TAKURAMI LAB.のご紹介

マスメディアンが運営する就活応援サービス「massnavi(マスナビ)」は、9月1日、「TAKURAMI LAB.」を立ち上げました。

TAKURAMI LAB.は、世の中の商品・映像・音楽が素敵な「企み」から生まれていると考え、紐解いていくコミュニティです。「企むことから未来がはじまる」をコンセプトに、学生の小さな企みの種を応援していきます。

TAKURAMI LAB.では、2つのコンテンツを軸にして企画の種を育てていきます。

■TAKURAMI STORY
1つ目は、多彩なTAKURAMI先生を追いかけてインタビューする「TAKURAMI STORY」。TAKURAMI先生に、企画の種が生まれた瞬間、種が芽を出すための秘けつ、さらに大きくするためのマイルールを聞くコンテンツです。企画する上で大切にしているポイントを知ることで、読者の学生にとって企画を立てるヒントにしてもらいたいと考えています。

■TAKURAMI SCHOOL
2つ目は、小さな企みのアクションを起こせる場「TAKURAMI SCHOOL」。TAKURAMI先生をお迎えして、課題提出を行う参加型コンテンツです。先生に寸評をしてもらうことで、企画することの身近さと面白さを感じてもらえる機会を創出したいと考えています。

今回は、「TAKURAMI STORY」から記事を紹介いたします。

失敗や回り道を見せると、企画はおもしろくなる。
プロ無職・るってぃさん【アートのTAKURAMI】

「プロ無職」の肩書きで、SNSやブログを通じて新しいワークスタイルやライフスタイルの提案をしてきたるってぃさん。

これまで、やりたい仕事がなかったことから考えたプロ無職という生き方や、持ち物“スマホ1台”で世界を旅する「スマホ1台旅」などを企んできました。
るってぃさんは、現在はアーティストとして活動。自分ひとりだけの力で形にする芸術活動に物足りなさを感じたことをきっかけに、東京芸術大学院にも通いながら、アートと向き合っています。直近では、ドイツの芸術祭で「ホットサンド企画」や、日本からドイツへ行く過程で「ヒッチハイク企画」を企み、実行してきました。

数々のユニークな企画を生み出してきたるってぃさんが、企む上で大切にすることは?

プロ無職を始めた頃から一貫する姿勢、「省かず、隠さず、物語として過程を見せることの大切さ」について、アートを例に教えてもらいました。

プロ無職・るってぃさんにとって「アートはプロジェクト」

──アーティストって企画というよりも、アイデアが降ってきてそれを作品に落としているようなイメージがあるのですが、るってぃさんがアートに取り組む中で「企画」について考えることはありますか?
僕は日頃からめちゃくちゃ企画を意識していますね。自分の取り組みをあえてアートとは言わずに、プロジェクトと言うようにしているくらい。仮説を立て、それに対して何ができるのかを考え、実行する形にまで持っていくことがプロジェクトであり、企画だと思います。なので、何か作品をつくったりパフォーマンスをする前段階で、企画を練る時間はたくさんあります。

──これまでも、「将来、テクノロジーの力でスマホ1台の旅ができるのでは?」という仮説からスマホ1台だけで世界中を回るなどユニークな発想を形にしてきましたが、アーティストとしても企画する意識は変わらずあるのですね。
そうですね。スマホ1台旅もそうですし、そもそもプロ無職という肩書きで生きるようになったのも、やりたい仕事がない中でブログでの発信を通じて家をもらえたことから、お金を稼ぐのではなく生きられる状態をつくればいいんだと考えてのことでした。スポンサーもついていただき、お金も時間も自由な状態がつくれたのですけど。

──さまざまなプロジェクトの結果、プロ無職として理想の状態を手に入れたように思えますが、そこからさらにアートを始めた理由は?
プロ無職としての自分について考えるほどに、旅先でネタ探しばかりになったり、こうすればバズるみたいなマーケ思考に偏ったりして、不自由さを感じていたからです。そこでセラピー的なものとして、辿り着いたのがアート。ピカソや岡本太郎が目指したように、なにも考えずに体が動いている子どものような状態への憧れがあったのかな。

くだらないメモが平和へのアートに。「ホットサンド企画」

──アーティストとして活動される現在は、どんな企画をされていますか?
ドイツ・カッセルで5年に1度開催される国際美術展「ドクメンタ」に行き、現地でホットサンドをつくるプロジェクトを企画しています。ドクメンタに行こうと思ったのは、インドネシアの共同体が共有するお米の蔵を表した言葉「ルンブン」と「ノーアート、メイクフレンズ」というテーマに対し、そこでパフォーマンスをしたい気持ちになったから。
(取材から約2週間後、るってぃさんはドイツへ行き、ドクメンタでホットサンドのプロジェクトを実行)
──共有や共同体の意味を含んだ「ルンブン」と「ノーアート、メイクフレンズ」というテーマに対して、ホットサンドの企画というのはどういうことですか?
ホットサンドに着目したのは、コロナ禍のステイホーム期間中に自炊にハマって購入したことから。ホットサンドにしちゃえば、異国の食材同士を挟んでも、なんでも美味しくなることに気づいたんですよね。

さらに、友だちと「ホットサンドって武器みたいな形だし、集団でホットサンドメーカーを持ったら秘密組織みたいだよね」なんて話もしたりして。「挟んだら、美味い」「武器みたい」のようなくだらないことをメモしていたことが企画につながりました

──メモから企画につながったというのは?
そういうことを頭の片隅に置いていた数カ月後に、ロシアのウクライナ侵攻が始まったんです。僕はそこで「ホットサンドをつくる工程の“挟む”って、ハグっぽいな。ウクライナとロシアの郷土料理をホットサンドする映像を見せたり、彼らがそれを一緒に食べたらどんな展開になるだろう?」と考えて、企画へ落とし込んでいきました。何か大きい問題や課題に出くわしたときに、つながりそうなことを過去のネタ帳から引っ張ってきて、プロジェクトとして形にしていくんです。

ネガティブなことも、受け止め方次第で企画に

──るってぃさんのTwitterを拝見すると、そもそもドクメンタに行く直前に飛行機が欠航になってしまい、「ヒッチハイクでドイツまで行こうとした」経緯があります。そこにはどんな狙いがあったのですか?
日本からドイツまでヒッチハイクで行こうとしたのは、その不運なアクシデントすら、企画にしてしまおうと思ったんですよね。もともと旅が好きで、思い立ったその日に海外に行っちゃうくらい身軽に国境を越えていたけど、ちょっと待てよと。これは、コロナ禍で2年半ほど海外に行けていなかった自分に、そんな簡単にいけると思うな!という、「神からの啓示」だと受け止めました。

──神からの啓示、すごい受け止め方ですね。
プロ無職を始めたときから、ネガティブなことがあったときほど10年笑えるネタに変えようと考えてきたので。
──そうやって受け止めた結果、ヒッチハイクという選択を取ったのはどうしてですか?
1950年代から70年代までパリに、シチュアシオニストという集団がいたのですけど、僕はそこに影響を受けて大学院でも研究していて。たとえば、フランスの思想家であり映像作家のギー・ドゥボールはシチュアシオニストを組織し、彼はパリの壁に「NE TRAVAILLEZ JAMAIS(決して働くな)」という落書きを書きました。シチュアシオニストは、そういうふうに都市空間を遊び場に捉える活動をした集団です。

僕たちって、たとえば「そこに道があれば無意識にその道を歩いてしまう」、もっと言うと「選んでいるようで選ばされている」といったことがたくさんあるんですよね。

無意識のうちに常識となっている思考を、何か、外したくて。「周りが海に囲まれた日本からヒッチハイクでドイツに行けるわけない」という常識的な反応があるのはわかった上で、自分としてはもっとこう、路上で「ドイツ」と掲げたらそれを見る人の驚きや違和感とともに常識が外れるんじゃないかと実行しました。

オリジナリティーより、物語を終わらせない力を

──ホットサンド企画やヒッチハイク企画など、プロ無職7年目のるってぃさんらしい型破りな企画だなと感じました。
でも、結果的にそう見えるだけで、自分にオリジナリティーなんてないと思っています。何を考えているのかって説明するとしたら、ただ、物語を終わらせないようにしているだけです。

──物語を終わらせない、とは?
うまくいかないとき、ショックなことがあったときに、そこでやめちゃったりなかったことにしたりせずに、アクションし続けることですかね。
──たしかに、ホットサンド企画はヒッチハイクの過程があるからこそ、より厚みのある企画になっているなと感じました。
アートって、「できた段階で人がきて、見せて、はい終わり」になりがちなんですよね。でも僕はそこにちょっとした違和感があって、むしろつくられていく過程にこそ思想や考えが反映されていくものじゃないのかと。今回のドクメンタはそれを実現しているというのも、現地へ行きたいと思った理由でした。

最終的なアウトプットは「失敗や行き詰まったことを省いて見せたい」と考えられがちですけど、そこも取り込んで企画自体をひとつのストーリーにすることが、自分にとっても受け取る人にとってもおもしろがれるものになと思います。

■プロフィール
るってぃ(Rui Yamaguchi)
石川県金沢市生まれ。関西大学商学部卒。2016年から「プロ無職」を名乗り活動し、「スマホ1台旅(2017)」や「The100 Interviews(2018)」などのプロジェクトを立ち上げ、主催するオンラインサロンには250名が在籍するなど、ソーシャル時代を象徴する生き方のさきがけとなった。2019年より”Rui Yamaguchi“名義で現代美術の分野での作品制作を開始し、2022年より東京藝術大学大学院に在籍する。

取材・文:小山内彩希(くいしん株式会社)
編集:くいしん

TAKURAMI LAB. by massnavi

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