電通の消費者研究プロジェクトチーム「DENTSU DESIRE DESIGN(以下DDD)(※1)」は、2021年から実施している「心が動く消費調査(※2)」の最新結果を基に、消費と欲求の関係性を分析し、消費者と企業双方にとって望ましい「消費の好循環」メカニズムを可視化した。

昨今、消費者と企業は1回限りの関係性で終わるのではなく、いかに双方にとって好ましく持続的な関係性を構築し、ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を高めるかに軸足が移っていると考えられる。「消費の好循環」とは、そうした時代の要請を背景に、消費者と企業の持続可能な関係性構築のために、継続的にブランドロイヤリティを高めて新しい需要を喚起し、次の消費につながるメカニズムを表現した言葉となっている。

DDDは、電通マクロミルインサイトの「人と生活研究所」の協力の下、2024年5月に実施した「第8回 心が動く消費調査」の共分散構造分析(※3)によって、どのような欲求が「消費の好循環」につながるのか、という因果関係を可視化した。
消費の好循環を可視化した共分散構造分析結果の一部
消費の好循環を可視化した共分散構造分析結果の一部
分析の結果、人間が持つ11の根源的な欲求(※4)のうち、特に「誰かの役に立ちたい、世の中の大切なものを守りたい」と「好きなモノを集めたい、好きな事に没頭したい」という2つの欲求が、「新たにやりたいことや、新しいものへの意欲が湧いてきた」という消費者の意欲増進につながり、さらに「同じ商品・サービス、または同じブランドや企業の同じタイプの商品・サービスを購入した・購入したいと思った」という企業や、ブランドのロイヤリティを高める方向にも作用していることがわかった。

今後もDDDでは、「心が動く消費調査」を定期的に実施するとともに、欲求インサイトに関する知見、欲求視点の新商品開発ワークショップなどのソリューション提供を通じて、消費への意欲と期待感の醸成に貢献していくと発表している。

調査概要
第8回「心が動く消費調査」
対象エリア:日本全国
対象者条件:15~74歳男女
サンプル数:計3000サンプル(15~19歳、20~60代、70~74歳の7区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
調査手法:インターネット調査
調査時期:5月13日~22日
調査主体:電通、DENTSU DESIRE DESIGN
調査機関:電通マクロミルインサイト

※1:人間の消費行動に強く影響を及ぼすドライバーとなる感情を欲望と定義し、消費者が消費に至るまでの動機や行動を研究した結果得た知見を、パートナー企業にソリューションとして提供するプロジェクト。欲望は欲求と価値観との掛け合わせで生じると設定している
※2:お金を払って買ったものや体験で、心が満たされたり、テンションが上がったり、感動・刺激を受けたりなど、良い気分・気持ちが得られた消費を「心が動く消費」と定義している。その背景に人々がどのような欲望や欲求を持ち、それが人々の消費行動に影響を与え、次の消費にいかにつながっていくかを定期的に調査している
※3:観測変数間の共分散の構造を分析する手法。直接観測できない潜在変数を導入して、因果関係を分かりやすくモデル化する方法のこと
※4:DDDが43の根源的欲求に関する項目から、現代人の根源的欲求における共通する要素として11個を抽出