消費者の広告・表示相談を受け付け、審査・適正化に努める日本広告審査機構(JARO)は、2018年度(2018年 4月~2019年3月)に消費者から受け付けた苦情や問い合わせに基づく審査概況を発表した。2018年度の総受付件数は、初めて1万件を超えた2017年度をさらに上回り、前年度比107.3%の11,051 件であった。内訳は、苦情8,386件、照会1,669件、称賛36件、JARO関連83件、広告以外877件。

「デジタルコンテンツ等」への苦情は減少するも引き続き最多

苦情の8,386件を業種別に見ると、多かったのは「デジタルコンテンツ等」「健康食品」「携帯電話サービス」「通信販売業」「自動車」で、上位は前年度と同様の業種となった。「デジタルコンテンツ等」は前年比で減少となったものの、前年度に苦情が集中したスマートフォンアプリのテレビCMなどへの苦情が落ち着いたためであり、引き続きオンラインゲーム、電子コミックや映像の配信サービスなどに意見が寄せられ1位となった。

「健康食品」については、医薬品医療機器等法や景品表示法、特定商取引法などに照らして問題があると思われる広告への苦情が多い。販売形態は通信販売がほとんどであり、定期購入契約の事例も見られる。「通信販売業」は、主にインターネット(172件)とテレビ(147件)の2媒体であり、ともに大きく増加した(2017年度は65件、94件)。近年問題になっている定期購入契約については98件寄せられた。2017年度に特定商取引法施行規則が改正され、消費者トラブルの減少が期待されたが、JAROに寄せられた苦情では 2015年度15件、2016年度44件、2017年度95件、2018年度98件と推移しており、減少は見られなかった。

インターネット媒体の苦情は、2桁増が続く

苦情の媒体別では、テレビ、インターネット、ラジオが上位で、この順位は2013年から変わっていない。内訳を見ると、テレビは「携帯電話サービス」331件、「その他住居関連機器」275 件、「デジタルコンテンツ等」245件。インターネットでは「デジタルコンテンツ等」422件、「健康食品」288件、「通信販売業」172件。ラジオは「行政・団体」44件、「相談業務」40件、「買取・売買」39件などが上位となった。テレビについては、苦情が集中したテレビCMが複数あったため、前年度比113.1%と増加しているが、インターネット116.2%増とテレビの増加率を上回り、近年2桁増が続いている。

消費者からの苦情、多世代で増加

総受付件数11,051件のうち、消費者からのものは9,295件で全体の84.1%(前年度8,474件、82.3%)を占め、20代および年代不明を除いて増加した。年代・性別で20%以上増加したのは、「10代全体」142.1%、「10代男性」124.2%、「10代女性」164.4%、「40代女性」122.9%、「70代以上全体」127.8%、「70代以上男性」130.8%で、10代は前年度に続き増加した。

一方、減少したのは、「20代男性」66.9%と「20代全体」81.9%で、前年度に20代からゲームアプリなどの広告表現に苦情が急増したことから2018年度は減少に転じた。性別では、男性の割合が63.0%(前年度65.5%)、女性35.9%(前年度33.6%)で、近年、女性の割合は逓増している。

表示・表現だけでなく広告手法への苦情も

JAROに寄せられる苦情は、(1)広告・表示規制上の問題、(2)広告表現、(3)広告の手法―に大別できるが、近年、広告手法、特にインターネット上の迷惑な広告手法に関する苦情が寄せられている。

まず、(1)の「広告・表示規制上の問題」は、広告・表示が事実と異なる、誤認を招くといった広告規制上問題があると訴える苦情。前述の業種別件数を「広告・表示規制上の問題」だけで見ると、「健康食品」325件、「通信販売業」264件、「デジタルコンテンツ等」239件、「携帯電話サービス」172件、「外食」119件、「化粧品」118件、「専門店」112件、「人事募集」96件、「買取・売買」92件の順となり、媒体別では、「インターネット」2,042件、「テレビ」958件、「チラシ」177件、「折込」159件、「店頭」156件、「新聞」128件、「ラジオ」113件。広告規制に違反するおそれのあるものも含まれ、インターネット媒体が52.7%を占めている。

(2)の「広告表現」は、広告の描き方が「セクハラである」「暴力的である」「子どもに悪影響がある」などといった意見。業種は、「デジタルコンテンツ等」333 件、「その他住居関連機器」259 件、「携帯電話サービス」221 件、「健康食品」174 件、「医療機器類似品」168 件、「自動車」165 件の順となり、媒体は「テレビ」3,134 件、「インターネット」604 件、「ラジオ」158 件、「新聞」49 件、「交通」38 件となった。広告表現における苦情では「テレビ」が 79.4%を占める。

(3)の「広告の手法」は 、CMの音の大きさ、広告の頻度、ステマ、迷惑な広告掲載方法などである。苦情対象媒体は「テレビ」300件、「インターネット」201件、「ラジオ」35件、「屋外」13件などで、上位2媒体で9割を占める結果となった。「テレビ」については音量や頻度がほとんどで、「インターネット」については、迷惑な広告掲載方法が35件で、「画面いっぱいに広告が広がって記事が読めない」「広告が動き回るので誤タップする」「閉じるボタンを押すと販売サイトに飛ばされる」「突然動画広告が再生される」など、記事やコンテンツが見られないなど強い不快感を訴える苦情が目立った。そのほか、ターゲティング広告やリターゲティング広告に関するものが26件、オプトアウト・フィルタリングに関するもの19件などが寄せられた。

健康食品、化粧品などに「見解」26件を発信

業務委員会で審議し「見解」を発信したのは26件で、内訳は警告21件、要望3件、提言2件であった。見解対象となった業種は「健康食品」8件、「化粧品」6件、「通信販売業」4件、「医薬部外品」「雑貨」各2件、「衣料品」「インターネット回線取次サービス」「社会保険労務士事務所」「カー用品店」各1件。1位「健康食品」、2位「化粧品」の順は2013年度から変わらず、常に上位を占めている。対象媒体は「インターネット」14件、「テレビ」7件、「ラジオ」「店頭」各2件、「新聞」「チラシ」「折込」「フリーペーパー」各1件で、1位の「インターネット」は2011年度から続いている。