LIVE BOARDは、日本におけるOOH市場の活性化、および広告主や屋外・交通媒体社などに客観的で公正なメジャメント基準をつくることを目指し、グローバルOOH業界団体であるWorld OOH Organization(WOO)に参加し、国内でもデジタルサイネージコンソーシアム(DSC)のワーキングメンバーとしてメジャメントの標準化への取り組みを行っている。このような活動を背景として、海外、主にアメリカ・イギリス・オーストラリアなどの最新の動向や、国内の調査・報道資料をベースに、①データ②クリエイティブ③メディアの観点から「2024年OOH業界トレンド予測」を制作した。

国内外の潮流 
世界を見るとさまざまな分野で新型コロナウイルスの影響から回復、国際貿易やグローバルな経済活動が再び活発化してくる。2024年は夏にパリで開催される、世界的なスポーツイベントに加え、年末に実施される米国大統領選挙の動向(どのようなプロモーション活動が実施されるのか、誰が当選するのかなど)も注目が集まっている。

国内でも、コロナ禍からの完全回復に加え、継続する円安に伴う海外からの渡航者(インバウンド)も増加。各地の都心部や観光地がますます活性化してきている。また、人工知能、5G通信、クラウドサービスなどのさらなるイノベーションによる技術の発展が続き、企業や組織がデジタル化を進め、オンラインでのサービス提供やデジタルプラットフォームの活用が増加。リモートワークや柔軟な働き方が一般的になりつつあり、これにより地域の制約を超えた人材の有効活用が見込まれてきている。 

OOH業界の傾向
大型デジタルサイネージを活用したインパクトメディアが増加したことに加え、テクノロジーの進展により広告配信の柔軟性が向上。データ駆動型広告やプログラマティックOOHの導入で、リアルタイムなターゲティングと広告効果を最適化することが可能になってくる。加えて、広告クリエイティブの多様化やストーリーテリングの重視が進み、視覚的だけでなく、環境に応じたクリエイティブが際立つ広告も増加している。これらに伴い、メジャメントによる広告の効果測定(評価の可視化)が今後より重要視されることとなる。さらに海外のOOH先進国では環境に配慮した取り組みも進み、エネルギー効率の向上など持続可能な活動の重要性が強調されている。これらの変化により、OOH広告は効果的、かつ次世代を見据えた形態へと進化している。

2024年OOHトレンド予測

従来のOOHからDX化に伴いアップデートされ、テレビ、デジタル、そしてOOHのトリプルメディアを組み合わせることで、インパクトに加え、リーチもできるメディアへと進化し、広告効果を最大化する時代の幕開けを予感させる。これにより、異なるメディアの統合が広告戦略において新たな可能性を生み出し、視認(視聴)者に対してより効果的なメッセージを届けることが期待される。この進化の主な理由は、ターゲティングの精度向上により特定の層や地域層に向けた広告を配信でき、効果的なキャンペーンの最適化が可能となる。柔軟性と即時性の向上により、広告主はリアルタイムで市場の変化に対応し、コスト効率を向上させることができる。さらに、データ駆動型広告の増加により、多様なデジタル広告との連携が強化され、データを活用したより効果的なキャンペーンが展開されることが期待される。

①データ

オーディエンスメジャメントの統一にむけて
OOH業界標準としての視認率を加味したインプレッション(※)の提供に向けての議論がOOH業界、広告業界で活発化する1年になる。交通・屋外それぞれの業界団体において、共通のテーマでの取り組みが加速しており、OOHは広告主や広告会社にとってよりプランニングがしやすいメディアへと進化を続ける。

※同社はOOHグローバルメジャメントガイドラインにて推奨されている、視認調査に基づく視認率を加味したインプレッション(VAC=Visibility Adjusted Contact/のべ広告視認者数)を採用している。媒体の視認エリアの中にいる人数(OTS=Opportunity to See)のうち、OOH広告に接触する可能性のあるのべ人数(OTC=Opportunity to Contact/視認エリア内での移動方向や障害物の有無を考慮)を定義。この数に媒体に応じた視認率を加味することで、実際に広告を見るであろうのべ人数(VAC)を推計している。

OOH広告の価値の再評価
生活者とのコミュニケーション上のOOHの役割が新しい視点から再認識され始めている。認知、興味、検討、ファネルのそれぞれの段階でのテレビやデジタルにはないOOH独自の役割が改めて見直される1年となる。また、OOHの持つ、公共性や信頼性、そして1on1メディアでは起きにくい偶然の出会いの演出などの価値もデータによって可視化され、再評価される。

プログラマティックOOH化の加速
昨年発表されたMASTRUM(マストラム)、T-Trackに続き、OOH媒体社のプラットフォーム構想に関する取り組みが加速され始めてくる。一方で、広告主や広告会社は複雑化よりも統合を求め、支持される2~3の主要プラットフォームに収斂されていくる。また、プログラマティックOOHの中で、通常の買付のオートメーション(自動化)からデータを活用したリアル配信まで、サービスの差も明確になってくる。

②クリエイティブ

OOHのサイズを生かしたクリエイティブ
OOH広告の巨大なディスプレイや独自の形状を活かしたクリエイティブが増加することが予測される。これにより、視認(視聴)者に強烈な印象を与えつつ、独自の物語や視覚的な体験を提供する広告が増加していくる。結果、建築物や大型ディスプレイなど、OOH広告の特有のスケールや配置を生かしたアプローチが重要視されるようになる。
 
AIによるクリエイティブ生成  
人工知能(AI)技術の進展により、2024年では広告制作においてもよりAIが活用され、自動的かつ効果的なクリエイティブが生成されることが予測される。AIは大量のデータから傾向を学び、視認(視聴)者の反応やトレンドを分析し、それに基づいて最適な広告コンテンツを生み出すことが期待される。

データ活用・インタラクティブ(双方向性)手法クリエイティブの台頭
データ活用(1st Party dataや3rd Party dataなど)が一層重要視され、視認(視聴)者の行動データや環境データを元にしたパーソナライズされたクリエイティブが増加していくる。同時に、インタラクティブな要素が強調され、視認(視聴)者が広告に参加しやすい手法が導入されることが期待される。これにより、視認(視聴)者との双方向のコミュニケーションが促進され、広告の効果が向上していくる。

③メディア

大型サイネージの更なる普及
グローバル・トレンドを受け、2022年以降、屋外や駅の大型サイネージ、特に3D LEDサイネージが、東京を中心に普及し、2023年は大阪でも複数開発されている。2024年は東京、大阪のみならず、他の都心部にも広がっていき、それに伴い、屋外や駅のデジタルOOH市場はますます拡大を続ける。

リテールメディア
各流通による店舗サイネージの設置は昨年に続いて大きく広がる。ただし、日本市場は流通各社の数が非常に多いため、それらを束ねるプラットフォームが必要になっていくる。さらにその普及が進むと、販促費ではなく、広告費の取り込みが増えていくことが予測される。これに伴い、広告主は、広告が購買にどれだけ寄与したかに加え、家の中や外から店舗への誘因と店舗内の購買行動との関係性の可視化も同時に問われることが予測される。
 
環境に配慮(CO2削減)したデジタルOOHの拡大
再生可能エネルギーの導入や省エネ技術の進化により、デジタルサイネージのエネルギー効率が向上し、同時にリサイクル可能な素材の使用が増加する見込みだ。環境への負荷を最小限に抑えるため、デジタルOOHの位置選定やエネルギーの効率的な利用が重視され、これらの取り組みによってCO2削減が促進されることが予想される。