「顧客体験価値(CX)ランキング™ 2021」 マイクロツーリズムの提唱で新たな価値を生み出した「星野リゾート」が首位に
インターブランドジャパンのグループの一員であるC Space Tokyoは、今年度の顧客体験価値CX(CX:Customer Experience)を発表した。第1位は「星野リゾート」、 第2位は「ワークマン」、続く第3位は「サントリー」だった。業種別にみると、「専門店」「食品・飲料メーカー」「飲食店」が高い評価を獲得した。
【CXの分析ポイント】
・志向力:ブランドの目指す姿が明確で、顧客が実感できるほど徹底されている
・俊敏力:スピード感があり、顧客の期待を超え続ける迅速な動きができている
・共創性:顧客の声に真摯に向き合うだけでなく、顧客とともに体験づくりができている
同ランキングは、顧客視点でのすべての体験を通じたブランドの「CXスコア」を数値化し分析しており、本年度で3回目となる。商品やサービスの機能や性能などの機能的価値だけでなく、そのブランドや企業に関わるすべての体験を通じて顧客が経験する、喜びや満足感などの情緒的価値まで含めた総合的な価値を数値化している。
これまでC Spaceがグローバルで行ってきたCXの分析を通じて、CXを高めるには「私向けのものだと思える」「私にとって意味がある」「オープンで、正直である」「私の立場で考えてくれる」「いい気分にさせてくれる」の5つの情緒的な要素(5 Emotional Cues) を顧客に感じてもらうことが重要だということが明らかとなっている。
「CXランキング™️」は、顧客が求める体験価値の5つの要素を数値化し、顧客視点でのすべての体験を通じたブランドの現在を可視化することを目的としている。本年度は、過去2回の実績をもとに、調査時期による季節要因の平準化を図るため、調査実施を年2回とし、調査対象者数を引き上げ、それによってブランド想起者の最低人数を2倍以上に引き上げるなど、より精度を高めた「年間ランキング」としてリニューアルしている。
「志向力」: ブランドの目指す姿が明確で、顧客が実感できるほど徹底されている
星野リゾート(1位):“ホテルのコンセプトが明確。高いが満足、特別感を演出したホテル内での暮らし、喜び、驚きを提供している。思い出に宿泊し、ホスピタリティを感じる”(40代男性)、“星野リゾートだからこその魅力を感じる”(40代男性)など、ブランドの目指す姿が明確で、提供するサービスや従業員一人一人に浸透していることが評価されている。
味の素(9位):“家族の健康や豊かな心を育てるために必要な、食事のために美味しく、栄養のあるものをつくっている企業だと思うので”(30代女性)、“健康的な生活を送るうえで、食生活が大切だということを、商品やテレビCMなどを通して伝えてくれていると思うから”(40代女性)、“eat well live well のキャッチフレーズに共感。全ての思いが込められている” (50代女性)というコメントに見られるように、味の素の存在意義「食と健康の課題解決」が顧客に伝わって評価されていることがうかがえる。
「俊敏力」:スピード感があり、顧客の期待を超え続ける迅速な動きができている
丸亀製麺(16位): “その時のご時世にあった販売方法に取り組んでいる”(30代女性)、“期間限定メニューの再発売など、利用者の意見を採用した企画を数多く行っている”(20代男性)など、新しいテイクアウトの迅速な全店舗展開などをはじめとしたサービス提供のアジャイルな対応を多くの顧客が評価している。
Google(19位): “世の中の事情に合わせてどんどん変わってゆくから”(20代男性)、“顧客が望むサービスをいつの間にか提供している”(60代女性)など、顧客のニーズをいかに先回りして、答え続けていくかということが良いCXにつながっている。
「共創性」:顧客の声に真摯に向き合うだけでなく、顧客とともに体験づくりができている
花王(10位): “日頃からお客様の商品の感想や要望をちゃんと聞いてくれて、少しでも使いやすくなるような商品の改良を行ってくれる” (40代女性)、“Yahoo!知恵袋で公式のカテゴリーマスターとして一般人の薄毛に対する悩みや髪のケアに対する悩みに回答しているところをよく見かけるから。また、一時期自分が薄毛なのではないかと不安になったときも花王の公式アカウントが回答をしてくれた”(20代男性)など、顧客を巻き込み、共によい体験をつくっていく姿勢が評価されている。
無印良品(15位): “顧客の要望を聞いて商品を改良し続けている。生産工程と価格の見直し、値下げをよくしている”(30代女性)、“消費者のニーズに合わせて細かく商品を改良していってくれるから”(40代男性)、“客の要望などを反映して早めに改良して商品化し直すところ”(40代女性)など、消費者のニーズを聞いて理解し、反映して商品や価格を見直し続けている姿勢が高い評価を得た。
【CXの分析ポイント】
・志向力:ブランドの目指す姿が明確で、顧客が実感できるほど徹底されている
・俊敏力:スピード感があり、顧客の期待を超え続ける迅速な動きができている
・共創性:顧客の声に真摯に向き合うだけでなく、顧客とともに体験づくりができている
同ランキングは、顧客視点でのすべての体験を通じたブランドの「CXスコア」を数値化し分析しており、本年度で3回目となる。商品やサービスの機能や性能などの機能的価値だけでなく、そのブランドや企業に関わるすべての体験を通じて顧客が経験する、喜びや満足感などの情緒的価値まで含めた総合的な価値を数値化している。
これまでC Spaceがグローバルで行ってきたCXの分析を通じて、CXを高めるには「私向けのものだと思える」「私にとって意味がある」「オープンで、正直である」「私の立場で考えてくれる」「いい気分にさせてくれる」の5つの情緒的な要素(5 Emotional Cues) を顧客に感じてもらうことが重要だということが明らかとなっている。
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顧客が求める体験価値の5つの要素(5 Emotional Cues)
「CXランキング™ 2021」 の考察
1. With/Afterコロナの環境下の1年で変化した顧客の心理
With/Afterコロナとなったこの1年では、「星野リゾート(1位)」「帝国ホテル(4位)」「スターバックスコーヒー(6位)」など「おもてなし」や「ホスピタリティ」に定評がありつつ、新しい価値を生み出しているブランドが躍進している。星野リゾートのマイクロツーリズムの提唱や、帝国ホテルのサービスアパートメントの提供開始など、新たな価値を提供し続けていることで、CXを高め続けていると考えられる。また、「ワークマン(2位)」「ニトリ(8位)」が、はじめて上位にランクイン。“欲しいもの” が “ほかより安く” しっかりした機能で提供されている(ワークマン)、“必要なもの” が “安くて質が高くて” “そろっている” (ニトリ)と、With/Afterコロナ時代のライフスタイルにあった提供価値が顧客に受け入れられたブランドが躍進しているのがわかる。2. ブランドの「志向力」、変化をとらえ迅速に対応する「俊敏力」、顧客との「共創性」が、高い顧客体験価値を提供できているブランドに共通する要素
コロナ禍を受けてのニューノーマルが常態化したこの1年で、顧客の心理を捉える要素にも、昨年とは違った特徴的な変化が見られる。商品やサービスの機能的な便益だけではなく、企業が掲げる「パーパス」や経営者の姿勢を体験価値として評価するコメントが多く見受けられ、企業やブランドの「志向力」を顧客が支持する傾向が顕在化しているのが今年の特徴といえる。また、変化をとらえ迅速に対応する「俊敏力」や顧客との「共創性」が確認されるブランドが上位に名を連ねることも、今年の特徴である。「志向力」: ブランドの目指す姿が明確で、顧客が実感できるほど徹底されている
星野リゾート(1位):“ホテルのコンセプトが明確。高いが満足、特別感を演出したホテル内での暮らし、喜び、驚きを提供している。思い出に宿泊し、ホスピタリティを感じる”(40代男性)、“星野リゾートだからこその魅力を感じる”(40代男性)など、ブランドの目指す姿が明確で、提供するサービスや従業員一人一人に浸透していることが評価されている。
味の素(9位):“家族の健康や豊かな心を育てるために必要な、食事のために美味しく、栄養のあるものをつくっている企業だと思うので”(30代女性)、“健康的な生活を送るうえで、食生活が大切だということを、商品やテレビCMなどを通して伝えてくれていると思うから”(40代女性)、“eat well live well のキャッチフレーズに共感。全ての思いが込められている” (50代女性)というコメントに見られるように、味の素の存在意義「食と健康の課題解決」が顧客に伝わって評価されていることがうかがえる。
「俊敏力」:スピード感があり、顧客の期待を超え続ける迅速な動きができている
丸亀製麺(16位): “その時のご時世にあった販売方法に取り組んでいる”(30代女性)、“期間限定メニューの再発売など、利用者の意見を採用した企画を数多く行っている”(20代男性)など、新しいテイクアウトの迅速な全店舗展開などをはじめとしたサービス提供のアジャイルな対応を多くの顧客が評価している。
Google(19位): “世の中の事情に合わせてどんどん変わってゆくから”(20代男性)、“顧客が望むサービスをいつの間にか提供している”(60代女性)など、顧客のニーズをいかに先回りして、答え続けていくかということが良いCXにつながっている。
「共創性」:顧客の声に真摯に向き合うだけでなく、顧客とともに体験づくりができている
花王(10位): “日頃からお客様の商品の感想や要望をちゃんと聞いてくれて、少しでも使いやすくなるような商品の改良を行ってくれる” (40代女性)、“Yahoo!知恵袋で公式のカテゴリーマスターとして一般人の薄毛に対する悩みや髪のケアに対する悩みに回答しているところをよく見かけるから。また、一時期自分が薄毛なのではないかと不安になったときも花王の公式アカウントが回答をしてくれた”(20代男性)など、顧客を巻き込み、共によい体験をつくっていく姿勢が評価されている。
無印良品(15位): “顧客の要望を聞いて商品を改良し続けている。生産工程と価格の見直し、値下げをよくしている”(30代女性)、“消費者のニーズに合わせて細かく商品を改良していってくれるから”(40代男性)、“客の要望などを反映して早めに改良して商品化し直すところ”(40代女性)など、消費者のニーズを聞いて理解し、反映して商品や価格を見直し続けている姿勢が高い評価を得た。
3. 顧客体験を、生活者が顧客になってから、つまり購入体験及び商品・サービス体験中心にとらえるのではなく、顧客になる前からの広い領域の中で考えるべきである
ブランドの体験は顧客になる前から始まっており、ブランドのパーパスや経営者の姿勢など、購入・使用体験に関わらない体験も、CXに大きな影響を与えている。そのため、商品・サービス体験や購入体験だけでなく、より広い真のカスタマージャーニーの視点で顧客体験をデザインしていく必要がある。星野リゾートや帝国ホテルなど、ランキング上位ブランドの中には4割以上が「ノンユーザー」であるブランドが存在し、「お客さまの気持ちや求めることを、よく理解している」と、たったひとつのブランドを想起する際に、自身が体験していないブランドを挙げる人が多く存在する。このことは、狭義の購買に関わる顧客体験だけでなく、潜在顧客も含めた広い意味でのカスタマージャーニーを捉えることが求められているということだ。
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※2021年は35人以上から想起されたブランドを対象にランキング(2021年は10507人中35人以上、2020年は3626人中12人以上)"
CXランキング™ 2021 (1位~50位)
※2021年は35人以上から想起されたブランドを対象にランキング(2021年は10507人中35人以上、2020年は3626人中12人以上)
※2021年は35人以上から想起されたブランドを対象にランキング(2021年は10507人中35人以上、2020年は3626人中12人以上)
CXスコア算出方法およびスコアと購入意向の関係
CXスコアは、「好きなブランド」や「優れた顧客体験を提供するブランド」を直接質問した結果ではない。一般消費者に「顧客の気持ちや求めることをよく理解している」ブランド・企業をまず頭に思い浮かべてもらい、そのブランドについて「顧客が求める体験価値の5要素」を具体的な項目に分解した21項目を評価してもらう。同様に、「顧客の気持ちや求めることをあまり理解していない」ブランド・企業を思い浮かべてもらい、そのブランドについても21項目を評価してもらい、それらの数字からなる合成変数としてブランドのCXスコア(-10~+10)を算出していく。2021年は35人以上から想起されたブランドのみをランキングの対象としている。また、CXスコアと購入意向の有無には強い関係性が見られる。
CXスコアと購入意向の関係性
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