渋谷区は7月19日から9月23日にかけて、「THE TOKYO TOILET(以下TTT)」で整備された全17カ所のトイレのうち、11カ所の公共トイレを会場に、世界的な写真家・森山大道氏が撮影した写真を展示するアートプロジェクト「THE TOKYO TOILET / SHIBUYA」を開催する。

森山氏が撮影したTTTの写真は、ミラノやパリの国際的なアートフェアでも高く評価されてきた。今回の渋谷区での開催では、各トイレの個性を活かしたインスタレーション展示に加え、森山氏の写真がプリントされた特製トイレットペーパーも設置され、訪れる人々に新たな体験を提供する。

TTTは、優れたデザインとクリエイティブの力で新しい社会のあり方を提案し、社会課題の解決に挑戦するプロジェクトである。渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界で活動する16人のクリエイターたちがリデザインし、性別・年齢・障がいを問わず、誰もが快適に利用できる空間へと生まれ変わらせた。

本展は、2022年に世界最大規模のデザインの祭典「ミラノサローネ国際家具見本市」で発表した「THE TOKYO TOILET / MILANO」、2023年に国際的写真フェア「パリ・フォト」で展開した「THE TOKYO TOILET / PARIS」に続く第3弾として、今夏、東京・渋谷区で開催される。

【渋谷区長 長谷部健氏によるコメント】
THE TOKYO TOILETにおいて、世界で活躍する建築家やクリエイターをはじめ多くの皆さまに、渋谷区内の公共トイレの整備、清掃、維持管理にご協力をいただきましたこと、あらためて感謝申し上げます。昨年度から、維持管理を日本財団から引き継ぎ、渋谷区が行なっています。これらのトイレを綺麗な状態で維持するとともに、誰もが公共トイレを大事に使っていく、関心を持っていただけるように、THE TOKYO TOILETの写真展を開催することになりました。

多くの皆さまに「トイレをきれいに使おう」という意識が生まれるとともに、トイレがデザインやクリエイティブの世界において美しい場所として認知・評価されることで、その意識が高まるのではないかと考えています。本展によって、THE TOKYO TOILETをより多くの方に知っていただき、公共トイレの使い方やあり方について考えるきっかけになればと思います。

【写真家 森山大道氏によるコメント】
用を足すという、生理現象を処理するための場所だった公共トイレは、いわば都会に潜むものとしてあった。しかし、このプロジェクトのそれぞれのトイレは、実に明るい印象を与えている。一種の憩いの場として陽が当たっている。トイレの存在そのものを変えたとさえ思う。街の片隅にひっそりと潜む場所であった公園も、存在そのものが明るみを持って中心になっている。日常の中で一瞬、誰にとっても安心できる場所になったということが、THE TOKYO TOILET の最大の成果だと思っている。

渋谷区でぼくが撮った TTT の写真が、それらの公共トイレそのものに展開されることは、いわば街で撮ったものを街に返す、ということだ。作者の手を離れ、形を変えて外側へと広がっていくにしたがって、人の記憶の中で姿を変えていく。どんどんアノニマスなものになっていく。それが写真の一番の力だというのが、ぼくの思いである。 

【森山大道氏プロフィール】
1938年大阪生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て1964年に独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、1967年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。2012年、ニューヨークの国際写真センター(ICP)が主催する第28回インフィニティ賞生涯功績部門を受賞。2016年、パリ・カルティエ現代美術財団にて2度目の個展「DAIDO TOKYO」展を開催。2018年、フランス政府より芸術文化勲章「シュヴァリエ」が授与された。2019年、ハッセルブラッド財団国際写真賞受賞。

開催概要
イベント名:THE TOKYO TOILET / SHIBUYA
開催期間:2025年7月19日~9月23日
会場:TTT整備の公共トイレ11カ所(笹塚緑道公衆、幡ヶ谷公衆、七号通り公園、西原一丁目公園、はるのおがわコミュニティパーク、代々木深町小公園、神宮通公園、鍋島松濤公園、恵比寿公園、恵比寿東公園、広尾東公園)
工事の進捗により、開催期間が一部変更となる場合がある。また、本展限定のトイレットペーパーは、なくなり次第終了。
撮影:森山 大道
主催:渋谷区
企画:MASTER MIND
協力:MATCH&CO/TANK/SKWAT/SWITCH