デジタルインファクトとCARTA HOLDINGSは共同でリテールメディア広告市場(※1)に関する調査を実施した。リテールメディア広告市場は2023年に3625億円、2027年には約2.6倍の9332億円と予測した。
本調査では2022年9月に公表したリテールメディア広告市場調査における定義を変更の上、再推計を行った。変更箇所は以下の通り。

<変更前>
店舗を持つ小売企業に設置されたデジタルサイネージに配信される広告および小売企業が運営する、各種オンラインメディア広告(※2)の総称(上記グラフにおいて、緑色の箇所のみが該当)。

<変更後>
店舗を持つ小売企業(店舗事業者)ならびにEC専業の小売企業(EC事業者)が提供する、各種オンラインメディア広告の総称。店舗に設置しているデジタルサイネージ広告も含む(上記グラフにおいて、緑色と黄色の箇所の合計が該当)。

高まるデジタル広告商品へのニーズ

リテールメディア広告は、小売企業における新しい収益モデルとして注目を集めている。大手EC事業者における広告ビジネスは2010年代後半以降本格化し、近年その売上成長率は、デジタル広告市場全体の成長率を大きく上回る水準で推移している。

また、大手店舗事業者においては、小売事業のDX化を推進する組織整備、広告事業者との連携などにより、リテールメディアビジネス開発を進め、商流の拡大に向けた取り組みも始まっている。小売企業を通して商品を販売するメーカーを中心とする広告主企業(以降「メーカー企業」と呼ぶ)においては、自社がターゲットと想定する顧客層への確実なアプローチをすることが出来るデジタル広告商品に対するニーズはますます高まりつつある。

本調査では、広告主によるリテールメディア広告に対する広告支出の総額を、リテールメディア広告市場規模とし、2022年までの推計および2023年から2027年までの予測を行った。

リテールメディア広告が市場成長を著しく牽引

デジタル広告配信におけるクッキーレス化が進展するなか、大手EC事業者が提供するターゲティング精度の高いリテールメディア広告は、多くの広告主からのデジタル広告需要を取り込み、2023年はデジタル広告全体を大きく上回る水準で増加した。一部の大手店舗事業者による広告商品は、メーカー企業のマーケティング・販促需要を確実に取り込みながら、着実な市場の成長をけん引した。

これらを背景に、2023年のリテールメディア広告市場は3625億円、前年比122%となる見通しだ。またその内訳は、EC事業者が3405億円、店舗事業者が220億円と予測される。大手EC事業者が提供するリテールメディア広告への広告主からの高い水準の需要の継続と、店舗事業者が提供するリテールメディア広告への需要の急増を受け、市場は今後も高い水準で成長を持続し、2027年には2023年比約2.6倍の9332億円規模に拡大すると予測される。
※本カテゴリは、2022年9月27日公表の、リテールメディア広告市場規模と同定義の算出数値となる。
※本カテゴリは、2022年9月27日公表の、リテールメディア広告市場規模と同定義の算出数値となる。
店舗事業者のリテールメディア広告市場においては、大手GMS企業が小売事業のDX化の一環としてリテールメディア事業への注力を進めており、広告商品の拡販に向けた環境整備を進めている。大手コンビニエンスストアチェーン企業においても、リテールメディア事業部門の組織体制の整備、あるいはデジタルサイネージなどの設備投資が進み、今後の大きな事業成長に向けた準備が進められている。

これらを背景に、店舗事業者におけるリテールメディア広告市場は、2023年は220億円、前年比163%となる見通しだ。今後は、リテールメディア事業を支えるテクノロジーの進展が、多くの店舗事業者の参入支援を促し、広告主からの確実な需要の高まりのもと、2027年には2023年比約6.3倍の1390億円に達すると予測される。

調査概要
調査主体:CARTA HOLDINGS
調査時期:2023年9月~12月
調査方法:広告業界・小売業界関係者へのヒアリング、調査主体ならびに調査機関が保有するデータ、公開情報の収集
調査対象:リテールメディア広告市場
調査機関:デジタルインファクト

※1:広告主によるリテールメディア広告への年間支出総額を対象とする。
※2:アプリ、ECサイトなどのオウンドメディアにおける商品告知広告やクーポン、メールマガジンのほか、匿名化された小売企業の顧客データを活用したターゲティング配信が可能なオンライン広告など、広告商品の企画、運営に小売企業が関与する広告プロモーションを対象とする。