文化庁は新たなかたちの文化発信プロジェクト 「CULTURE GATE to JAPAN」による作品展示を、1月19日より羽田空港などにて開始する。同プロジェクトでは、メディア芸術のフィールドで活躍するアーティストやクリエイターが日本の文化資源を題材にアート作品を制作、空港・クルーズターミナルに展示し、日本文化の魅力を発信するもので、今回で2年目をむかえる。
 
羽田空港では、「掛軸」にテクノロジーと現代的な解釈を加えた「NEO-KAKEJIKU」と、「花火」をモチーフにした作品の2つのインスタレーションを展示。東京国際クルーズターミナルでは「MUTEK.JP」のクリエイティブディレクターなどで知られる竹川潤一氏をキュレーターに迎え、「海」と人間の「心」をテーマとした映像作品展示「+A+(プラス・エー・プラス)」を開催する。
 
【各展示概要】
<羽田空港展示>
(1) 「NEO-KAKEJIKU」
羽田空港 第2ターミナル2階 マーケットプレイス
期間:1月19日~3月21日
「NEO-KAKEJIKU」
「NEO-KAKEJIKU」
■展示概要(「CULTURE GATE to JAPAN」より)
日本文化の魅力として、伝統文化と先端技術の融合が挙げられることがあります。今回私たちはメディア芸術というテクノロジーを用いたアートやマンガ、アニメーション等のエンターテインメントを含む幅広い今日の芸術表現を、日本の伝統的な芸術鑑賞体験と接続するインスタレーション作品を、Welcome Artとして空港に展示します。

「掛軸」は表装した書画を床の間や壁などにかけ、飾りまたは観賞用としたものです。私たちはこの伝統的なメディアにテクノロジーと現代的な解釈を加え、新たな装いを持たせました。通常は絵画や書が飾られる本紙と呼ばれる中央部にモニターを設置し、現代のメディア芸術領域で活動する5組の作家が制作した映像を映し出します。掛軸に見立てたスクリーンの中で、アーティストやクリエイターが新たな視点や手法で日本文化の魅力を表現した映像が、空港を訪れたみなさんを出迎えます。

■文化資源×アーティスト
・招き猫×AC部
・水墨画×Creative Label nor 
・和紙×ニャムヤム 
・竹取物語×宮崎夏次系
・解体新書×吉開菜央

  (2) 「Transcending Prayers」
羽田空港 第2ターミナル2階 マーケットプレイス
期間:1月19日~終了日未定
「Transcending Prayers」
「Transcending Prayers」
■展示概要(「CULTURE GATE to JAPAN」より)
世界中で親しまれている「花火」は、日本において江戸時代以降、国内各地の地域文化とともに発展し、日本を代表するモチーフとして確立されてきました。アーティストの島田清夏は、グローバルかつローカルでもある「花火」という表現を通じ、歴史や思想、美意識など、様々な概念が共存し合う複雑な日本文化の本質を探求します。
 
本作では、「鎮魂」と「祭り」の両面において発展してきた花火大会に着目しています。コロナウイルス感染症の影響を受け、2020年を通じ国内で開催されなかった花火大会の時間的・地理的データの分析をベースに、実際の花火を打ち揚げ、失われてしまった花火大会のための花火、そしてありえたかもしれないもうひとつの世界を想起させる花火を創ります。展示は段階的に形態を変化させ、制作過程やデータシュミレーションによる映像作品と、打ち揚げた後に残された花火の筒などの部品や、撮影された映像データなどによって構成されるインスタレーション作品が順を追って展開されます。花火デザイナーとしても活躍する島田が、歴史的・文化的背景の考察をもとに、花火の持つ様々な側面を対比させた世界観を創りあげます。
 
■文化資源×アーティスト
花火×島田清夏

また、羽田空港第2ターミナル5階FLIGHT DECK TOKYOでは、3月21日まで昨年度の作品をモニターやパネルにて紹介している。
 
<東京国際クルーズターミナル>
「+A+(プラス・エー・プラス)」
東京国際クルーズターミナル3階 大型LEDビジョン
期間:調整中
※東京国際クルーズターミナルは現在、東京都の方針により閉館しており、開館と同時に展示公開を予定している。展示の日程および最新情報は公式Webサイトにて確認が可能。
「+A+」
「+A+」
■展示概要(「CULTURE GATE to JAPAN」より)
”心海(しんかい)に誘うターミナルへようこそ”
東京国際クルーズターミナルから「海」を見ながら、近づいては遠くへゆらぎ、とどまることない波間に、人間社会における「時間」とは別の尺度で”とき”を感じ、自分や他者との「心」の新たなふれあいを想像しました。

「+A+」は、「+A+」という架空のコードがポート(PORT/港)に接続する「世界」を音と映像で鑑賞する展示です。「A」は、出会いや伝承を内包する港の存在と、日本文化の文脈に「"A"dapt(適応)」した海との関わりを「”A”rtist」が表現し、「"A"rchive」する文化芸術活動の過程をあらわしています。

今回展示する3組のアーティストは、文化的な視点を自らに置き、この関係性を環世界として人の「心」と「海」について捉えることで心にふれる景色へと誘い、時代を超えたうねりとして、本質的な問いに向き合う時間を刻みます。東京国際クルーズターミナルで、みなさまの「心」のなかにある「海」を発見し、芸術的に表現されてきた日本の海の文化の新たな視座を、東京湾の風景とともにご鑑賞ください。
 
■キュレーター:竹川潤一
■文化資源×アーティスト
・江嶋縁起×江原彩子 
・日本の鳥瞰図×大石啓明 & ながしまみのり
・江戸前鰻×滝戸ドリタ