ITOCHU SDGs STUDIOでは、5月30日のごみゼロの日を機に、横浜八景島が主催する、プラスチックゴミによる海洋汚染問題をアートで表現した展示『“名画になった”海 展』を5月31日から7月18日の期間で開催する。
ITOCHU SDGs STUDIOを運営する伊藤忠は、企業理念でもある「三方よし」の精神のもと、自社だけでなくさまざまなステークホルダーの利益を追求し、社会課題を解決しながら世の中の発展に寄与することを目指すとしている。

「中期経営計画 Brand-new Deal 2023」における基本方針のひとつとしても、「SDGsへの貢献・取組強化」を掲げており、ITOCHU SDGs STUDIOは生活者がSDGsを身近に感じ、実践できる場であるだけでなく、そこからSDGsの取り組みが世の中に広がっていくことを目指し、2021年4月15日に開設された。同施設では、SDGsに携わる活動を行なっている団体などへの展示スペースやSNS発信等の撮影スペースを無償提供している。

展示は主に2つの企画で構成されており、第一部では、「プラスチックゴミの量が魚の量を超える」といわれている2050年の海を、ゴッホや葛飾北斎を含む6名の巨匠が描いたらどうなるか、AI技術を用いて再現した絵画を楽しめる。第二部では、実際に海から回収したプラスチックを、スノードームのフレークに用いた「Microplastic Globe(スノードームになった未来の海)」5点を展示する。マイクロプラスチックに囲まれて暮らす海の生きものの姿を、幻想的な造形で表現したものとなる。また会場では募金活動を実施。自然環境保護活動を行う団体へと寄付することで、プラスチックゴミ問題解決へのアクションを表明している。

4月1日からプラスチックゴミに関する新法案(プラスチックにかかる資源循環の促進などに関する法律案)が施行され、昨今、日本国内におけるプラスチックゴミの問題意識は急速な高まりをみせている。産業活動によって排出される年間数百万トンものプラスチック廃棄物の多くは最終的に海にたどり着き、魚をはじめ、海全体の生態系に悪影響を及ぼしている。「生きものを通じて世界に笑顔と感動を」をスローガンに掲げる横浜八景島は、海や川を脅かすこの深刻な問題に警鐘を鳴らすために、同展示会を開催するとしている。
「”名画になった”海 展」概要
主催:横浜八景島
期間:5月31日~7月18日 11:00~18:00
休館日:毎週月曜日、月曜日が休日の場合、翌営業日休館
会場:ITOCHU SDGs STUDIO(東京都港区北青山2‐3‐1 Itochu Garden B1F)
料金:入館料無料
           
開催背景
プラスチックは、あらゆる場面で生活を便利にしている一方で、プラスチック製のレジ袋が完全に自然分解されるまでは1000年以上かかるとの研究もある。一旦海に流出したプラスチックは、長期間にわたり環境にとどまるとされている。
 
そして現在、世界全体で少なくとも年間800万トンを超えるプラスチックゴミが海洋に流出していると推計されている。また、5mm以下の細かいプラスチック粒子であるマイクロプラスチックも世界中の海に存在している。これは、海岸に打ち寄せられたプラスチックゴミが紫外線や波の影響で分解されたり、スクラブ洗顔料や一部の歯磨き粉などに含まれる「マイクロビーズ」とよばれるプラスチック粒子が下水道を通じて海に放出されたりしたものである。この海洋プラスチックゴミが、海洋の生態系にさまざまな影響を及ぼしている。例えば、Microplastic Globeのモチーフとなっているカクレクマノミは、棲みかとなるイソギンチャクが海中のマイクロプラスチックの影響で白化することが報告されており、クマノミの世界的な減少との関係が示唆されている。同展示会の開催は、一人でも多くの人に海洋ゴミ問題に向き合い、自分にできることを考えてもらえるきっかけづくりになるようにと、実施された。

■展示内容
<第一部>もし、あの名画が描かれた時代が、2050年だったら? ゴミであふれた未来の海をAI技術で再現
フィンセント・ファン・ゴッホ、ポール・ゴーギャン、喜多川歌麿、葛飾北斎、エドゥアール・リウー、馬遠(ばえん)の6名の巨匠たちが描いた海を、プラスチックゴミの量が魚の量を超えると言われている2050年の姿にアップデートした作品が並ぶ。各アーティストの画風や絵のタッチをスタイルトランスファーというAI技術を用いて再現した同作品は、2019年に「仙台うみの杜水族館」で発表され、海外からも高い評価を受けた。
サント=マリー=ド=ラ=メールの海景2050フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)×AI
サント=マリー=ド=ラ=メールの海景2050フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)×AI
富嶽三十六景 神奈川沖浪裏 2050葛飾北斎(1760-1849)×AI
富嶽三十六景 神奈川沖浪裏 2050葛飾北斎(1760-1849)×AI
<第二部>マイクロプラスチックが舞うスノードーム「Microplastic Globe(スノードームになった未来の海)」
第二部では、マイクロプラスチックが漂う海の中と、そこで暮らす海の生きものを表現したスノードーム「Microplastic Globe」を5つ展示している。ドームの中を舞うフレークは、実際に海から回収したプラスチックを使用しており、既に海洋プラスチックゴミの影響が報告されている5つの生物(カクレクマノミ、ミズクラゲ、ザトウクジラ、アオウミガメ、マゼランペンギン)の意匠と共に鑑賞できる。各種ドームの造形・制作は、スノードーム作家・石田兵衛(いしだひょうえ)氏による。
カクレクマノミ
カクレクマノミ
ウミガメ
ウミガメ
ドームに使用されたプラスチックは、海洋プラスチックのアップサイクル事業をアート活動として行う会社「REMARE(リマーレ)」の協力のもと収集された。なお、同プロダクトは、マイクロプラスチック問題啓蒙の役目を終えた後、専門家の監修のもと適切に処分するとしている。
ドームに使用したプラスチックゴミが収集された海岸
ドームに使用したプラスチックゴミが収集された海岸