10月18日~27日の期間中、日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO」が開催される。
本イベントは、世界屈指のミックスカルチャー都市、東京を舞台に、デザイン、アート、インテリア、ファッションなどが多彩なプレゼンテーションを開催するデザイン&アートフェスティバルである。デザインとテクノロジーから生まれたアートのような家具、アップサイクルでありながら美しいデザインと機能性を持つプロダクトなど、近年増えているジャンルレスな作品が新たな視点で解釈された作品をはじめ、今年もさまざまなプレゼンテーションが展開される。その一部を紹介する。

注目のオフィシャルエキシビションは「Reframing」展

毎年、時代の先を行くテーマを設けるDESIGNART TOKYOのオフィシャルエキシビション。2024年度のメインテーマ「Reframing ~転換のはじまり~」の基、アート、デザイン、クラフト、テクノロジーのジャンルの異なるエキスパートがキュレーションした作品を展示する。日々多くの情報が行き交う中で、既存の概念や思考に縛られ、無意識に本質や解釈に制限をかけている世の中に問いかける内容となっている。会場は青山通りに面した全面ガラスのファサードを持つワールド北青山ビル1階であり、「HYBE Design Team」が空間デザインを手がける。来場者に新たな気づきをもたらし、視点の拡がりが生まれる鑑賞体験を提供する。

■ART:金澤韻氏(現代美術キュレーター/コダマシーン アーティスティック・ディレクター)
公立美術館での12年の勤務を経て、2013年に独立。これまで国内外で多数の展覧会を企画。日本の近現代における文化帝国主義やグローバリゼーションを扱い、時代・社会の変化とともに変容する認識や困難を捉える活動を行ってきた。増井辰一郎とのユニット・コダマシーンでは、商業案件を手掛け、アートや工芸と企業、自治体、人、展示場所を共鳴させるプロジェクトを展開している。

■DESIGN:川合将人氏(インテリアスタイリスト/スペースデザイナー BUNDLESTUDIO代表)
都内のインテリアショップ勤務を経て独立し、2000年からインテリアスタイリスト、スペースデザイナーとして活動開始。BRUTUSやCasa BRUTUS、ELLEDECOR、Penなどの雑誌でキャリアを積み、国内外のモデルルームやオフィス、店舗内装デザイン、コーディネートなどを手掛ける。2020年にBUNDLESTUDIOを設立し、千葉県野田市に「BUNDLE GALLERY」をオープン。デザインや芸術の分野を横断する独自のキュレーションによる展覧会を開催するなど、新たな文化発信の拠点として運営している。

■CRAFT:立川裕大氏(伝統技術ディレクター)
オーダーメイドの伝統工芸プロジェクト「ubushina」を立ち上げ、日本の伝統技術を先鋭的なインテリアに仕立てるスタイルを確立。家具、照明器具、アートオブジェなどを一点物として製作してきた。日本各地の職人と共にモノづくりの現場を長年にわたり歩み、2016年には三井ゴールデン匠賞を受賞。2023年にはオートクチュールからプレタポルテへ移行し、プロダクトブランド「AMUAMI」をリリース。日本の職人の技を世界に届けている。

■TECHNOLOGY:青木竜太氏(芸術監督/社会彫刻家)
芸術と科学技術の中間領域で、研究開発やアートプロジェクト、展覧会などの企画・設計・指揮をしながら作家活動を行う。TEDxKidsプログラムやArt Hack Dayを日本で初開催し、千葉市での芸術祭「生態系へのジャックイン」展でも芸術監督を務めた。第25回文化庁メディア芸術祭でアート部門ソーシャル・インパクト賞を受賞している。

デザインとアートを横断する注目展示

■130による革新的な立体構造技術による初の家具コレクション
3Dプリントを超えた、棒状の素材による革新的な立体造形技術をコアにしたブランド「130(ワンサーティ)」は、特有の格子状の構造を飾ることなく縦横のラインだけで構成し、まるで空中から抽出されたかのようなプリミティブな形態のテーブル、椅子、照明の展示を行う。自由なデザインに対応し軽量かつ堅牢なこの構造技術は、使用後に分解、再素材化も可能。また、再構築時に新たなデザインや機能を付加することでアップサイクルされ、持続可能な未来を実現する。会場はISSEY MIYAKE GINZA 、TIERS GALLERYを予定している。

■唯一無二の色味を表現するアート作品のような椅子
東京を拠点に活動するプロダクトデザイナー川本真也氏は、一般的に家具でよく使われる丸パイプの一部に「潰し」加工をし快適性を加えた椅子に、唯一無二の色味を表現することができる塩浴着色処理を用いて実験的な着色を行った、新作のオリジナルデザイン家具「PF Chair/PF Armchair」を発表。ステンレスの種類、板厚、冷却の速度により色柄の表情が異なり、アート作品のように美しいこの椅子は、梱包効率を考慮した分解・組立可能な構造も特徴である。

■LIONRUGS×KAORUKO、ジャポニズムとペルシャ絨毯との融合
ペルシャ絨毯を専門とするギャラリーショップ「LIONRUGS AOYAMA」では、ニューヨークを拠点に活動する現代アーティストKAORUKO氏の作品を展示する。今回のために制作した最新作やKAORUKO氏の作品から制作されたペルシャ絨毯を初公開。KAORUKO氏の持つフェミニンなジャポニズムの世界と、中東の国であるペルシャの伝統工芸品ペルシャ絨毯との融合を楽しめる展示となっている。

■Paola Lenti「Hana-arashi 花嵐」by nendo
Paola Lenti氏が2022年に発表した「Mottainai」プロジェクトの第2章として、自社開発「Maris」ファブリックを使った最新コレクション「花嵐 Hana-arashi」を展示する。このプロジェクトのため、国際的に有名なデザインスタジオであるnendoが招聘され、日本の「もったいない」という美徳ある生産哲学により、廃棄処分されるはずの生産残材に機能と美的価値を回復させ、新たな命を吹き込み「花嵐」シリーズのファニチャーが完成した。「花嵐」とは桜の花びらが風に舞う「第2の美」を意味し、軽やかさ、動き、色彩、そして驚きを生み出す自然の力を感じさせるものとなっている。新たな資源の消費を最小限に抑え、最大限に再利用するというPaola Lenti氏の哲学を反映したコレクションである。

■美術家の内藤礼による「生まれておいで 生きておいで」
9月7日~2025年1月13日の期間中、銀座メゾンエルメス フォーラムでは、美術家の内藤礼氏による「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」を開催する。「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」を一貫した問いとして作家活動を続けてきた内藤氏は、光や影、水や大気のうつろいがもたらす生と死のあわいに、日々見過ごしがちなささやかな事物や情景、知覚しがたい密やかな現象を「根源的な生の光景」として、鑑賞者の中に結び付けることで、深い体験をもたらす展示となっている。 

東京国立博物館と共同で企画された本展は、9月23日まで開催される同名の展覧会と一連の流れを持ち、会期を一部重ね合わせながら、東京国立博物館から銀座メゾンエルメス フォーラムへ、再び東京国立博物館へと戻るひとつの大きな円環を描く形で構想された。

■ソニークリエイティブセンターによる「CREATE MORE FUN」
「CREATE MORE FUN」は、CMF(Color/色, Material/素材, Finish/仕上げ)の可能性をフィジカルとデジタルの両面から探求する体験型展示である。会場は、青山にあるグローバルファニチャーブランド「ステラワークス」のショールーム。

ソニークリエイティブセンターでは製品のCMFを検討する際、独自の視点で将来のソニーの製品やサービスに取り入れるべき色や素材を提案する活動も行っている。これらのデザイン領域は、人々の心に深く響く製品やサービスを提供するために大切な要素のひとつである。社会背景などの変化によって、同じ素材でも異なる印象を与えるため、クリエイティブセンターでは国内外のデザイナーによるCMFを含むトレンド分析とフィールドリサーチを継続的に実施。それらのリサーチ結果から生活者およびデザイナーの動向を読み解き、将来のトレンドを予見するキーワード、ビジュアル、カラーパレット、サンプル素材をクラスターごとにまとめた「CMFフレームワーク」というツールを作成している。

リサーチ活動を通じてデザイナーが導き出した8つのCMFクラスターを、キュレーションした素材のコレクションと共に紹介する。さらに「CMFフレームワーク」をインタラクティブなデザインツールとして体験できるプロトタイプの展示では、新たに「ステラワークス」とのコラボレーションも行う。
CMFクラスター例(デジタルムードボード・素材サンプル)「Dreamscape」
CMFクラスター例(デジタルムードボード・素材サンプル)「Dreamscape」
開催概要
DESIGNART TOKYO 2024
テーマ:「Reframing ~転換のはじまり~」
会期:10月18日~27日の10日間
エリア:表参道・外苑前・原宿・渋谷・六本木・広尾・銀座・東京
主催:DESIGNART TOKYO 実行委員会
発起人:青木昭夫氏(MIRU DESIGN)/川上シュン氏(artless)/小池博史氏(NON-GRID)/永田宙郷氏(TIMELESS)/アストリッド・クライン氏(Klein Dytham architecture)/マーク・ダイサム氏(Klein Dytham architecture)