WPPグループとそのグループ企業であるKantarは、世界におけるブランド価値を測る年次調査「ブランドZ トップ50 最も価値のある日本ブランドランキング」を発表した。

最も価値のある日本の消費者ブランドはトヨタ

1位を獲得したのは、ブランド価値総額289億ドルのトヨタ。2位には通信プロバイダーのNTT(201億ドル)、3位にホンダ(117億ドル)と続いた。トップ15は以下の通り。
ブランドZ調査は、世界最大級のブランド資産価値調査であり、財務データの分析と綿密な消費者調査結果を組み合わせ、ブランドが企業にもたらす価値を評価している。ブランドZはブランド資産データベースとして、過去20年間にわたって世界51カ国380万人を超える消費者のインタビューを実施してきた。

日本の消費者ブランドランキングにおけるトップ50ブランドの価値総額は2230億ドルを上回っており、これはブランドZの調査対象国全体でみると6位にあたる(日本よりも上位にランクされている国は、アメリカ、中国、ドイツ、フランス、英国)。

今回は、40市場カテゴリーの調査を実施。カテゴリー別で見ると、自動車カテゴリーはトヨタとホンダが主導しており、トップ50ブランドの中で、最も価値のあるカテゴリーとなった。今回ランクインした自動車6ブランドが、ランキング総額の25%(547億ドル)を占めている。このうち、トヨタ、ホンダ、日産(5位、105億ドル)の3ブランドは、「世界で最も価値のある自動車ブランドランキング」でもトップ10にランクイン。

特に、自動車製造企業からモビリティ企業へとその形を変化させてきたトヨタは、明確な目的意識を持ち、良質なブランド体験を提供してくれる、非常に革新的なブランドとして消費者に認知されている。

日本市場では小売ブランドが台頭

小売およびアパレルカテゴリーでは、ランキングトップ50にカテゴリー別最多の13ブランドがランクインしており、そのブランド価値の総額は全体の18%(397億ドル)を占めた。この中には、フリマアプリで知られるメルカリ(47位、7億6,100万ドル)や、ファッション通販サイトのZOZOTOWN(16位、45億ドル)のように、不況時代に育った多くの若年消費者にみられる慎重な消費スタイルに代表される、倹約・節約といった消費者トレンドへの転換に適応してきたブランドもみられる。

一方、実店舗を持つ従来型の小売ブランドでは、新たな戦略や新たな小売形態の開発が進められている。ミニマリストスタイルのホテルを商標登録した無印良品(32位、18億ドル)、温度調整と着心地のよさを実現するベーシックな衣料品ラインアップを持ち合わせながら、ポップカルチャーとのコラボレーションとウェアラブルテクノロジーを組み合わせるユニクロ(7位、98億ドル)、そして自転車シェアリングサービスや宅配ロッカー、自社ブランド自販機の設置を進めるセブン-イレブン(8位、89億ドル)などは、消費者がブランドに対して感じる関連性や意義性を維持していくうえで、日本の小売ブランドがどのように適応しているのかを示すいくつかの例といえる。

ブランド価値のギャップを埋めることが、国際的成長へのカギ

日本の国のイメージは「高品質」と結び付けられることが多く、世界の多くの市場において日本ブランドの強みとなっている。しかしながら、GDPは世界第3位であり、かつ健全なブランドを数多く抱える日本であっても、今年の「ブランドZ トップ100 最も価値のあるグローバルブランドランキング」にランクインしたのは、トヨタ(41位)とNTT(70位)だけだった。日本では多くの国内企業が依然としてブランディングに「ものづくり」アプローチを採用しているが、日本ブランドの「海外での活躍度(海外からの売上高、販売数量、収益性を組み合わせた評価基準)」は、ブランドZの調査対象国の平均値を下回っている。

ブランドZのチェアマン、デイヴィッド・ロス氏は、「日本ブランドが『ブランドエクイティのギャップ』を埋め、グローバルでの競争力を改善するには、今こそ好機。日本ブランドには海外での地位を高めていく余地が十分にある」と述べている。

誰もが欲しがるような高い品質を消費者に提供し続けるとともに、自社ブランドの成功を下支えしている要素を探し当て、そうした要素を良質なコミュニケーションやマーケティングで強化・拡大したり、他にはない取り組みを進めたりすることが、より一層のブランド価値の向上や国際的な成長には必要となりそうだ。