日本発のグローバルプロダクトを自らの手で スマートニュース クーポン事業企画マネージャ 町田雄哉さん
「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」ことをミッションに2012年に設立されたスマートニュース。同社が開発・提供するスマートフォン・タブレット向けニュースアプリ「Smart News」は、日米合わせて4000万ダウンロード(2019年2月時点)を達成しました。2018年3月時点では2500万ダウンロードだったため、わずか1年で1500万人も急増しています。この急成長の起爆剤となったのは、新サービス「クーポンチャンネル」。2018年3月にサービスが開始され、1カ月足らずで同サービスへのアクセスは1億PVを突破したとのこと。この「クーポンチャンネル」を、立ち上げから成功へと導いてきた事業責任者の町田雄哉さんに今回はお話を伺いました。彼が目指すのは、日本発のグローバルプロダクト。楽天、スマートニュースと渡り歩き、日本を代表するサービスを生み出すために邁進していました。
──町田さんのファーストキャリアは楽天のエンジニアとお聞きしました。今の職域とはだいぶかけ離れているようですが……。
大学では経営学の勉強をしていて、就活時に興味があったのは会社経営や新規事業開発でした。総合職採用だったため、決まった職種での入社ではありません。このため配属前の人事面談で「自分でサービスをつくって、損益計算書(PL)に責任を持ち、ビジネスを大きくしたい」という話をしました。それを実現するためにはまずはプロダクトやテクノロジーをしっかりと理解することが重要であり、最初のキャリアとしてはエンジニアが適切だろうということで、最初の1年間は開発部門に配属になりました。
──エンジニアとして、どのような業務に就いていたのですか?
楽天市場の出店店舗さまが商品を登録するときに使う店舗管理ツールを開発していました。当時はインターネットに不慣れな店舗さまも多く、楽天市場出店をきっかけに初めてインターネットに触れるといったケースもありました。そのため、そういった人たちでも使えるようなUI/UXを実現する店舗管理ツールを開発していました。
──ビジネスサイドではなく、エンジニアとして1年間過ごしてみて、どうでしたか?
後々振り返ってみると、新しいビジネスやプロダクトをつくるときに、エンジニアをやっていて良かったと感じることが多かったです。新規プロダクトをエンジニアと初期の段階から話し合ってつくっていけるので。あとは、エンジニアリングの力を目の当たりにしたというか、これまで実現できなかったものがエンジニアリングによって簡単に実現できるようになる様を実感できたことも自分の糧になっています。
楽天市場の出店店舗さまのサポートをする部門に異動になりました。楽天は出店店舗さまと一緒に成長してきた会社で、いわばビジネスの根幹です。2年ほど経験した後に、最終的には自分が一番やりたかった新規事業開発にチャレンジする機会を得ました。
──どのような事業だったのでしょうか?
最初はWeb検索の新規事業を立ち上げました。Web検索事業は非常に収益性の高い事業で、元々楽天も行っていたのですが、シェアを伸ばしきれていない状況でした。そこで、楽天の強みである会員基盤とポイントシステムを活用した新規サービスをリリースすることで、ユーザーシェアを拡大し、非常に収益性の高い事業をつくり上げることができました。日本で事業が軌道に乗った後、その事業を楽天が事業展開している他の国に展開することにチャレンジすることになりました。海外展開していく上で、英語が標準語で、グローバル人材が集まりやすいシンガポールに拠点を立ち上げました。また、シンガポールにおいては、Web検索事業だけでなく、2つほど新規事業を立ち上げました。
実はちょうどその頃、楽天のこれまで築き上げたアセットに頼らず、自分でゼロからビジネスを立ち上げてみたいという思いも持っていました。けれども、日本発のプロダクトで世界と戦う経験はなかなか得難いもので、今後の自分のキャリアに必ず活かされると思い、Rakuten Asia Pte. Ltd.の事業責任者として4年弱チャレンジをしました。 ──事業責任者として、どういったことをしていらっしゃったのでしょうか?
事業の立ち上げから、PLの管理、プロダクト改善、マーケティング、現地人材のリクルーティングまで幅広くしていました。事業の立ち上げにあたってのアイデアづくりに関しては、新しいアイデアを考えるというよりは、既存のアイデアと既存のアイデアの新しい組み合わせを考えるといったことのほうが多かったですね。
自分自身のパフォーマンスが会社の成長に、より直結する場所でチャレンジをしてみたいという思いが強まったからです。楽天からもチャレンジングなキャリアオファーをいただいていたので、楽天に残って新しい領域でチャレンジするという選択肢もありました。
ただ、経営により近い場所で、自分の力で会社を大きくしていきたいと感じ、社員数100人未満のスタートアップを中心に探して、スマートニュースに行き着きました。「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というミッションや、日本初のプロダクトとして本気で世界を目指していることに、強く共感するとともに、情報というものは世界中のほぼすべての人に必要なものなので、その可能性の大きさにも魅力を感じました。また、自分自身の事業マネジメント経験やグローバルでの事業経験を活かせる環境だと感じました。
──実際にそういった経験が評価されて、入社されたのでしょうか?
スマートニュースはそれまでエンジニアが中心になってプロダクトの力をベースに成長してきた会社でしたが、事業成長を加速させるためには、ビジネスサイドでのチャレンジも必要になってきたフェーズだったと思います。その中で、事業マネジメントを経験してきたことを活かし、スマートニュースの事業成長加速に貢献してほしいと期待されていたのではないでしょうか。
入社前からディスカッションを重ねていて、事業計画を練るなかで出てきたのが“クーポン”というアイデアでした。自分なりに“良質な情報”とはなにかを考えたときに、“ニュース”だけでなく“クーポン”も当てはまるのではないかと。なぜなら、クーポンはユーザーの生活に密接しており、生活していく上で重要な情報だからです。ユーザーによっては、“食べたいものが見つかる”や“お得になる”という情報は、報道ニュースよりも価値があることも多いと思います。
──確かにクーポンも重要な情報ですね。2019年3月にローンチされた新チャンネル「プレビューチャンネル」も同様の考えからということですね。
そうです。当社は、これまでにローンチしたチャンネルをしっかり発展させつつ、次の“良質な情報”がなにかを議論しているところです。一人ひとりのユーザーが本当に必要な情報に出会うことのできる世界を実現するために、良質な情報の幅を広げていくことには引き続きチャレンジしていきます。
楽天時代から変わらず、日本発のプロダクトでグローバルにチャレンジしていきたいのはもちろんですが、プロダクトの成長だけでなく、会社も成長させる経営ポジションを目指していきたいです。そのためには、目的と目標を見失わないようにすることは大切だと感じています。事業やプロダクトへコミットすればするほど、自分の担当している数字を伸ばすことだけに意識が向き、部分最適に陥りがちです。そうではなく、会社全体の事業成長を考え、全体最適していくことが、ミドルマネジメント層にも必要ではないかなと。経営ポジションの視点を意識しながら、自分のミッションにもコミットしていきたいですね。また、自分がこのような考え方に行き着いたのは、新規事業を立ち上げ、PLの責任を持った経験が大きく影響していると思います。20代の後輩たちには小さな事業でもよいので、早い段階でPL責任のある仕事にチャレンジしてみてほしいとも思っています。
──おっしゃる通り、CxOレベルにクラスアップするには、そういった俯瞰的な視座が必要ですね。お話ありがとうございました。
大学では経営学の勉強をしていて、就活時に興味があったのは会社経営や新規事業開発でした。総合職採用だったため、決まった職種での入社ではありません。このため配属前の人事面談で「自分でサービスをつくって、損益計算書(PL)に責任を持ち、ビジネスを大きくしたい」という話をしました。それを実現するためにはまずはプロダクトやテクノロジーをしっかりと理解することが重要であり、最初のキャリアとしてはエンジニアが適切だろうということで、最初の1年間は開発部門に配属になりました。
──エンジニアとして、どのような業務に就いていたのですか?
楽天市場の出店店舗さまが商品を登録するときに使う店舗管理ツールを開発していました。当時はインターネットに不慣れな店舗さまも多く、楽天市場出店をきっかけに初めてインターネットに触れるといったケースもありました。そのため、そういった人たちでも使えるようなUI/UXを実現する店舗管理ツールを開発していました。
──ビジネスサイドではなく、エンジニアとして1年間過ごしてみて、どうでしたか?
後々振り返ってみると、新しいビジネスやプロダクトをつくるときに、エンジニアをやっていて良かったと感じることが多かったです。新規プロダクトをエンジニアと初期の段階から話し合ってつくっていけるので。あとは、エンジニアリングの力を目の当たりにしたというか、これまで実現できなかったものがエンジニアリングによって簡単に実現できるようになる様を実感できたことも自分の糧になっています。
楽天のアセットを活かした新規事業の立ち上げ
──その後はどのようなキャリアを歩んだのでしょうか?楽天市場の出店店舗さまのサポートをする部門に異動になりました。楽天は出店店舗さまと一緒に成長してきた会社で、いわばビジネスの根幹です。2年ほど経験した後に、最終的には自分が一番やりたかった新規事業開発にチャレンジする機会を得ました。
──どのような事業だったのでしょうか?
最初はWeb検索の新規事業を立ち上げました。Web検索事業は非常に収益性の高い事業で、元々楽天も行っていたのですが、シェアを伸ばしきれていない状況でした。そこで、楽天の強みである会員基盤とポイントシステムを活用した新規サービスをリリースすることで、ユーザーシェアを拡大し、非常に収益性の高い事業をつくり上げることができました。日本で事業が軌道に乗った後、その事業を楽天が事業展開している他の国に展開することにチャレンジすることになりました。海外展開していく上で、英語が標準語で、グローバル人材が集まりやすいシンガポールに拠点を立ち上げました。また、シンガポールにおいては、Web検索事業だけでなく、2つほど新規事業を立ち上げました。
実はちょうどその頃、楽天のこれまで築き上げたアセットに頼らず、自分でゼロからビジネスを立ち上げてみたいという思いも持っていました。けれども、日本発のプロダクトで世界と戦う経験はなかなか得難いもので、今後の自分のキャリアに必ず活かされると思い、Rakuten Asia Pte. Ltd.の事業責任者として4年弱チャレンジをしました。 ──事業責任者として、どういったことをしていらっしゃったのでしょうか?
事業の立ち上げから、PLの管理、プロダクト改善、マーケティング、現地人材のリクルーティングまで幅広くしていました。事業の立ち上げにあたってのアイデアづくりに関しては、新しいアイデアを考えるというよりは、既存のアイデアと既存のアイデアの新しい組み合わせを考えるといったことのほうが多かったですね。
アセットのない状況に身をおいて
──その後、2017年にシンガポールから帰国し、スマートニュースへ転職していますが、どういった理由からでしょうか?自分自身のパフォーマンスが会社の成長に、より直結する場所でチャレンジをしてみたいという思いが強まったからです。楽天からもチャレンジングなキャリアオファーをいただいていたので、楽天に残って新しい領域でチャレンジするという選択肢もありました。
ただ、経営により近い場所で、自分の力で会社を大きくしていきたいと感じ、社員数100人未満のスタートアップを中心に探して、スマートニュースに行き着きました。「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というミッションや、日本初のプロダクトとして本気で世界を目指していることに、強く共感するとともに、情報というものは世界中のほぼすべての人に必要なものなので、その可能性の大きさにも魅力を感じました。また、自分自身の事業マネジメント経験やグローバルでの事業経験を活かせる環境だと感じました。
──実際にそういった経験が評価されて、入社されたのでしょうか?
スマートニュースはそれまでエンジニアが中心になってプロダクトの力をベースに成長してきた会社でしたが、事業成長を加速させるためには、ビジネスサイドでのチャレンジも必要になってきたフェーズだったと思います。その中で、事業マネジメントを経験してきたことを活かし、スマートニュースの事業成長加速に貢献してほしいと期待されていたのではないでしょうか。
良質な情報を次々に届けて、グローバルプロダクトに
──新サービス「クーポンチャンネル」はどういった経緯から生まれたのでしょうか?入社前からディスカッションを重ねていて、事業計画を練るなかで出てきたのが“クーポン”というアイデアでした。自分なりに“良質な情報”とはなにかを考えたときに、“ニュース”だけでなく“クーポン”も当てはまるのではないかと。なぜなら、クーポンはユーザーの生活に密接しており、生活していく上で重要な情報だからです。ユーザーによっては、“食べたいものが見つかる”や“お得になる”という情報は、報道ニュースよりも価値があることも多いと思います。
──確かにクーポンも重要な情報ですね。2019年3月にローンチされた新チャンネル「プレビューチャンネル」も同様の考えからということですね。
そうです。当社は、これまでにローンチしたチャンネルをしっかり発展させつつ、次の“良質な情報”がなにかを議論しているところです。一人ひとりのユーザーが本当に必要な情報に出会うことのできる世界を実現するために、良質な情報の幅を広げていくことには引き続きチャレンジしていきます。
──町田さん個人としては、今後やっていきたいことはありますか?
楽天時代から変わらず、日本発のプロダクトでグローバルにチャレンジしていきたいのはもちろんですが、プロダクトの成長だけでなく、会社も成長させる経営ポジションを目指していきたいです。そのためには、目的と目標を見失わないようにすることは大切だと感じています。事業やプロダクトへコミットすればするほど、自分の担当している数字を伸ばすことだけに意識が向き、部分最適に陥りがちです。そうではなく、会社全体の事業成長を考え、全体最適していくことが、ミドルマネジメント層にも必要ではないかなと。経営ポジションの視点を意識しながら、自分のミッションにもコミットしていきたいですね。また、自分がこのような考え方に行き着いたのは、新規事業を立ち上げ、PLの責任を持った経験が大きく影響していると思います。20代の後輩たちには小さな事業でもよいので、早い段階でPL責任のある仕事にチャレンジしてみてほしいとも思っています。
──おっしゃる通り、CxOレベルにクラスアップするには、そういった俯瞰的な視座が必要ですね。お話ありがとうございました。