絵の魅力に気づいたのは、油絵との出会いから

──もともと絵を描くことはお好きだったのでしょうか。
絵は昔からすごく好きでした。その楽しさに最初に出会ったのは小学生のときで、ゴッホの絵を模写する授業が楽しく、油絵の色を重ねていくことで出る立体感が面白かったです。

色彩の感じが、遠くから見るのと近くで見るのでは別の色に見えて、それで絵画が成立することは幼いながらも魅力的に感じられました。

ハッピーな事柄を、潜在意識的に見てもらいたい

──ご自身の作品には、どのようなメッセージが込められていますか。
人間って面白くて、ハッピーがいっぱいあったらハッピーなはずなのに、こんなに幸せでいいのだろうか、なんて言ってしまう。良いことよりも悪いことにフォーカスを当ててしまうのが癖になっているように感じるんです。つまり人間って、ドラマを感じたいのかなって。人生の中でアップダウンを味わっているんだなと思っています。

ただ、物事をネガティブに捉えているうちに本当に悩んでしまったり、なんで私はこうなっちゃうんだろうと考えたりする人の顔を見ていると、やっぱり答えもシンプルなんだなってことに僕はたどり着いたんですね。ハッピーに生きていきたいなら、物事のハッピーな面に目を向けるのがいい。そういった思いを絵に乗せると一番伝わりやすいのかな、と考えています。

僕が描いている作品にはそのような思いや答えを込めていますが、見る人によって受け取り方は違っていい。お客さんが受け取ってくれたことがまた1つの正解となることも、アートの魅力かなと思います。

ただ、その中でも確実なハッピーを潜在意識的に見てもらいたい。楽しい気持ちを思い浮かべてもらえたらいいなというのが、全ての作品に共通していると思いますね。だから、絵の中のいろいろなところにラッキーな数字や、口角を上げて笑顔になれるようなわかりやすい仕掛けがあります。

──その中でもよく登場するテディベアのモチーフは、どのようなイメージを持って描いていますか。
個展「505 I found」でも人気のあった30cm角のキャンバス印刷の作品群
個展「505 I found」でも人気のあった30cm角のキャンバス印刷の作品群
面白いことに、テディベアが嫌いな人って見たことないんです。僕はアメリカ文化で育ってきたので、テディベアは必ず身近にありました。ベッドにもいるし、まだ「男の子がぬいぐるみなんて」という意識が根強い中でも、男の子が唯一持っていいぬいぐるみがテディベアなんです。そういった童心を大人でも持っていいと思える魅力があるように感じます。

僕自身が落ち着きとワクワクとハッピーを全部シェアしてきたテディベア、それがみんなのぬいぐるみであってほしい。そんな思いがあります。

──絵画作品だけではなく、オリジナルTシャツなどの洋服やグッズも展開されています。こだわりや「こんなふうに使ってほしい」などの思いがあればお聞かせいただけますか。
丘山さんがデザイン・プロデュースしている「ASCENDED」のオリジナル商品
丘山さんがデザイン・プロデュースしている「ASCENDED」のオリジナル商品
アパレルも、着ていてラッキーなものを、という思いで制作しています。毎日着るのだから、同じ形の洋服があったら、縁起のいいシンボルや柄が入っているものを身につけて過ごしたいですよね。 

数字の持つ意味もすごく大事にしています。時計や誕生日をはじめ、数字は人生と切っても切り離せないものですから、せっかくならラッキーナンバーを持っていたい。それに、絵の中に隠れていた数字を誰かが見つけたときの、「見つけちゃった」って言葉はすごくポジティブですよね。そういった言葉のちょっとしたニュアンスで幸せな気持ちになれるような、本当に繊細な部分を僕はすごく気にしますね。

日本のルーツを持ちながら、アメリカで育った経験

──アメリカのポップアート風の色づかいに日本の枯山水のイメージが合わさった抽象絵画の作品について、この表現に行き着いた経緯をお聞かせいただけますか。
《#0001 DANCE OF WATER》
《#0001 DANCE OF WATER》
《#0001 DRAFFITY》
《#0001 DRAFFITY》
アートを制作する過程で、自分のもっと深いところを掘り下げていきたいなと思って抽象画に行き着いたとき、自分のルーツについて考えました。自分のルーツがどこにあるのかは誰でも知ったほうがいいと思っていますが、日本人はあまりそうしませんよね。アメリカはいろいろな人種が混ざり合っている国だから、それぞれの宗教やカルチャーが全然違うんですよ。そういう環境にいると自分のルーツはやっぱり話さなきゃいけないし、みんなルーツを大事にしているんですね。

その感覚は日本に帰ってきても僕は変わらなくて、今度はアメリカのルーツ、アメリカで過ごした時間も大事にしていきたいなと感じました。日本のルーツを持ちながらアメリカで育った海外のルーツも合わせて、アートに持ち込めたらいいなと思って形にしたのがこれらの作品です。

日本的な感覚で自然エネルギーを描ける枯山水に出会ったとき、もしかしたらこれが僕の表したいルーツの表現の1つかなと思いました。そこにアメリカのグラフィティというストリートアートを素材として盛り込んで、アメリカと日本のカルチャーを融合させました。日本生まれでアメリカ育ちの自分自身と照らし合わせて、自分のちょっと深い部分の表現ができたらいいなと思って制作しています。

作品が生まれるまでの制作の風景

──制作にあたって、丘山さんのイメージやインスピレーションの源泉はどこにあるのでしょうか。どのようなときに描きたい意欲が湧き上がりますか。
例えば、オレンジ色が特徴的なテディベアの作品《ME TIME DDYBAE》は、疲れていたときに癒やされたいなと思って描いたんですね。自分の中で欲しているものを描くことが多くて、感情が生まれた瞬間のエネルギーと自分のイメージを照らし合わせながら描いています。
右から《ME TIME DDYBAE》、《DRAFFITY DDYBAE》、《BABY PRINCE》、《PRINCE CHARMING》
右から《ME TIME DDYBAE》、《DRAFFITY DDYBAE》、《BABY PRINCE》、《PRINCE CHARMING》
一方で、抽象画はできるだけ頭で考えずに、もっと深いところで感覚を意識して描くことを大切にしています。だから、一番意識が薄い時間、夜中もしくは朝6時から10時頃の半分寝ぼけているぐらいのときに描き始めるんですよ。エネルギーを描きたいから、自分の意識が薄くて頭で考えない時間が欲しい。描き終わったあとに「こんなのができたんだ」と思うのが楽しくて仕方がないんです。

絵を描くときはキャンドルを焚いて、音楽をかけて、気持ちいい空間やワクワクするムードをつくるのが好きですね。モチベーションが上がって前向きな気分になれます。

お客さんと一緒に共感したい、お客さんを喜ばせたい

──総合芸術家として俳優やダンサーとしてもご活躍する丘山さんにとって、アーティスト活動はどのような位置付けであると感じられていますか。
絵を描き始める前は、アートは自分のためのものだと思っていました。けれども、2022年に初開催した個展「KIYAMA HARUKI Solo Exhibition – HELLO my name is」で作品を見てもらうことになったときに、どうやったらみんなを楽しませられるかと思うようになったんです。アートは僕にとって、パフォーマンスのうちの1つなんですよね。舞台はお客さんの前に立ってパフォーマンスするじゃないですか。お客さんありきなのはアートも一緒。お客さんと一緒に共感したい、お客さんを喜ばせたいというエンターテインメントの軸はブレていないのかなと思います。

抽象画に関しては、より内面的なアートの領域に自分を置いたところですね。楽しませるというよりも、感じてもらいたい。いずれにしても、見てくれる人がいることは僕にとって嬉しいことですね。

──個展では、来場者の方に積極的に声をかけて明るくお話をされている丘山さん。お客さんと交流して感じたことがあれば教えていただけますか。
自分の描いた絵を通じてお客さんとお話しするのは、なかなかないことですよね。お客さんと一緒に過ごすアートの時間は、僕にとってすごく楽しみにしていることでもあります。今年は2回目の個展を終えて、またやりたいな、そのためにまた頑張ろうかなと思うようなモチベーションになっています。
直近の活動
直近の活動

いつかは、海外に作品を持っていきたい

──⻄武渋谷店のポップアップストア開催など、アーティストとしての活躍の場はさらに広がっている印象があります。今後に向けての期待や意気込みをお聞かせいただけますか。
一番やりたいのは海外に作品を持っていくこと。特に抽象画は海外に連れて行って、海外の人はどう見てくれるのか、話を聞いてみたいと思いますね。

あとは夢だった「BE@RBRICK」とのコラボレーションができたので、こうした嬉しい出来事がたくさん起こることを期待しています。アートを求める人も、これから求めてくれる人も、僕の作品を見て喜んでほしい。笑顔のサプリメントとしてもっと広がっていったらいいなと思います。絵を通してハッピーが広がっていく未来はすごく楽しいと思うので、そのチャンスは何でも掴んでいきたいです。
「BE@RBRICK」とのコラボレーション作品《POPCORN BE@R 400%》
「BE@RBRICK」とのコラボレーション作品《POPCORN BE@R 400%》

みんなをいろいろな方法でハッピーにしたい

──最後に、ART FUN FANの読者の方にメッセージをお願いいたします。
僕はずっと芸能の世界で生きてきましたが、並行してアーティストの活動を始めたことでいろいろな可能性が広がったと感じています。ワクワクすることしか起きなくて、すごく楽しい。だから、これからもたくさんやっていきたいな、経験させてもらえたら嬉しいなと思っています。

加えて、ファンの人たちがそれを喜んでくれたら嬉しいし、一種の恩返しとして、アートを通じて勇気を与えられたらいいなと思います。例えば、いろいろなことに興味があるって良いことのはずなのに、「あれしてるんだからこれしちゃダメ」ってよく言われるじゃないですか。そこを打ち破りたい。「あれをしてる、でもこれもしてる。いいね」っていう世界をつくりたい。どれもしっかりやっていれば大丈夫。「はるちゃん(丘山さん)がやってるんだったらできるかな」と僕の行動がみんなの勇気になったら嬉しいです。そのためにとことん自分の夢を叶えていきたいし、楽しみながら、周りの人をいろいろな方法でハッピーにしていきたいです。

ぜひいつか個展にも来てください。楽しんでもらえて、必ず何か残るようなエンターテインメントをお届けできるんじゃないかと思います。

取材対象者プロフィール

丘山晴己(きやまはるき)
1985年1月10日 東京都出身。DRELLA 所属。日本舞踊家の父・花柳伊三郎とバレリーナの母・小山加代呼との間に生まれ、両親ともに舞台表現者である芸術に親しむ家庭環境より、幼少期から日本舞踊・バレエ・油絵などの英才教育を受ける。14歳でアメリカに単身留学、ウェストタウンスクールにて高校卒業。グラフィックデザインでフィラデルフィア芸術大学に入学、パフォーミングアーツで美術学士(BFA)を取得し卒業。全世界で人気のイリュージョン「The Illusionist」では初の日本人出演者としてブロードウェイデビュー。現在は、油絵、デジタルアートの創作発表によるアーティスト活動、刀剣乱舞を始めとする人気ミュージカルの舞台俳優など、総合芸術家として幅広く活躍中。2022年9月に代官山「DRELLA Art Gallery」で開催された初個展では、テディベアの油絵、デジタルアートなど初公開の作品を多数発表、全作品が完売となった。

丘山晴己 公式 Instagram : https://www.instagram.com/haruki_kiyama.art
DRELLA 公式 Instagram : https://www.instagram.com/drella.art
DRELLA Art Gallery https://www.drella.art
DRELLA Artists Agency https://www.drella.agency/
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さつま瑠璃
文筆家・作家。芸術文化を専門に取材執筆を行い、アートと社会について探究する書き手。SNSでも情報を発信する他、さつまがゆく Official Podcastでは取材執筆にまつわるトークを配信中。Web: https://satsumagayuku.com/ Twitter: @rurimbon
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ART FUN FAN
ART FUN FANでは、広告・マーケティング・クリエイティブ業界で働く皆さまにアートの情報をお届けします。おすすめの企画展をピックアップして、美術ライターが独自の切り口で解説。

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