日本パブリックリレーションズ協会は、“ひとり広報”の業務や意識、課題等の現状を探るために、“自社の広報を一人で担っている人”(エージェンシー等を除く)を対象に「ひとり広報実態調査」を実施。その結果を公開した。

【調査サマリー】

  • マスメディア対応、自社メディアに加えて、今後は危機管理・トレーニングや動画制作を実施したい 
  • 経営トップが“広報活動を理解・支援してくれている”と思う人は、半数
  • 広報予算は「不十分」(56.3%)。アウトソーシングは「利用していない。予定もない」(50.8%)
  • 他部署との連携が「ある」(70.4%)。「うまくいっている」(85.3%)
  • ひとり広報の良さは“達成感”“自由な意思決定”“使命感・責任感”
  • ひとり広報の悩みは“成果の説明”“判断が不安”“担当範囲が広すぎる”
  • ひとり広報の経験は、今後“専門職として評価される”(36.1%)、“あまり関係ない”(27.3%)

【調査結果】

●マスメディア対応、自社メディアに加えて、今後は危機管理・トレーニングや動画制作を実施したい
現在実施している業務について質問したところ、創業「6年~20年目」のひとり広報は、スタートアップを含む「5年目以下」や役所・学校・団体等を多く含む「21年目以上」よりも、実施している業務の種類が多いことがわかった。

Q:現在の実施業務(複数回答)
マスメディアへの発信・対応 53.0%
会社案内・Webサイトの制作 43.2%
広報効果測定 42.6%
サイト・SNSの企画・運営 35.5%
トップ広報の実施 33.3%

また、今後実施したい業務を尋ねた結果、創業「6年~20年目」のひとり広報は、スタートアップを含む「5年目以下」や役所・学校・団体等を多く含む「21年目以上」よりも、新たな取り組みに対する意欲が高い傾向がみられた。

Q:今後実施したい業務(複数回答)
危機管理関連 18.6%
メディアトレーニング 15.8%
マーケティング調査 15.3%
動画制作 14.2%
行政等への働きかけ 12.6%

●経営トップが“広報活動を理解・支援してくれている”と思う人は、半数
経営トップの広報活動への理解・支援状況について質問したところ、創業「5年以内」のひとり広報の約7割が“理解・支援してくれている”と感じているのに対して、「21年目以上」では約4割にとどまり、意見が分かれる結果となった。トップの理解・支援の捉え方については、意見が分かれていることがうかがえる。

Q:経営トップは広報活動を理解し、支援していますか?
広報をよく理解しており、担当者を支援してくれている 49.2%
わからない 25.7%
広報に対する理解が不足しており、担当者に対する支援もない 25.1%

●広報予算は「不十分」(56.3%)。アウトソーシングは「利用していない。予定もない」(50.8%)
広報活動の予算について尋ねたところ、「不十分」(56.3%)が「十分」(43.7%)を上回った。トップの広報に対する理解が高いと思う人では約6割が「十分」と回答し、理解が不足していると思う人の約8割が「不十分」としており、予算の充足感とトップの理解の感じ方が相関していることがわかる。アウトソーシングについては、現在「利用している」が20.2%にとどまり、「利用していない、予定もない」が50.8%と過半数となっており、利用しない理由としては「予算がない」が64.6%で最多となった。

Q:広報予算は十分ですか?
不十分である 56.3%
十分である 43.7%

Q:アウトソーシングをしていますか?
利用していない、予定もない 50.8%
利用している 20.2%
以前は頼んでいたが、現在は頼んでいない 10.9%
利用していないが検討中、または今後利用してみたい 9.8%
知らない、わからない 8.2%

●他部署との連携が「ある」(70.4%)。「うまくいっている」((85.3%)
他部署・部門との連携や役割分担については、「よくある+たまにある」が70.4%、連携は「とてもうまくいっている+まあうまくいっている」が85.3%と、横の連携がスムーズに行われていることがうかがえる。トップの広報への理解が不足していると思う人ほど、他部署との連携が「うまくいっていない」と感じる傾向がみられる。具体的な連携業務は、「情報収集」(51.2%)、「イベント・制作業務」(50.4%)、「メディア対応業務」(31.8%)など。

Q:他部署との連携や役割分担はありますか?
よくある 46.4%
たまにある 24.0%
あまりない 13.7%
まったくない 15.8%

Q:どんな業務で連携していますか?(複数回答)
情報収集業務 51.2%
イベント・制作業務 50.4%
メディア対応業務 31.8%
デジタルコミュニケーション 23.3%

●ひとり広報の良さは“達成感”“自由な意思決定”“使命感・責任感”
ひとり広報の良さやメリットについて質問したところ、達成感や責任感など精神的な面での充実が上位になり、前向きな姿勢が示された。広報業務歴でみると、中堅層ほどひとり広報をポジティブに捉え、ベテラン層はさほどでもない様子がうかがえる。また、「トップの広報活動に対する理解・支援がある」と感じている人ほどメリットを指摘する率が高い傾向にある。一方で、「社内で高い評価を得られる」と思わない人のほうが、思う人よりも多い。

Q:ひとり広報の良さ、メリットは何ですか?(項目ごとに「そう思うか」を5段階評価)
良い結果が出たときに強い達成感がある 82.5%
自分で意思決定ができ、自由に動ける 80.3%
会社を背負う使命感、責任感を持てる 75.4%
結果を出せば社内からの信用・信頼が得られる 75.4%
経営全般に対する理解が深まり、今後の仕事に役立つ 73.2%
自分自身で仕事を開拓するワクワク感がある 71.6%

●ひとり広報の悩みは“成果の説明”“判断が不安”“担当範囲が広すぎる”
ひとり広報の悩みやデメリットを聞くと、「成果を数値化しにくい」「自分の判断が正しいかどうか不安」「担当範囲が広すぎる」が上位項目となった。広報業務歴でみると、中堅層ほど悩みやデメリットを感じている様子がうかがえる。また、「トップの広報活動に対する理解や支援が足りない」と感じている人ほど、悩みや不満を指摘する率が高い傾向がみられる。

Q:ひとり広報の悩み、デメリットは何ですか?(項目ごとに「そう思うか」を5段階評価)
成果を数値化しにくい 69.9%
自分の判断が正しいかどうか不安 63.3%
担当範囲が広すぎる 61.8%
担当業務に対して人手が足りない 60.7%
相談相手がいないため、判断に困る 60.1%

●ひとり広報の経験は、今後“専門職として評価される”(36.1%)、“あまり関係ない”(27.3%)
ひとり広報の経験は今後「社内の専門職として評価され、広報担当として継続して活躍できる」(36.1%)、「あまり関係ない」(27.3%)、「転職の際の武器になる」(19.7%)が上位3項目となった。トップの広報活動への理解があると思う人は「社内で評価される」と考え、トップの理解がないと思う人は「転職の武器」と考える傾向がみられる。トップの理解度がわからない人、広報歴の長いベテランほど「あまり関係ない」と答える率が高く、ひとり広報の経験の価値をどう捉えるかは、意見が分かれる結果となった。

Q:ひとり広報の経験は、今後の仕事にどうつながると思いますか?
社内の専門職として評価され、広報担当として継続して活躍できる 36.1%
あまり関係ない 27.3%
転職の際の武器になる 19.7%
コンサルティング業などセカンドキャリアに活かせる 8.7%
人事異動の中の貴重な経験のひとつとして社内で昇格・出世につながる 7.1%
その他 1.1%

【調査概要】

調査目的:“ひとり広報”の業務と意識、課題等の現状を明らかにすること
調査対象:日本パブリックリレーションズ協会の企業会員、非会員および楽天インサイト社調査パネル※自社の広報業務を一人で担っている人
調査方法:調査票による定量調査
有効回収数:138人
実施期間:2023年2月
実査機関:楽天インサイト株式会社

<回答者のプロフィール>
  • 職種は「会社員」(64.1%)、「会社経営・役員」(14.2%)、「公務員・教員・団体職員」(10.2%)、「自由業」(7.9%)
  • 会社(組織)は創業から「5年目以下」(11.9%)、「6~20年目」(39.9%)、「21年目以上」(44.8%)
  • 広報業務歴は「5年未満」(50.3%)、「5~10年未満」(20.8%)、「10~20年未満」(16.4%)、「20年以上」(12.6%)
  • 所属部署は「その他」(19.7%)、「マーケティング部」(14.8%)、「広報部」(12.0%)、「社長室等」(11.5%)、「営業部」(11.5%)
  • 指示系統は「トップ直轄」(55.7%)、「経営企画・総務担当役員」(17.0%)、「上長は特にいない」(12.0%)、「広報担当役員」(7.7%)