電通グループは、日本を含む世界の主要14市場における企業のCMO950名を対象に、グローバル規模の「CMO調査レポート」を発表した。今年で5回目となる本年次調査では、950名のCMO(n=970)の意識調査・分析を基に、同業他社とのベンチマークの設定や、クリエイティブ、エクスペリエンス、イノベーションのロードマップ策定に関するインサイトの共有を目的としている。本調査では、主要14市場における企業のCMOに計45の質問を行い、回答を分析し、変革の推進に関する提言も行っている。
本調査の公開にあたり、電通グループ グローバル・チーフ・クリエーティブ・オフィサー 佐々木康晴氏は、次のように述べた。「成長が難しい時代にあって、CMOの皆さまは、持続可能な成長の新たな源として、これまで以上にイノベーションに目を向けています。私たちも、10年以上にわたるDentsu Lab Tokyoの活動などを通じ、クリエイティビティが生み出すイノベーションはとても重要で価値のあるものだと捉えています。私たちは、クライアントの喫緊の課題解決をサポートするためにDentsu Labを世界中に拡大していこうとしているところであり、CMOの皆さまがイノベーションへの投資を重視していると知って、とてもワクワクしています。私たちは、クライアントの皆さまが『AIと人間性の共存』について考えはじめている様子にも触発されています。AIは飛躍的に進歩していますが、そのAI時代においても、音声や触覚などの人の『感覚』や、深い共感や驚きなどの『感情』を刺激して、テクノロジーと人間性を結びつけるブランド体験をつくり出すことに、とても大きな可能性があると考えています。」

また、本調査をリードした、Dentsu Creativeのグローバル・ブランド・プレジデント アビー・クラッセン氏は、次のように述べた。「クライアントにヒアリングをし、私たちの調査で確認できたことは、クライアントがこれまで以上にクリエイティビティに価値を見出し、必要としているということです。しかし、それは新しい種類のクリエイティビティです。ビジネス主導のクリエイティビティであり、コミュニケーションからコマース、サステナビリティに至るまで、組織のあらゆる局面に影響を与えるクリエイティビティです。それと同時に、AIに対するクライアントの向き合い方が変化していることもわかりました。AIは人間の創造性を脅かすものではなく、クリエイティビティに人知を超えた力 ― パーソナライゼーション、リアルタイムの対応力、そしてレレバンシー(関連性)の速度と可能性を指数関数的に高める力 ― を与える手段なのです。」

本調査が示すマーケターに求められる8つの重要課題は下記の通りである。

マーケターに求められる8つの重要課題

1.オムニチャネル・クリエイティビティからオムニプレゼント・クリエイティビティへ
変化の激しい世界では成長が難しく、CMOはコミュニケーションだけでなくビジネスのあらゆる面でクリエイティビティを必要としている。CMOの82%が、クリエイティビティがかつてないほど成長を引き出す可能性を秘めていると考えている。

2.シェア・オブ・ボイスからシェア・オブ・カルチャーへ
メディア消費行動が大きく変化した世界では、ブランドは(単なる広告だけでなく)カルチャー、コンテンツ、エンターテインメントを通じて、新しい方法でリーチを拡大していくことになると予測される。CMOの88%が、ブランドが生活者のカルチャーの一部になることがこれまで以上に重要だと考えている。

3.コントロールからコンダクト(指揮)へ
今日のブランドが、生活者のネットワーク、パートナー、クリエイターのエコシステムを通じて構築されていることをCMOは認識している。CMOの77%は、将来、マーケティングはブランド、クリエイター、プラットフォーム間のパートナーシップになるだろうと認めている。

4.シームレスな体験から唯一無二な体験へ
製品の優位性が瞬く間に模倣される中、ブランドはつながりのある特徴的なブランド体験を通じて差別化を図る。CMOの75%が、コミュニケーションからコマースまで、あらゆるコンタクトポイントがブランドストーリーを伝えることができ、また伝えなければならないと認識している。

5.知見から先見へ
CMOは、今の顧客の声だけでなく、未来のトレンドや消費者願望を予測し、行動するというプレッシャーと向き合っている。CMOの79%が、データや知見を駆使して未来の製品や提供価値を予測することが求められているとする。

6.競争相手としてのAIから共同作業者としてのAIへ
AIが成熟するにつれ、CMOは人間の創造性を脅かす存在としてではなく、協力者や共同クリエイターとしてのAIの可能性を再評価している。生成AIが私たちを感動させるコンテンツを作ることはないだろうとするCMOの割合は、前年比で18ポイント減少した。

7.先端のイノベーションからコアのイノベーションへ
変化のペースが加速するにつれ、顧客は予算のかなりの割合をイノベーションに投資している。それはもはやニッチというレベルでも、あったら良いというものでもない。CMOの79%は、予算の10%以上をイノベーションに投資する予定であり、うち56%は20%以上投資する予定という。

8.規定課題に対応するだけでなく、ビジネスを変革し、社会を変えるパートナーへ
先行きが不透明な中、成長の原動力としてのマーケティングの役割はますます重要になっている。CMOは代理店に、単に指示に応じるだけでなく、クリエイティビティの力で自分たちのビジネスを変革する手助けをしてくれることを望んでいる。そして CMOの70%が、エージェンシーには常に自分たちが望むものではなく、自分たちが必要としているものをもたらしてほしいと回答している。
グローバル・データポイント トップ10(日本・データポイント トップ10をそれぞれ抽出)
グローバル・データポイント トップ10(日本・データポイント トップ10をそれぞれ抽出)
調査概要
調査対象国:オーストラリア、ブラジル、中国、カナダ、ドイツ、イタリア、インド、日本、メキシコ、サウジアラビア、スペイン、アラブ首長国連邦、米国、英国

%は「そう思う」の合計。グローバルは日本を含む。