高岡伝統産業青年会は、地元の富山県高岡市にて大規模な展覧会「暮らしに生きる伝統のかほり展」を開催する。

展覧会のテーマは『技術の可能性を発掘』。2021年の夏に、全国から公募で選考された気鋭のデザイナーと高岡市の職人がマッチングされ、約半年間のワークショップや開発を行った。この展覧会は、その実験的な試作の発表展として、2月26日~3月5日に開催される。
富山県高岡市では、鋳物・漆芸による伝統産業が盛んで、古くは鍋や釜から始まり、武具の装飾・美術工芸・仏具の製造など時代ごとに形を変え、現代まで400年以上続いてきた。高岡伝統産業青年会は、「ガラは悪いが、腕はいい」をスローガンに、高岡の伝統工芸の未来を牽引する若手職人たちのチーム。真鍮・鉄・錫などの金属加工を専門とする職人や漆芸の職人、そしてそれらを全国へ販売する地元の問屋メーカーなど約40名が加盟している。

高岡伝統産業青年会は、大型見本市や有名セレクトショップなど、毎年都心や海外でのポップアップ展を通して、高岡の技術やものづくりのストーリーを発信してきた。2020年のコロナ禍以降、リアルな場での開催を極力自粛し、Youtube番組などを並行する中で、いま自分たちにできるステップアップを職人たちが画策。これまで「情報発信」を心掛けてきた高岡伝統産業青年会は、逆境を逆手に取りこの境遇を転機にすべく、技術と思考の開発を目標にデザインマッチング企画を独自開催。これまでの県外遠征展示会を見直し、今回は初の地元開催となる。地元へのPRはもちろん、「県外から呼び寄せる展示」を目指す。
 
今回のデザインマッチングでは、全国から41点の応募があった。集まった応募アイデアの中から、高岡伝統産業青年会の会員による厳正な審査が行われ、職人とデザイナーの制作が開始された。まずはデザイナーを高岡の職人工房へ招聘し、現場でのものづくりを紹介。改めてデザイナーのアイデアとのすり合わせを行い、約3カ月をかけて試作を繰り返した。展覧会ではこのマッチングででき上がった新作を初公開で展示する。

展示企画の1つとして、総勢6組のデザインマッチンググループの伝統技術の新作を発表する。

01_漆芸吉川×寺崎吉伸
漆と金粉や青貝、卵殻などの自然物を組み合わせて加飾を行う蒔絵師の吉川和行氏と、ヤマハにて楽器やオーディオのデザインに従事するデザイナー寺崎吉伸氏による、オブジェとしても飾れるラグジュアリーなリバーシ。
02_砺波商店×本田耕
アルミなどの金属製の調理器具やテーブルウェアの企画・製造を手掛ける砺波商店の砺波敬之氏と、住宅設計から文房具や服飾雑貨の企画・デザインまで手掛ける一級建築士事務所HAFENの建築士・デザイナー本田耕氏による、オブジェとしても日常を彩る真鍮製酒器。
03_平和合金×宇野公二
銅像やモニュメントなど大型鋳物の鋳造を手掛ける平和合金の藤田和耕氏と、雑貨・文具・ロボットなどを幅広く手掛けるエンジニア兼デザイナーの宇野公二氏による、さざなみの水面をイメージしたアルミ鋳造の傘立て。
04_高和製作所×柳澤駿・鳥山翔太
細かい模様まで再現できるロストワックス鋳造を得意とする高和製作所の上坂佳広氏と、工業デザインやブランディングなどを幅広く手掛けるDESIGN COMPANY CUMOのデザイナー柳澤駿氏・鳥山翔太氏による、「けむり」に着目した船の形のお香立て。
05_佐野政製作所×小泉創
鋳物によるオーダー品やノベルティなどの企画・制作を手掛ける佐野政製作所の佐野秀充氏の技術力と、デザイナー小泉創氏による発案・設計によって生まれた、安定と不安の間を彷徨う「テンセグリティ構造」を活かした新しい構造の風鈴。
06_般若鋳造所×ノモトミサキ
2つの金属を1つの鋳型に流し込む吹分鋳造を得意とする般若鋳造所の般若雄治氏と、伝統工芸の技や技術を取り入れた作品制作を行うアーティスト・デザイナーのノモトミサキ氏による、吹分技術を使った年齢や性別を問わず誰にでも馴染むデザインのバングル。
また、技術紹介エリアでは、それぞれの工房が自社技術や商品を展示する。高岡には、長らく受け継がれてきた伝統技術がほかにもたくさんある。デザイナーたちが新しい発見をできるよう、加工の工程や技術の種類などを展示し、次のマッチングにつなげる。

2月26日には、同会場にてトークライブを実施予定。デザインマッチングで生まれた新作の紹介や、制作過程に関する職人とデザイナーによる対談を予定しており、オンラインでの無料視聴も可能。
新社屋をオープンし国内外の賞を多数受賞している能作をはじめ、産業観光としての魅力が高まっている高岡市。高岡伝統産業青年会は、時代の逆境にも負けない職人たちや、新しい価値観を持ち込み風を巻き起こす移住者などとともに、産地としての底力を押し上げ、全国へPRしていく。