大手SIerからスタートアップへ

──小峰さんはIntelligence Designに入社する以前は、キヤノングループでエンジニアやコンサルタントとして10年近く勤めていたとお聞きしました。大手企業から、スタートアップ企業への転職はご自身のキャリアのなかでも大きな転換かと思います。どうして転職を選んだのでしょうか?
約10年間前職ではさまざまな経験を積ませていただきました。エンジニアとして設計や開発、運用を手がけるところから、クラウドやIoTなどをお客さんの元に導入し、教育していくDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルタントのようなこともしていました。そうして経験を積み重ねていって、知らないうちに自分の手を出せる領域がとても広がっていることに気づいたんです。いままではそれが自分の趣味や自己満足のレベルで終わっていたのですが、それをなにか別なことに活かしていけないかなと。そう考えるようになったんです。
──チャレンジングな前向きな気持ちでの転職だったんですね。
そうですね。自分のスキルを試してみたいなと思いました。ここまでやったんだから、なんとでもできるだろうと。また、やはり時代の流れが加速していっているなとも思っていました。スピートが速くなるなかで、大きな組織ではどうしても動きや判断にタイムラグが生じてしまう。そこのスピードを上げていきたいと思ったのも、転職を決めた要因の一つでした。そのような状況で、元同期でこの会社の取締役である末廣から紹介してもらったのが、このIntelligence Designでした。

Intelligence DesignはAIを用いたプロダクトの開発や販売、さらにAIビジネスのコンサルティング業務を手がけるスタートアップ企業です。昨今、AI技術があらゆる分野で注目を集める一方で、企業が実際にAIをビジネスに導入していくには、まだまだギャップがあると思います。「AIができた! これでコストが削減できる!」なんてことはなくて、導入、運用をしてはじめて効果が現れる。でもAIはその意識がまだあまり持たれていないのではないかと思います。

そのギャップを埋めて、AIの社会実装を目指していくことをミッションに掲げるのがIntelligence Designです。自分がチャレンジする新しいフィールドにふさわしいと思い、入社することを決めました。

──Intelligence Designでの小峰さんの肩書はArchitect Designerとなっていますが、具体的にどういったお仕事をなさっているのでしょうか?
お客さん向けに開発しているシステムのプロジェクト推進やエンジニアの統括、また当社のプロダクト開発で実際に手を動かしたりもしています。ほかに、「ID lab」と呼んでいるコミュニティの運営も兼任しています。これは所属企業や経歴、年齢などの枠にとらわれずに、さまざまなエンジニアが集まるコミュニティです。下は大学生から、上は40歳くらいの方まで。幅広い年齢の人たちに参加していただいています。
このコミュニティでは、「新しいものを生み出すプラットフォーム」というあり方を目指しています。先述したように、AIと企業の間に存在するギャップは、新しい技術であるが故にベンダーとクライアントとの間の共通認識に相違が生じていることも要因の一つだと考えています。この問題を解決すべく、世界をリードする研究開発に関心のあるエンジニアが立場や経歴の垣根を越えて集まり、活発に議論しながら開発に打ち込める場をつくりました。それがテクノロジーの実験場「ID lab」です。

ID labでは現在、スポーツや健康などに活用できる「姿勢推定エンジン」や人の表情を分析する「感情分析エンジン」や「ウェルネスデータ解析」など幅広い分野のプロダクトの開発を進めています。コミュニティメンバーが持つナレッジを共有していくことで、自身のエンジニアとしての知識とスキルに還元していくことはもちろん、つくり上げたプロダクトを起点に新たな会社を創業していくなど、プラットフォームになっていけるような、そんなコミュニティを目指しています。

──やはり同じエンジニアといえども、それぞれ違いはあるものなのでしょうか?
めちゃくちゃ違いますね。とにかく速く書くコーディングスタイルを取る人もいれば、美しさにこだわる人もいて。それぞれが持つバランス感や気にしているところが全然違うので、他人が手がけたプロダクトやバックグラウンド、持っているスキルなどを相対的に見られる場になっていると思います。エンジニア同士で補い合えるような関係で、自分になにが足りないかわかるとか。そういう場が自分の会社以外にもこれからは必要になるのではないかと思っています。運営している私自身も、とても学びが多いですから。
──今後ID lab以外にも、エンジニア界隈のなかで企業を越えたコミュニティが形成されていく動きが続いていくと思いますか?
「ミックス、混ざっていく」というのは一つ流れとして生まれるのではないかと感じています。いろいろな人やモノがめちゃくちゃに混ざって、化学反応みたいに新しいモノを生み出していく。そういう動きが次に進むためには必要なのではないかと思います。

いま現在活発なコミュニティも多数存在していますし、今後も新しいコミュニティは増えていくと思います。例えば、それぞれの企業のオフィスの一角にコラボレーションスペースとして、社内での勉強会やお客さんとディスカッションができる場などは今後よりつくられていくのではないでしょうか。

エンジニアとしてサバイブするには

──大手SIerで10年以上経験を積んだ小峰さんですが、若いエンジニアやこれからエンジニアを目指す人たちへ向けて、アドバイスなどはありますか?
自分の普段いる領域の外に出ることが重要なのではないかと思っています。好奇心を持って普段の仕事とは関係ないモノに手を出しておくと、意外とそれが回り回って仕事で活かせることがあるんです。私の場合はここ数年の間、毎年アメリカで開催されるAWSが主催するイベント「AWS re:Invent」に参加しています。これも初めは好奇心で一度参加してみたのですが、得られる刺激や知見がとても多かった。以来、毎年休みをとって欠かさず参加するようにしていますし、そのときに好奇心を持ち続けることの大切さを再認識しました。

今後はエンジニアリング自体も、簡単な単純作業は、AIやロボットに変わっていくと思います。1個だけしかやれることがない人はそれらと戦わなければいけなくなります。そこで価値を出していくのは難しくなっていく。だからこそ、知的好奇心に従い、複数の領域をまたいでいくことが大事になるのではないかと思います。

──エンジニアもテクノロジーと競合していかなければならないわけですね。
私はエンジニアってかなり楽しい職業だと思うんです。新しいモノをつくって、それをお客さんに喜んでもらって、その上でお金がもらえちゃうんですから。この先エンジニアが機械やテクノロジーに負けないようにしていくためには、そのような新しいモノを創造していくこと、そのために手を動かし続けていくことが大切なのではないかと思います。
だから私自身もそれを続けていきたいと思います。「生涯エンジニア」っていうと、出世できない人みたいな響きがありますけど(笑)。でもこれからも手を動かし続けていきたいと思います。

──AIがより広まっていくように、新しいテクノロジーはこの先も生まれていきますからね。そこに順応していくためにも、手を動かし続ける必要があると。
ほかの人も言っている話ですけど、いまはパソコンなどのガジェットやAIなどのテクノロジーは人が意思を持って使役していますよね。今後は必ずしもそうではなくなってくると思っています。「それらが意思を持つ」に近いような、テクノロジーから能動的に人に働きかけていくような世界がやってくるのではないかと思います。

例えば、お風呂に入りたいときは蛇口をひねったり、ボタンを押したりすると思うのですが、それをせずとも、お風呂に入りたいと思ったときをAIが察して、勝手にお風呂を沸かしてくれる。そのようなAIのパーソナライズ化はこの先、生まれていくのではないかと思います。
このようにAIができることはいま以上に広がっていくと思います。ですが決してAIは魔法のようになんでもできるモノではありません。導入すればすべての課題が解決するわけではない。お客さんの求めている結果にたどり着くために道筋を示さなければなりません。

そのためにも、エンジニアはしっかりとAIを理解する必要があります。この先AIが増えていけば、エンジニアにもAIを扱える技術は当たり前に求められていくようなるのではないかと思います。そういう変化が起きていくなかで、自分から積極的に領域を広げられる人たちがこの先の時代に活躍していくのではないかと思います。いかにテクノロジー以上に個人の価値を上げていくか。それを考えていかなければいけない時代なのだと思います。

──大手SIerからスタートアップ企業へ転職したことを切り口に、AIと人々との関係についてお話いただきました。AIが魔法ではなくなる日がくるとき、エンジニアに求められる領域はどれほどの広さになっているのでしょうか。いつか来るその日に備えて、さまざまなものごとに好奇心を抱き続けることが大切なのですね。お話しいただき、ありがとうございました!
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