富山県高岡市は、伝統産業の工房とクリエイターのコラボレーションにより、日本の手わざの新たな価値創造と関係人口づくりを目指す事業「Creators Meet TAKAOKA」を2019年度より開始した。今回、2020年の取り組みの成果として、「モノづくりのまち高岡」の職人とクリエイターの協働によるプロトタイプを発表した。
富山県高岡市は、400年以上続く銅器・漆器などの伝統産業から近代産業に至るまで、日本海沿岸を代表するモノづくりのまちとして発展してきた。モノづくりが盛んな地域の特徴を生かした新たな関係人口づくりの取り組みとして、2019年度より「Creators Meet TAKAOKA」の事業を開始。事業を通して、さまざまな課題に直面する地域の伝統産業の活性化にもつなげることを目的としている。

2019年の東京でのPRイベントおよびモデルツアーに続き、2020年度はさらに一歩踏み込んで、実際にクリエイターと高岡の工房が協働し、作品や商品、素材をつくりだす、新たな展開に取り組んだ。

8月に実施したクリエイター募集では、4組の枠に20組の応募が集まった。そのなかからプロダクトデザイナー、新素材開発者、音楽家など多様なジャンルのクリエイター5組の参加が決定し、金属工芸・漆芸・菅(すげ)細工の工房6社とのマッチングが行われた。参加者全員ですべての協働先工房を巡るキックオフツアーを実施し、その後、オンラインを活用して打ち合わせやディスカッションを重ね、今回のプロトタイプの発表に至った。

鋳造と磨きの技を活かした真鍮製の燭台、新素材樹脂と漆の組み合わせによるアクセサリー、仏具の「おりん」の音を使った楽曲、菅製のスピーカーなど、職人だけでもクリエイターだけでも生み出せない、両者の出会いの化学反応によるユニークな提案が生まれた。各チームは、今後の製品化やイベントでの発表に向け、現在も意欲的にプロジェクトに取り組んでいる。

参加チームの提案紹介
■能作×Hamanishi DESIGN:「燭台」
日本の伝統産業を牽引する金属鋳造メーカー「能作」と、Hamanishi DESIGNのプロダクトデザイナー・鎌田修さんによるコラボ。「溶かして」つくる高岡銅器の鋳造工程が、視覚的に表現されたポップなデザインが特徴の燭台となっている。
■漆器くにもと×三井化学MOLP:アクセサリー「縁・円」
漆器の企画問屋「漆器くにもと」と、三井化学社内のメンバーによって立ち上げられた有志グループ「MOLp(Mitsui Cemicals Oriented Laboratory)」による、経年変化を楽しむ漆のアクセサリー「縁EN・輪WA」。三井化学が開発した、海のミネラルから生まれた樹脂と、植物由来のウレタン樹脂「STABIO(R)」で成型したアクセサリーに漆を塗布し、これまでの漆製品にはない重みや透け感といった新たな質感を生み出している。
■高岡民芸×未音制作所:菅製スピーカー「Sedge」
音楽クリエイターでありアーティストの若狭真司さんが主宰する「未音制作所(ひつじおとせいさくじょ)」と、菅の栽培から加工までを一貫して行っている「高岡民芸」は、菅製のスピーカーを提案。シェア9割を誇る富山県福岡(高岡市・旧福岡町)で唯一の若手である中山煌雲さんは、アートピースとしても飾りたくなる菅笠づくりに邁進。写真は骨組みの状態で、これから菅が編み込まれていく。