ビデオリサーチ、LIVE BOARD、NTTドコモ、電通、博報堂DYメディアパートナーズは、「テレビ×Web×デジタルOOH広告(Digital Out of Home、以下、DOOH)」のトリプルメディアでの広告効果を可視化する体制構築を目指し、実証実験に取り組んでいる。今回は2023年9月から2024年1月に実施した実証実験について、結果の概要を公開する。
「テレビ×Web×DOOH」広告効果「評価フレーム」構築に向けたロードマップ
「テレビ×Web×DOOH」広告効果「評価フレーム」構築に向けたロードマップ

今回の実証実験のポイント

【実証実験1:DOOH接触者の特徴可視化】
・位置情報へのプロフィール付与で多角的なDOOHターゲティングが可能
・DOOHはターゲティング精度を高めることであらゆるファネルへの高い効果が期待できる
【実証実験2:「テレビ×Web×DOOH」効果測定フレーム・DOOH効果の検証】
・ターゲティングされた「DOOH」は「認知」を補完するメディアとして明確な効果を確認
・メディアミックス効果では「DOOH含むトリプルメディア」のミドルファネル効果が顕著

実証実験1:DOOH接触者の特徴可視化

実証実験1では、LIVE BOARDが保有する位置情報(※1)とビデオリサーチの生活者大規模調査であるACR/ex(※2)調査のプロフィールを付与したテレビ接触ログの連携(※3)を行い、LIVE BOARDの媒体20面付近を移動していた「人」を「DOOH接触者」と定義し、特徴を検証した。

「DOOH接触量が多い人(6月に複数面のDOOH広告および、2キャンペーン以上に接触している人)」における、「テレビ」と「Web」の接触状況を見た場合、最も多かったのは「テレビ接触(Middle)」と「Web接触(Middle)」といった、Middle(ミドル)レベルの組み合わせとなっている。

また、2番目、3番目に多かった接触状況についても接触時間量が多い(High)は含まれておらず、DOOHがテレビやWebで比較的到達が難しい生活者へのリーチ手段として効果的である可能性がうかがえる。
図表1:DOOH接触量が多い人におけるテレビとWebの接触時間状況
図表1:DOOH接触量が多い人におけるテレビとWebの接触時間状況
さらに、「DOOH接触量が多い人」はどのような特徴があるのかについて検証を行った。その結果、性年齢別では「女性20-34才」、職業別では「給料事務・研究職」がそれぞれ最も多く、「趣味」で見た場合は、「SNSの利用」「買い物」「モバイルゲーム」が上位に来ていた。

このように、位置情報にプロフィール情報を連携することで、基本属性だけではなく、より多角的なターゲティングを可能にしている。
図表2:DOOH接触量が多い人の特徴
図表2:DOOH接触量が多い人の特徴
また、プロフィール情報についてもメディアや情報に対する意識など複数の要素を加味することで、より精度が高いターゲティングに役立つと考えられる。
図表3:DOOH接触量が多い職業(給料事務・研究職)のプロフィール例
図表3:DOOH接触量が多い職業(給料事務・研究職)のプロフィール例
さらに、「DOOH」に対する印象を聴取したアスキング調査結果では、外出が多く見込まれる「有職者」や「女性35-49才」などにおいて、ミドルファネル(※5)に対する効果も明らかになっている。
図表4:電車や駅、ビルの壁面や屋上にある「DOOH」に対する印象
図表4:電車や駅、ビルの壁面や屋上にある「DOOH」に対する印象

実証実験2:『テレビ×Web×DOOH』効果測定フレーム・DOOH効果の検証

実証実験2では、DOOHを含むトリプルメディア広告効果検証について、2つの広告キャンペーンの実例を用いて「キャンペーン期間中にDOOH出稿エリア付近に来街した人」を、スクリーニング調査で判定したアスキング調査とメディア接触ログ(※6)で判定したアスキング調査の2パターンで検証を行った。
図表5:実証実験2実施概要
図表5:実証実験2実施概要
まず、「食品・飲料」について広告認知をメディア別で確認した場合、今回のキャンペーン全体の認知は68%、DOOH認知者は全体で17%。約3%はDOOHのみで広告キャンペーンを認知しており、トップファネルを補完する効果が確認できている。
図表6:メディア別の広告認知状況
図表6:メディア別の広告認知状況
ミドルファネル効果について、「2メディア認知者(テレビCM・Web広告)」と「3メディア認知者(テレビCM・Web広告・DOOH)」で比較した場合、DOOHを含む「3メディア認知者」の方が突出して高くなっており、「DOOHを含むトリプルメディア」の効果が顕著である。
図表7:認知メディア別ミドルファネル効果
図表7:認知メディア別ミドルファネル効果
さらに、位置情報による接触者判定を行った「トイレタリー・ボディケア」のアスキング調査結果においても「DOOH接触者」を含んでいる方が「購入意向」が高くなっており、DOOHの効果を裏付ける結果が得られている。
図表8:位置情報判定によるDOOH接触者を含む購入意向効果
図表8:位置情報判定によるDOOH接触者を含む購入意向効果
今回の実証実験により、まずDOOHは生活者価値観・趣味嗜好などリッチなプロフィールを用いたターゲティングが可能であり、プランニング精度を高めるメディアであることが確認された。次にDOOHは、テレビ・Webのリーチを補完する「トップファネルへの効果」も有しつつ、テレビ・Webに加えてDOOHを活用することで商品・広告に対する興味関心や内容理解、購入/利用の促進という「ミドルファネルへの効果」も明確になった。

今後はドコモが保有する位置情報、アプリ利用ログ、ドコモ経済圏のデータとビデオリサーチが保有する生活者プロフィール情報などを活用した実証実験3を行うことで、持続性ある効果検証フレームおよびDOOHの価値を、納得感を持って示す体制構築を同社らは目指している。

調査概要
【実証実験1 アスキング調査概要】
調査手法:インターネット調査
調査期間:2023年11月21日~27日
調査エリア:東京都(23区)
対象者:男女15~64才(中学生除く)
サンプル数:ビルの壁面や屋上にあるDOOHについて、週2~3日以上の接触経験あり
対象者条件:400s

【実証実験2-1 アスキング調査概要】
調査手法:インターネット調査(キャンペーン期間における出稿エリア来街意識+態度変容)
対象素材:食品・飲料(調査およびリリース利用許諾取得済)
調査期間:1月11日~16日
調査エリア:1都3県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)
対象者:男女15~69才(中学生除く)
対象者条件:2023年12月22日~28日に当該広告の掲載エリアに来街経験あり
サンプル数:4000s(ウェイト集計後「n=6078s」)
集計:調査エリア人口及びDOOH出稿掲載エリア来街率を用いてウェイト値を作成

【実証実験2-2 接触ログ判定を基にしたアスキング調査】
調査手法:キャンペーン期間におけるメディア接触ログにて「接触者判定」を実施。「接触者」に対するインターネット調査(態度変容)
対象素材:「トイレタリー・ボディケア」※調査及びリリース利用許諾取得済
調査期間:2023年10月16日~19日
調査エリア:全国
対象者:女性30~59才
対象者条件:2023年9月27日~10月15日に当該広告の掲載エリアに来街経験あり
サンプル数:30000s(アスキング調査は上記サンプルのうち紐づいた「n=12050s」を対象)
集計:テレビCM・Web広告・DOOHの接触ログとアンケート結果をADIDで紐づけ(n=12050s)

※1:個人情報を含まないADIDと位置情報
※2:「ACR/ex」とは、生活者を「商品およびサービスの利用者・購入者」と「メディア接触者」の両側面で捉え、無作為抽出による統計学的な代表性を持っている、シングルソース・マーケティングデータ
※3:位置情報とテレビ接触ログが持つADIDをマッチングキーとして連携
※4:テレビ接触ログ(2023年6月)接触時間量合計を1日当たりの接触時間量に基づき定義。インターネット接触時間(2023年6月特定1週間日記式調査)週平均における1日当たりの接触時間量に基づき定義
※5:消費者の商品購買プロセスを図式化した「ファネル」における中間地点のことで、消費者の購買プロセスである「認知、興味、比較・検討、購入」の流れの中で、商品購入の見込み客となる割合
※6:メディア接触ログ(テレビ接触ログ、Web広告接触ログ、位置情報)