車中泊スペースとキャンピングカーのシェアリングサービスなど「バンライフ」のプラットフォーム事業を展開するCarstayは、持続可能な地域観光モデル「Local Vanlife Project」を開始した。車中泊仕様の車両などモビリティ(移動体)を基盤とする、新たな旅や暮らしのスタイル「バンライフ」を通じたプロジェクトとなる。

第1弾目として、7月から、石川県の金沢工業大学 建築学部 宮下智裕准教授の研究室と「モバイルハウス」を共同開発。白山麓キャンパスを起点に、地域住民と連携し、白山麓地域の観光や生活体験などの遊休観光スポットを再発掘する地域密着型プロジェクト「Local Vanlife Project in Hakusan」を開始する。
石川県内では、バンライフの取り組みが盛んだ。能登半島の穴水町のシェアハウス「田舎バックパッカーハウス」では、国内初となる長期間滞在可能な車中生活拠点“住める駐車場”「バンライフ・ステーション」を2019年12月に開設。これまでに2組のバンライファー夫婦が最短1ヶ月、1組が最長3ヵ月間“駐車場”に滞在し、田舎での生活を体験した。

Carstayは、東京都が主催するスタートアップ支援事業「NEXs Tokyo」に選出されており、「NEXs Tokyo」のパートナーが石川県白山市であることから「Local Vanlife Project」の第1弾目として白山麓地域と連携。

「Local Vanlife Project in Hakusan」は、白山麓地域の住民が中心となり、民家・商店・事業所などの駐車場や空き地を、バンライファー/車旅人向けの車中泊スポットとしてシェアサービスの「カーステイ」に登録。地域密着で生活体験ができる「文化体験」に加え、バンライフ拠点を整備し、関係人口の増加を図る。

さらに、体験型の車中泊観光ができるよう、軽トラックの荷台に木製の“家”を載せた「モバイルハウス(可動産)」を金沢工業大学 建築学部の学生が製作する。モバイルハウスは、従来の移動手段に加え、車内で就寝・仕事が可能なプライベート空間を持つ“動くホテル”。キャンピングカーなど車中泊仕様の車に特化したCarstayのカーシェアサービス「バンシェア」に登録し、キャンピングカーを持たない旅行者が白山市を訪れた際に、白山麓方面でバンライフを体験できるように白山麓地域の住民が運用していく。また、制作にあたり石川県内の木材を使用することで、地域産業の活性化にも貢献する。
モバイルハウスでの旅行は、新型コロナウイルス感染拡大防止のための3密を避けることができる。公共交通機関・宿泊施設が少ない地域で、自由な車旅を楽しむことができ、コロナ収束後の時代に求められている新しい旅行手段となり得る。

白山麓地域を含め全国の地方の現場では、鉄道の廃線や人口減少、老齢化、宿泊施設の減少や廃業、事業の後継者不足など、観光だけでなく、生活や経済基盤の存続が深刻な課題となっている。モバイルハウスを取り入れた、新たな旅のスタイル「バンライフ」による観光促進や関係人口の増加は、既存の遊休観光スポットや社会インフラを工夫して利活用し、最小限の観光投資で実現可能なため、試験的な施策としても有効だ。

7月中に、Carstayと金沢工業大学の学生がモバイルハウスのデザインについて協議し、8月中にモバイルハウスを完成させる。9月からは、旅行者向けに地域観光プランを提供開始予定。モバイルハウスの製作にあたり、2019年5月から2020年4月までモバイルハウスで全国各地を生活しながら旅した金沢市出身の“生活冒険家”赤井成彰氏が講師として「Local Vanlife Project in Hakusan」に参画している。Carstayは今後、石川県内含め全国で「Local Vanlife Project」を推進していく。