インクルーシブマーケティングラボは、4月19日~4月22日の4日間、全国の16歳以上の男女1000人を対象に「生活の中で不便を感じること」をテーマにインターネットリサーチを実施した。

ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が高まる中、マーケティングにおいてもこれらは欠かせない要素である。インクルーシブマーケティングでは、一般に少数とされる意見にも注意を払い、広範な共感を得るための課題を特定する。このアプローチは、年齢、障がい、ジェンダー、国籍、文化など、さまざまな背景を持つ人々の問題を通じて、多様なニーズを理解し、探求するものだ。多くの人々に共通する問題を見つけ出すことができれば、それが意味する市場の潜在性は大きくなると同社は考える。

本調査では、生活の中で特に不便に感じる点について質問し、具体的な問題点を明らかにした。調査結果のポイントは以下の通り。

40%以上の人々が生活で不便を感じる要因は、「視力・虫・匂い・食品・音・高所」

本調査では、生活上の不便を感じると考えられる20の項目について質問し、それが自身に当てはまるかどうかを尋ねた。その結果、以下の事象について40%以上の人々が「とてもあてはまる」「ややあてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した。

・視力が低い:64%
・虫に対する嫌悪感が強い:52%
・香り・匂いに敏感である:47%
・どうしても食べられないものがある:46%
・周囲の音に敏感である:43%
・高所恐怖症である:40%

Q.下記項目に関して、どの程度あてはまりますか。
「とてもあてはまる」「ややあてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した比率(n=1061)

不便を感じる要因には共通点、潔癖症で香りや匂いに過敏な人が70%

本調査結果から、不便を感じる要因にはいくつかの共通点が見られた。例えば、左利きの人はスマートフォンを左手で操作する割合が、左利きではない人に比べて31ポイント高いことが分かった。また、潔癖症であり、香りや匂いに過敏な人は70%に達している。さらに、周囲の音に過敏であり、同時に香りや匂いにも過敏な人は73%に上る。

これらのデータは、特定の特性や傾向を持つ人々が共通して感じる不便さを表している。インクルーシブマーケティングの視点から、このような共通点を理解することで、多様なニーズに対応した製品やサービスの開発に繋がる可能性がある。

少数派に見える多数の声を拾う

本調査では、生活上の不便について「とてもあてはまる」「ややあてはまる」と回答した人は、自分の問題を認識し、すでに何かしらの対策を講じている可能性がある。一方で、「とてもあてはまる」「ややあてはまる」と回答した人が少なくても、「どちらかといえばあてはまる」と回答した人が多い項目も存在する。

インクルーシブマーケティングの視点で見ると、これらの項目は一見少数派に見えるかもしれないが、実は多くの人が悩んでいる可能性がある。以下にその項目と回答率を示す。

①「とてもあてはまる」「ややあてはまる」回答率
②「とてもあてはまる」「ややあてはまる」「どちらかといえばあてはまる」回答率

高齢者の正確な市場理解のためには、多様な調査手法の導入が必要

認知症の発症者の多くが65歳以上であるため、69歳までを対象とした今回の調査では出現比率が低くなった。高齢者のデジタルリテラシーの低さやインターネット利用率の低さにより、インクルーシブマーケティングを実践する上で、正確な市場理解を妨げる可能性がある。これを克服するためには、調査対象の年齢層を拡大し、電話や郵送などのオフライン調査手法を併用することが重要である。多様な調査手法を取り入れることで、高齢者の多様なニーズを正確に把握し、マーケティング戦略を精緻化することが求められる。

不便を感じる時のエピソード(回答からの抜粋)

■視力が低い(64%)
視力低下が日常生活に与える影響は深刻で、多くの回答者が、老眼や視力低下により日常の動作が困難になっており、メガネやコンタクトレンズが必須であると感じている。視力の低下は、ピント合わせの困難、運転時の安全性の問題、さらには経済的な負担をもたらしている。特に、メガネやコンタクトの維持費用が高いという点や、視力に依存する活動が制限されることが不便とされている。

・老眼が進行し、細かい文字が読めない。
・メガネやコンタクトなしでは運転や仕事ができない。
・メガネとコンタクトの維持費が高く、負担が大きい。
・パソコン使用により視力が落ち、夜間の視界もぼやける。

■虫に対する嫌悪感が強い(52%)
虫に対する嫌悪感が強い人々は、日常生活やレジャー活動に多大な影響を受けている。フリーアンサーからは、草むらや自然豊かな場所への訪問を避け、キャンプやアウトドアに参加することが困難であるとの声が多く聞かれた。また、家の中で虫を見つけた際のストレスは非常に高く、虫退治に追われることで他の活動に集中できなくなるという問題も指摘されている。夏場の虫の多さから、窓を開けるのが嫌だったり、夜間に虫の音で眠れなかったりするなど、日常生活の快適さが著しく損なわれている様子が窺える。これらの嫌悪感は、幼少期の悪い経験に起因することもあり、一部の人々にとっては深刻な不便となっている。

・家に出た虫を始末できない。
・ゴキブリ退治が大変だ。
・虫が多い自然豊かな場所には行きにくい。
・夏場は虫が怖くてリラックスできない。
・幼少期の悪い経験から、ほとんどの虫に嫌悪感を持っている。
・虫退治が最優先になり、他のことに集中できなくなる。

■香り・匂いに敏感である(47%)
香りや匂いに過敏な人々は、日常生活の多くの場面で困難を経験している。このような状態は、食事時にラップの匂いが気になるなど、特定の物質に対する反応が顕著である。また、公共の場での他人の体臭や柔軟剤の匂い、デパートの化粧品売場の強い香りなどが不快感を引き起こし、時には吐き気や頭痛を誘発することもある。生活環境の中でも、家族には気づかれないような微弱な臭いが強く感じられ、日々のストレスの原因となっているようだ。これらの感受性は、普段の生活や社会生活において深刻な不便をもたらしている。

・おにぎりを包むラップの匂いが気になって食べられない。
・柔軟剤の匂いが嫌いで、それが付いた服を着ることができない。
・他人の体臭や香水の匂いで吐き気がする。
・デパートの化粧品売場を通る時、息を止めないと気持ち悪くなる。
・カビや生乾きの匂いに敏感で、それが原因で頭痛が起こる。
・梅雨時の洗濯物の生乾きの匂いが苦手で、周りが気になる。

■どうしても食べられないものがある(46%)
食べられないものに関して、さまざまな感覚的要因や個人の生活哲学に根ざしていることが考えられる。匂いや食感に敏感な人々は、特定の食材を避けがちで、これが日常生活に不便をもたらすこともある。また、アレルギーを持つ人は好きな食べ物でも体調を害するリスクがあるため制限が必要である。菜食主義者のように倫理的な理由で特定の食品を避ける人もおり、これらの食の制限は個人の選択や健康、社会的な状況に大きく影響されることが想定される。

・匂いが気になるものは食べられない。
・友達の家で嫌いな料理が出ると困る。
・アレルギーがあるので好きな食べ物も食べられない。
・肉類と魚類は食べない菜食主義者だ。

■周囲の音に敏感である(43%)
調査からは、「周囲の音に過敏」と感じる人々が日常生活で相当なストレスを感じていることが明らかになる。電車内の会話、家の外の雑音、さらには職場でのキーボードの打ち音など、普段は気にならないような音が、これらの人々にとっては大きな不快感を引き起こす。また、細かな音に対する過敏性は、睡眠障害や日中の集中力の低下につながり、自己の生活の質を低下させる原因となっている。これにより、公共の場や職場での対人関係にも影響が出ることがあり、日常生活において多大な不便を感じている。

・電車の中で人の会話がうるさく感じる。
・周囲の音を全て聞き取ってしまうので、疲れて気分が悪くなる。
・家の外の音が聞こえ、小さな音でも気になってしまう。
・会社でキーボードの音などが非常に気になる。

■高所恐怖症である(40%)
高所恐怖症を抱える人々は日常生活やレジャー活動において大きな制約を感じている。ハシゴの使用、観覧車への乗車や飛行機の搭乗、高層ビルの窓際での作業など、高い場所に関連するさまざまな状況で不安や恐怖を感じることが多い。これにより、遊園地やテーマパークなどの楽しい場所での活動も楽しめないことがあり、観光地での絶景スポットへの訪問が困難になることもある。さらに、高い位置での作業が必要な職場では、仕事に支障をきたすこともあり、社会生活においても不便を感じている人が多いことが明らかだ。これらの体験は、高所恐怖症の人々が孤独や悲しみを感じる原因となり、日常生活の質を低下させている。

・ハシゴに登れないし、高い橋を渡る時に下を見ると怖い。
・観覧車に乗れず、テーマパークも楽しめない。
・飛行機に乗れないし、高所の名所に行くと足がすくむ。
・高層ビルの窓際や外が見えるエレベーターが苦手だ。
・透明のエレベーターが設置されている会社の内定を辞退した。

調査結果のまとめ

本調査結果から、視力の低下、虫への恐怖、香りや匂いへの過敏性、特定の食品への嫌悪、周囲の音への過敏性、高所恐怖症など、共通の問題点が多くの人々に影響を及ぼしていることが明らかになった。これらの問題は、個人の日常生活に不便をもたらし、社会生活やレジャー活動にも制約を加えている。

このような調査は、インクルーシブマーケティングの実践に向けて、市場理解を深め、新たな機会を発見し、多様な生活者ニーズに応えるための洞察となることが期待される。これにより、より包括的でアクセスしやすい製品やサービスの開発が可能になり、生活者の暮らしの質を向上させることが実現すると同社は考える。

調査概要
「生活の中で不便を感じることに関する調査意識調査」
調査方法:ネオマーケティングが運営するアンケートサイト「アイリサーチ」のシステムを利用したWebアンケート方式で実施
調査の対象:アイリサーチ登録モニターのうち、全国の16歳以上の男女
有効回答数:1061名
調査実施日:2024年4月19日~22日