12月3日の「国際障がい者デー」に合わせて、多様性を持つ障がい者を企業やブランドの広告で表現する際のビジュアルコミュニケーションについて、iStockのビジュアル専門家が解説を発表した。障がいのある人が企業の広告ビジュアルなどに登場するのはわずかにとどまっている現状があるためだ。

「国際障がい者デー」は、1982年12月3日の国連総会において「障がい者に関する世界行動計画」が採択されたことを記念して制定された。世界人口の13億人が何らかの障がいを持ち、世界では現在、成人の4人に1人が障がいを持ちながら生活しているといわれ、障がい者のコミュニティは世界で最も大きなグループの1つである。
1291965663,Edwin Tan,iStock
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障がいを抱える人は身近な存在。さまざまな場面でアクセシビリティ配慮が求められる

障がい者人口は、世界全体では約13億人(世界人口の16%)、アジア太平洋地域では、約6億5000万人(約6人に1人)といわれている。日本においても、936万人で人口の約7.4%を占めている。このように、人口に占める割合が相当数いるにも関わらず、世界的に見ても、障がいのある人の雇用などの社会参画にはハードルがあるようだ。

一方でVisualGPSの消費者調査によると、日本とアジア太平洋地域では、80%以上の消費者が、「企業が社会貢献活動に積極的に関与するべきだ」と考えており、障がいのある人を含め、企業が雇用する人たちには多様性が求められていることがわかった。また企業が提供する製品やサービスに関しても、消費者の80%以上が、「アクセシビリティを考慮した製品やサービスを提供すべきだ」と考えており、企業は多様な消費者ニーズに応える必要性があることもわかった。
1407970398,Iya Forbes,GettyImages
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1170669425,LOUISE BEAUMONT,GettyImages
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広告などでのビジュアル描写は1パーセント未満

障がいのある人のグローバル・コミュニティは大きく、そのコミュニティ内でさまざまな多様性があるが、そのことを理解し、認知している人の割合は限られているといわれている。VisualGPSの調査によると、アジア圏においては、障がいのある人を取り上げている広告などのビジュアルは全体の1%未満に過ぎず、またその表現力の乏しさも浮き彫りになっている。多くの場合、「障がい」というレンズを通してのみ個人を描いており、実際のライフスタイルの豊かさが反映されていないようだ。ステレオタイプも根強く、例えば、「車椅子を使用している人」や「介護を受ける高齢者」のようなビジュアルにとどまっている。障がいのある人の雇用や社会参画へのハードルを下げるためにも、企業が発信するビジュアルコミュニケーションを工夫してみる必要があるのではないか、と提示している。
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1321091664,Edwin Tan,iStock
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障がいのある人の多様性をビジュアルで表現するには

iStockは、障がいのある人を広告ビジュアルなどで表現する場合、その障がいを「超える」表現が不可欠、としている。これはカメラアングルや、その人の多面的なアイデンティティを認識すること、ライフスタイルや人生における歩みを理解することが重要とされる。広告に登場する人とそれを見る人との間に対等性を持たせることも考慮していくことの1つと述べている。障がいや特定の身体的部位だけに焦点を当てることを避け、その人の能力や才能、社会に貢献する姿を描き、そのようなビジュアルにより、障がいのある人の自立やコミュニケーション、社会参画がさらに促進されるかもしれない、と解説する。

ライフスタイルという観点では、日本やアジア太平洋地域の「旅行」や「ビジネス」に関するコンテンツに障がいのある人が登場している割合はほぼ0%であることがわかっている。障がいのある人がほかの人と一緒に働いたり旅行したりすることを楽しむ様子を表現するのはどうかと提案している。宿泊施設やワークスペース、バリアフリーの交通機関、アクセシビリティに考慮した展示のある博物館やツアー、スポーツなど、インクルーシブな体験の様子などを強調させることを述べている。

ビジュアル表現における3つのポイントとしては、以下が挙げられる。
・障がいのある人の姿を肯定的に描写するカメラアングルを選択。
・障がいと人種やジェンダー、セクシュアリティを含むアイデンティティの多様性をクロスさせ、ステレオタイプに挑戦。
・仕事、遊び、社会的交流を含む、インクルーシブなライフスタイルを紹介。
1495606285,Koh Sze Kiat,iStock
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1433751436,Edwin Tan,iStock
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1457946534,Edwin Tan,iStock
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「Hiki」とゲッティイメージズがパートナーシップを締結

iStockを運営するゲッティイメージズは6月、自閉症コミュニティのための世界最大級のマッチングアプリ「Hiki」とのパートナーシップを締結し、「#AutisticOutLoud」と題したカスタムコンテンツを立ち上げた。これは、自閉症者の真のビジュアル表現を促進することを目的としている。この「#AutisticOutLoud」コレクションには、自閉症を自認するコンテンツクリエイターが積極的に参加している。このキャンペーンを通じて、自閉症コミュニティの多様性と力強さを紹介する写真と動画のキュレーションギャラリーが制作された。