booth」
部門:共創デザイン部門
受賞企業・団体:ソニーグループ
国:日本
作品詳細:CEATEC 2023のソニーのブースでは、インクルーシブデザインから生まれた製品やサービスを紹介した。このブースは、アクセシブルでユーザーフレンドリーなブースの構成要素やデザインを試行・評価するためのテストベッドとして企画された。ブースはオープンで誰もが移動しやすいように設計され、これを実現するために、グラフィックの見やすさから通路幅に至るまで、すべての空間要素の設計において幅広いユーザーと専門家が協力した。また、CEATEC 2023で実際にテストを行った結果、将来の見本市のためのデザインガイドラインが作成された。

「ゆる楽器『ハグドラム』」
部門:プロダクトデザイン部門
受賞企業・団体:ソニーグループ/ソニー・ミュージックエンタテインメント
国:日本
作品詳細:ソニーのデザインチームと聴覚障害のある指導者が参加した共同デザインプロセスによって実現した楽しいアイデアである。 ハグドラムは、そのデザインにおいてインクルーシブであり、また、その使用において明らかな波及力を持つ、包摂的な打楽器である。この想像力豊かなコンセプトを開発するために、ソニーのデザイナーは聴覚障害の先導的ユーザーやプロのミュージシャンと協力した。その結果、光と振動で音を伝える包摂的な打楽器が完成した。
「Santander Retail & Santander Business Banking Apps(サンタンデール小売・銀行業務 アプリ)」
部門:サーヴィスデザイン部門
受賞企業・団体:Santander
国:イギリス
作品詳細:サンタンデールは「顧客にとって重要な瞬間に寄り添う、インクルーシブかつアクセシブルな銀行」を目指している。これを実現するために、サンタンデールの主要なユーザーインターフェースでは、さまざまな能力を持つ人々が参加する共同デザインプロセスが実施され、サンタンデールの小売・銀行業務の最新版アプリが、日々の財務管理に利用している1000万人近いすべての人々にとって使いやすいものとなっている。これは、クロスプラットフォームの使いやすさを実現する技術的な焦点と、すっきりとしたグラフィックデザイン、シンプルさとわかりやすさに重点を置いた、明確で適応性のあるユーザー中心のインターフェースデザインの優れた例である。まさに、英国を拠点とするトップ企業に期待されるものである。