REVISIOは、 2023年度に放送されたテレビCMを同社の視聴質データで分析し、視聴者の視線をくぎづけにしたテレビCMのランキングを業界別に公開した。
本分析では、テレビCMのクリエイティブを評価するためのREVISIO独自指標「クリエイティブスコア[※1](以下Cスコア)」を用いて、下記条件にあてはまるテレビCMを業界別にランキング化した。Cスコアが高いCMほど、注視を獲得していた、つまり視聴者の目線を画面にくぎづけにしていたCMであることがわかる。

CMらしくないクリエイティブ、複数キャストのCMが上位にランクイン

全31業界の1位獲得CMを見ると、中でも特に高いCスコアを獲得したものは下記3つだった。

・金融:アイフル【「ミニパト女将」篇 30秒】(Cスコア=127)
・娯楽:任天堂【帰ってきた 名探偵ピカチュウ「変装は探偵の基本だからな」篇30秒】(Cスコア=120)
・保存食品:日清食品【完全メシ「完全なるバランス」篇30秒】(Cスコア=123)

アイフルに限らず、消費者金融系のCMにはサービス内容の訴求に制限があるため、商品の説明シーンは極力省かれている。人気タレントや芸人を起用したコミカルで派手な内容のクリエイティブが多く、結果的に注視が高くなる傾向があるようだ。

任天堂・日清食品は、1位獲得CM以外も高いCスコアを獲得しているクリエイティブが多く、いずれも共通するのは商品の説明カットが少ない、すなわち、CMらしくないクリエイティブであることといえそうである。

任天堂で上位にランクインしたCMは、ゲームをプレイしている人たちが登場したり、プレイ画面の繋ぎ合わせであったりするため、まるでその場で自分がゲームを操作しているような感覚になり思わず画面を見入ってしまう。ナレーションや説明のためのカットはほとんどない。

日清食品も、面白さやインパクトを重視したテレビCMを展開しており、アニメーション・芸人のギャグ・歌などで構成されるクリエイティブがほとんどだ。やはりそこに商品の説明らしいシーンは存在しないが、もちろん商品の訴求をしないということではない。1位を獲得した『完全メシ「完全なるバランス」篇』では、大山のぶ代さん時代のドラえもん風の「声」と、通販番組風の「演出」を工夫することで、商品を並べる動作のみでも、しっかり注視を獲得できている。

また、業界ランキング全体を見ると、タレントの起用有無に関わらず、キャストが複数人であるCMが上位にランクインしていることも特徴である。複数人が出演することで、「会話形式にできる」「具体的な生活描写がしやすい」「現実に近い空間を使ったシーンがつくれる」ことなどが、視聴者目線で自分ごと化につながり、注視されやすいCMとなるのかもしれない。

ランキング上位CMは効率よく認知を獲得できている

REVISIOの調査では注視を高めることで認知度の獲得に差が生じることがわかっている。

上記でピックアップしたCスコア120を超える3つのCMは、Cスコア100のCMと比較すると約20%も多く注視を得ることができたCMであり、その分効率よく認知を獲得できているといえる。

同じ出稿量でも、注視を高めることでより高い認知を獲得できれば、結果的にコストパフォーマンスが上がる。つまり、Cスコアの高いCMは、低いCMに比べて、CMの投下コストを削減することが可能だと考えられる。
注視と認知度の相関イメージ画像
注視と認知度の相関イメージ画像
分析概要
対象期間:2023年4月1日~2024年3月31日
分析方法:テレビCMのクリエイティブを評価するためのREVISIO独自指標「クリエイティブスコア」を用いて、下記条件に当てはまるテレビCMを業界別にランキング化。
・2023年4月1日~2024年3月31日に関東で初回放送があり、500GRP以上出稿された15秒/30秒CM
・年末年始やW杯開催時の通常と異なる見られ方をする期間に出稿開始したCMを除外したもの
集計対象業界一覧(全31業界):企業広告/自動車/住宅・建設/インフラ・エネルギー/通信/金融/保険/ウェブサービス/サービス/法人向けサービス/流通・小売り/旅行・レジャー/娯楽/映画/外食/酒類/飲料/保存食品/調理食品/菓子/生鮮食品・惣菜/健康食品・サプリメント/日用品/ボディケア用品/化粧品/医薬品/ファッション/家電/生活雑貨/通信販売直販/その他
各CMのカテゴリー分けは、REVISIOの定義によるものとする。

※1:CスコアはテレビCMのクリエイティブを評価する指標である。たとえば、Cスコア:150のクリエイティブAと、Cスコア:100のクリエイティブBがあったとき、放送局や時間帯の影響を極力排除すると、クリエイティブAはクリエイティブBの1.5倍注視されたと評価できる。