PR TIMESは6月26日、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」において、2025年1月1日から5月31日に企業から発表されたプレスリリース総計17万6625件を対象にデータ分析を行い、業界分析および各種ランキングを発表した。

トピックスは以下の通りである。
・「AI」が7261件で総合2位。5月単月では1位に。生成AIに続き「AIエージェント」が台頭
・「研修」「人材育成」「組織開発」増加。人的資本を広報発表でも開示
・「新店舗」発信が前年比2倍超。東京、大阪に加えて、地方都市・海外でも動き活発に
・「熱中症対策」早まる企業発表は昨年比2.2倍以上

PR TIMESではプレスリリース発表の際に、企業が関連するキーワードを最大10個登録できる。2025年1月~5月に発表された総計17万6625件のプレスリリースにおいて、登録されたキーワードは27万2895種に上った。件数の順位だけでなく、過去件数との比較、月別推移、キーワードごとの発表内容の分析を通じて、2025年の企業活動の潮流や動向の変化、流行の兆しを明らかにしている。

AI関連キーワードの発信が加速、生成AIに続き「AIエージェント」が台頭

2023年の生成AIブームを契機に、2024年にはビジネスや行政分野での実証・実装が進み、2025年は企業による「AIの活用」が可視化されるフェーズへと移行している。前年比1.5倍以上の増加率のキーワードを増加件数順に並べた2025年上半期の急上昇ランキングでは、1位「AI」(+2531件)、2位「生成AI」(+1575件)、3位「AIエージェント」(+860件)と上位3キーワードをAI関連キーワードが占めている。
2025上半期企業発表キーワード急上昇ランキング
2025上半期企業発表キーワード急上昇ランキング
「AI」キーワードのプレスリリース発表は2023年から増え続けており、2025年上半期の総合ランキングでは1位の「イベント」に次ぐ2位となった。

2025年上半期ランキングでは、「AI」7261件(前年比+53.5%)、「生成AI」4022件(前年比+64.4%)と、いずれも前年を大きく上回り、2位「AI」、8位「生成AI」と引き続き上昇している。

そして、今年は新たに「AIエージェント」の出現件数が前年の87倍(870件)と急増し、注目のキーワードとして浮上した。2023年以前はほとんどプレスリリースに使用されてこなかったこのワードが、2025年に一気に可視化された背景には、生成AIの活用フェーズが「対話」から「行動」へと進化していることが挙げられる。

2025年前半の「AIエージェント」プレスリリースは、業務の自動化支援やカスタマーサポート、教育分野への応用など、具体的な導入・実装事例が数多く見られ、単なる技術紹介から「事業変革の担い手」としての位置づけが進んでいる。実務レベルの業務支援から、自社専用のAI環境構築、プラットフォーム化、教育活用まで広がりを見せており、単なるトレンドではなく「本格実装フェーズ」に移行したことがうかがえる。

2025年6月4日には、AIの研究開発・利活用を適正に推進するAI新法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が公布された。引き続き、AIの活用が社会全体で進み、プレスリリース発表にも関連する情報が増えていくと考えられる。

また、4位「大阪・関西万博」5位「万博」も、協賛や出展をはじめ、関連するお土産の発売などの発表が牽引したことで件数を伸ばしている。12位の「介護」は全体でも102位となる816件の発信があり、介護用商材のほか、ここでもAIを活用したサービスの発信が見られた。

「研修」「人材育成」「組織開発」増加、人的資本を広報発表でも開示

<人事関連キーワード>プレスリリース件数の年別推移
<人事関連キーワード>プレスリリース件数の年別推移
2025年上半期、「人材育成」「研修」「組織開発」など、「人」を育てる取り組みや人事に関連したキーワードが年々増加傾向にある。関連するキーワードをまとめた件数推移でもその件数が伸びていることがわかる。

なかでも「研修」は2024年482件、2025年799件と前年同期比で1.6倍以上に伸びている。この傾向を牽引しているのは、研修プログラムや支援サービスを展開する企業による発信である。新たな研修メニューの提供開始や導入実績を伝える発表が多く見られ、企業の人材不足対策に伴う投資を見込み、支援サービス事業者による情報発信が活発になっている。

一方で、自社の研修制度や取り組みを発信する企業も増加傾向にある。数十億円かけた研修施設の開設に関する発表もあり、充実した魅力的な研修体制がサービスクオリティ向上に加えて、人材採用(離職防止)の観点からも事業成長につながる取り組みとして発表につながっていると考えられる。

また、新年度スタートの4月をまたぐデータということもあり、「入社式」の発表も多く、企業の特性を活かしたユニークな入社式や研修に関するプレスリリースが多く発信された。

【「入社式」キーワードのプレスリリース件数推移】
2019年:39件
2020年:56件(+43.6%)
2021年:62件(+10.7%)
2022年:88件(+41.9%)
2023年:103件(+17.0%)
2024年:127件(+23.3%)
2025年:156件(+22.8%)※過去最多

こうした傾向には、人手不足に対して人材育成と人材採用が両面で必要とされていること、人的資本開示の義務化が「人材戦略を伝える文脈」を後押ししていることと2つの背景があると考えられる。

「業務効率化」のキーワードが2024年1271件から2025年2069件と1.6倍以上増加したことや、「DX」のキーワードが2023年6087件、2024年5843件、2025年6367件とV字回復していることも、人手不足に対して企業が業務の効率という側面でも対策に動いていることを示唆していると考えられる。

「新店舗」発信が前年比2倍超、地方都市・海外でも動き活発に

2025年1月~5月に配信された「新店舗」キーワード付きプレスリリースは前年同期比で約2.1倍となり、過去最多を記録した(2024年471件、2025年1005件)。発信件数の伸びは、都市部の再開発・地方都市での施設刷新・インバウンドや外需を見据えた越境展開といった複数の社会的潮流が重なった結果と見られる。
2025年上期 上昇キーワード「新店舗」
2025年上期 上昇キーワード「新店舗」

都心再開発と地方中核都市での拡張が並行

出店件数が前年より増加した上位地域を見ると、東京都(1.8倍、2024年143件、2025年259件)、大阪府(2.4倍、2024年50件、2025年121件)といった大都市に加え、宮城県(+26件)や広島県(+22件)など地方主要都市の伸びも顕著である。大阪は市内で開催されている国際博覧会に関する発表も多く発信されており、増加率にも影響していると考えられる。

宮城県では、大きな商業施設のリニューアルに伴い、全国展開ブランドや初出店の専門店の発信が集中し、2024年4件から2025年30件と7.5倍の増加となった。政府の地方創生SDGs、地域商業再生などの施策に呼応し、都市再整備とともに店舗開発を情報発信のテーマとする企業が増えたと考えられる。

体験型・専門特化型の新しい出店業態が増加

発信内容は「◯◯専用スタジオ」「◯◯特化型、体験型」など、「体験」や「こだわり」を訴求する業態が目立ち、店舗を設けることを体験価値として捉えるリテール戦略の転換や、商業施設側との協業施策の強化が背景に考えられる。

アジアを中心に「初出店」「現地開発連動型」の発信が多数

海外出店に関するプレスリリースも、前年の10件から2025年は30件と3倍に増加。中国・東南アジア・台湾・韓国を中心に、飲食・ライフスタイル・エンタメと多様な業種が出店している。

政府の中小企業の海外展開支援やクールジャパン政策、ASEAN市場強化などに代表される公的施策と連動し、円安を追い風に「初出店」や「モールとの連携出店」を発信する企業が増加したと考えられる。単なる海外進出ではなく、現地ブランドとの融合や初のフラッグシップストアなどプレゼンス向上を狙った文脈での発表が特徴的であった。

従来の出店情報は地域密着型で小規模に扱われることもあったが、有名チェーンや話題店のエリア外進出は、地域外に住むブランドファンや出店先エリアの方に求められる情報である。店舗を持つ企業にとっては店舗数の拡大は企業の勢いを表現できる機会になる。メディアはもちろん、さまざまなステークホルダーに向けたプレスリリースとして、今後も発信数が伸びていくことが期待される。

上半期総合は1位「イベント」2位「AI」、5月単月では「AI」が1位に

PR TIMESキーワードランキング2025上半期 総合(1月~5月)
PR TIMESキーワードランキング2025上半期 総合(1月~5月)
PR TIMESキーワードランキング2025上半期(総合・月別)
PR TIMESキーワードランキング2025上半期(総合・月別)
2025年上期総合では、2023、2024年に続き、「イベント」が1位となった。そして、2位には「AI」が続き、月別の推移で見れば5月には「AI」が「イベント」を上回り、2023年4月の「DX」以来2年1カ月ぶりに「イベント」1位から落ちる形となった。8位の「生成AI」とともにAI関連のキーワードの上昇が目立つ結果となった。

「夏」のキーワードは昨年同様5月からTOP20入りとなったものの、その順位は2024年18位から2025年15位と増加している。ここには、近年の夏の暑さに向けた暑さ対策商品の発売といった発表が増えていることも要因として考えられる。「暑さ対策」192件(前年比1.64倍)、「熱中症対策」187件(前年比2.25倍)と関連するキーワードがここ数年で増加していることも示している。

2025年上半期の注目キーワード「老舗」「アクセシビリティ」

2025年上半期注目キーワード 年別比較「老舗」「アクセシビリティ」
2025年上半期注目キーワード 年別比較「老舗」「アクセシビリティ」
■老舗
2024年に59件であった「老舗」が、2025年に122件と約2.1倍に増えている。「老舗事業者」による従来の事業とは異なる新商品やサービスについての発表が目立ち、配信元企業が2024年48社から2025年73社と増加していることも、「老舗事業者」による挑戦的な事業機会が増えていることと、その情報発信が活発になっていることを示している。「伝統工芸」も2024年158件から2025年273件と約1.7倍に増えている。

■アクセシビリティ
2024年に47件であった「アクセシビリティ」は、2025年に114件と約2.4倍に増えた。製品やサービスを誰にも利用しやすい状態とする「アクセシビリティ」を高めることで、社会的包摂性を高め、企業の信頼性やブランド価値の向上につなげる効果があり、既存サービスの「アクセシビリティ」向上を発表する内容が見られた。プレスリリース発信機会として挙げられる機能アップデートに際して、同キーワードを絡めて表現する機会が増えている。

調査概要
対象期間:2025年1月1日~5月31日
集計対象:PR TIMESプレスリリース17万6625件
発表項目:2025年上期キーワードランキング、キーワード分析 等
発表日:2025年6月26日
発表者:PR TIMES