データサイエンティスト協会は、一般消費者1643名を対象に、「匿名加工情報利用」に関する意識調査を実施した。

2017年5月に施行された現在の個人情報保護法により、現在、法的には一定のルールの下であれば、企業は本人の同意を得ることなく匿名加工情報を活用することができる。しかし、2013年の交通系ICカードのデータ流通問題以降、企業側にリスクを回避する動きが強く、データの自由な流通・利活用がほとんど進んでいないという現状もある。そこで、改正から来年度で3年となり、見直しのタイミングを迎えたいま、調査を実施するに至った。

一般消費者における「匿名加工情報」の認知度は15.9%

匿名加工情報を知っているか質問したところ、「知っている」と答えた回答者は 15.9%。そのうち、匿名加工情報の内容まで知っていた回答者はわずか3.8%にとどまった。
図1:匿名加工情報の認知度(n=1643)
図1:匿名加工情報の認知度(n=1643)
匿名加工情報を利用することへの賛否について質問したところ、「どちらでもない・わからない」が過半数を占める結果となった。これは、匿名加工情報を知らない人が大半を占めるため、賛否を問われても判断できない状況にあると推察される。
図2:匿名加工情報利用の賛否(n=1643)
図2:匿名加工情報利用の賛否(n=1643)

利用目的別では、「自然災害に関する公的な研究」への許容度がもっとも高い

また、公共の研究を目的とした匿名加工情報利用の賛否について、賛成票がもっとも多かったのは「自然災害時の活用」で、「自分の情報が利用されることに賛成である」という回答が43.8%にのぼった。ただし、「一般論としては賛成だが、自分の情報の利用には反対である」という回答者も約3割程度を占めており、反対者に対する配慮も必要であると考えられる。
図3:公共の研究を目的とした匿名加工情報利用の賛否(n=1643)
図3:公共の研究を目的とした匿名加工情報利用の賛否(n=1643)
また、許容度の高かった自然災害時のデータ活用において、匿名加工情報はどこまでの範囲が許容されるのか、属性毎に回答してもらったところ、「性別」「年齢」「居住地(都道府県)」については約9割の回答者が利用されることを許容していることがわかった。
図4:自然災害時の活用における許容範囲(n=720)複数回答
図4:自然災害時の活用における許容範囲(n=720)複数回答
さらに、この「性別」「年齢」「居住地(都道府県)」において、それぞれ許容すると回答した人に対して属性別の許容度を質問し、データ種別毎に許容度に差があるかを確認した。金融機関や移動、購買データなどさまざまなデータに関して、いずれも75%以上が許容できると回答している。
図5:データ種別毎の許容度(性別・年齢・居住地[都道府県]) 複数回答<br />
(銀行の取引情報:n=164、保険の契約情報:n=158、交通機関での移動情報:n=345、消費サービス利用情報:n=305、通院や薬の処方情報:n=294、インターネット閲覧・検索情報:n=139)
図5:データ種別毎の許容度(性別・年齢・居住地[都道府県]) 複数回答
(銀行の取引情報:n=164、保険の契約情報:n=158、交通機関での移動情報:n=345、消費サービス利用情報:n=305、通院や薬の処方情報:n=294、インターネット閲覧・検索情報:n=139)
今回の調査結果を踏まえて、データサイエンティスト協会は、匿名情報加工における一般消費者の理解度の遅れを危惧しており、来年度の個人情報保護法改正に向けて、官民共同で認知度向上と理解の促進に取り組むべきだという考えを示している。また、現時点でも許容度の高い自然災害時の活用については、活用する場の提供や事例公開を行い企業からのデータ提供を後押ししていきたいとしている。