JAXA認定宇宙ベンチャーの天地人が、米卸国内大手の神明、スマート水田サービス「paditch(パディッチ)」を提供する農業ITベンチャーの笑農和と協業し、 「宇宙ビッグデータ米」の栽培に着手した。
天地人は、JAXA職員と農業IoT分野に知見のある開発者が設立した宇宙ベンチャーである。地球観測衛星のデータを活用した同社の土地評価エンジン「天地人コンパス」を使い、衛星データからビニールハウス内の作物に対する日射量を推定するプロジェクトや、キウイフルーツなどの作物の新規圃場の検討など、農業に関わるプロジェクトをおこなっている。農業に関わる3社が抱いている共通の危機感が、「米が足りなくなる」ことだ。生産者の高齢化、減少にともない、今後の供給力への懸念が叫ばれ、農林水産省の調査からも2015年から2020年の間に約40万人も農業就業人口は減少している。

そこで、3社は、将来的なコメの生産増につながる農業施策として、宇宙の技術を活用した農業を確立するプロジェクトを立ち上げ、「宇宙ビッグデータ米」栽培に着手した。「宇宙ビッグデータ米」は、土地評価エンジン「天地人コンパス」を活用して収穫量が増える圃場や、より美味しく育つ可能性のある圃場を見つけ、「paditch」の活用で適正な水温・水量を維持しながら栽培を行う。収穫された「宇宙ビッグデータ米」は、神明の直営店「米処 穂」にて販売予定という、3社の強みを活かした新しい取り組みだ。5月に田植えを行い、9月に収穫、年内の販売を予定している。

なお、「宇宙ビッグデータ米」は、「気候変動に対応したブランド米をつくる」ことをひとつの目的としている。そのため、同タイミング同地域で、ICTテクノロジーを活用する方式と、従来の方式で栽培をおこない、食味や収量などの比較も行う。近年の地球温暖化によって「高温障害」が多発し、お米の外観品質の劣化と食味の低下が懸念されている。3社は、この問題は、圃場選びや水の管理で回避できると考えており、今回の栽培方法が有効かを実証していく。