アメリカの広告業界の変遷をまとめた映画『ART & COPY』が、7月25日の1日限定で無料上映される。場所は、渋谷のユーロライブ。『ART & COPY』は、世界三大広告賞The One Showを主催するThe One Clubによって、2009年に製作されたもの。Apple「Think Different」などを手がけたTBWA CHIAT DAYのLee Clow氏や、Nike「Just Do It」を生み出したWieden+KennedyのDan Wieden氏など、伝説的なクリエイターのインタビューを収録している。

今回、「NTTドコモ: 森の木琴」「OK Go: I Won’t Let You Down」「日本は、義理チョコをやめよう。GODIVA」などを手がけたクリエイティブディレクターの原野守弘さんが、自身で字幕をつけ、The One Clubに交渉し、日本での無料公開にこぎつけた。

申し込みは、原野守弘さんのnoteから。

開催にあたって、同イベントのオーガナイザーを務める、もり 代表/クリエイティブディレクターの原野守弘さんが、以下の文章を寄せた。

オーガナイザー 原野守弘さんのnoteより

映画『ART & COPY』は、Doug Pray監督による「アメリカの広告業界の歴史」についてのドキュメンタリー映画です。2009年に、アメリカのThe One Clubによって製作されました。

僕はちょうど『森の木琴』をつくった2011年ごろ、初めてこの映画を観ました。非常に感激したのを今でも覚えています。広告をつくる中で知りたかったことの答えが、この映画の中にあるように思えたからです。もちろん英語の映画ですので、その時の理解は完全ではありませんでした。それで、僕は自分で字幕をつけることにしました。今回上映するフィルムは、その字幕付きのものです。

今年の初めに『クリエイティブ入門』を出版して以来、僕はこの映画も、若い人たち、特に20−30代の広告制作の現場で働く人たちに、是非見て欲しいと思うようになりました。日本で広告の仕事を始めるとモヤッとすることが多いと思いますし、なにより日本の広告のことしかわからなくなってしまいます。それではあまりにもったいないと僕は思うのです。

世界には段違いに素晴らしい広告作品がたくさんありますし、仕事のやり方や広告代理店の雰囲気もまったく違います。それをつくっている人たちの顔つきや声のハリも、随分違います。「かっこいい作品は、つくった人もかっこいい」。これは、この映画を見てくれた、ある若いクリエイターの感想ですが、その通りだと思います。そのことを体験するだけでも、この映画を観る価値があると思います。

『1984』『Think Different』『iPod』といったAppleの広告は、すべて同じ代理店の同じCDがつくりました。TBWA\CHIAT\DAYのLee Clowです。彼が自分のオフィスでインタビューを受ける姿を見ることができます。どのようにしてつくったのか、どうして成功したのか、彼の口から聞くことができます。どんなオフィスで、どんなスタッフと一緒に、それらをつくっているのか、見ることができます。

Nikeの『Just Do It』の誕生秘話を、つくったDan Wieden本人が教えてくれます。彼は、世界一クリエイティブな広告代理店、Wieden+Kennedyの創設者の一人です。そのプレゼンテーションを受けたNikeの宣伝部長(当時)の女性も登場します。彼は、彼女にどんなプレゼンテーションをしたのか。

Mary Wellsは、アメリカで初めて広告代理店のオーナーになり、初めて株式を公開し、初めてジャンボジェットに絵を描いた女性です。彼女はCharlie Mossと一緒に、有名な「I Love New York(I♡NY)」のキャンペーンを企画しました。

その他にも、「got milk?(牛乳ある?)」キャンペーンで広告の歴史を変えた、Rich SilversteinとJeff Goodby。Mad Menのモデルとも言われる、George Lois。伝説の広告代理店DDBの初代コピーチーフ、Phyllis K. Robinson。CM用につくった曲がカーペンターズに見出されて全米1位になってしまったディレクター、Hal Riney、などなど。アメリカで「レジェンド」と呼ばれる人々が、自らの声で、自分の部屋で、「広告」について語ります。

今回、The One Clubのご好意で、一回だけ、日本での無料上映が許可されました。この機会を逃さないよう、是非とも見にきてください。ゲストを招いてのトークショーも準備しています。

2021年6月

株式会社もり
代表/クリエイティブディレクター
原野 守弘