富山県に本社を置くインテックは、モノと情報を結びつける視覚障がい者向けスマートフォンアプリ「これなにメモ」を公開した。「これなにメモ」は、無償のiPhone用アプリで、視覚障がい者の身の回り品の管理をサポートする。視覚障がいのあるインテックの技術者が、自身の経験をもとに企画・開発を行った。

視覚障がい者は、形の似ているモノを手触りだけで区別することができない。「これなにメモ」は、「画像処理」と「音声読み上げインターフェース」によって、それがなにかを教えてくれる。例えば、財布の中の大量のカードについて、カードの写真と情報をあらかじめ登録しておけば、iPhoneのカメラでカードを写すだけで「〇〇カード」と読み上げてくれる。モノと情報を紐づけ、簡単にモノから情報を取得することが可能。
固有の物体認識技術では、物体にカメラを正確に向ける必要があり、ピンポイントでカメラを向けることができない視覚障がい者にはそれが難しいという課題があった。そこでインテックでは、物体の特徴的な部分が少しでもカメラに映っていれば認識できるように、数値データの一部を使って認識する手法を開発。加えて、高速な数値データ比較アルゴリズムを用いることで、リアルタイムな動画像処理も実現した。

また、視覚障がい者は音声を利用してスマートフォンの画面遷移を確認するが、表示されているコンテンツを一つひとつ読み上げて音声内容を聞く必要があり、画面全体を把握しにくいという課題がある。今回、iPhone画面を見ることができない視覚障がい者でも簡便にアプリを利用できるよう、指で触れた部分の文字列を音声で読み上げてくれるiOS標準機能「ボイスオーバー」にも対応。スマートフォンの画面遷移に合わせ、適切な内容を読み上げ、主要な機能を表示画面の下端に常に表示する。

ほかにも、インテック独自開発の効果音ガイドが、視覚障がい者の撮影を補助。モノが置いてある机などを映すと低いゆっくりとした効果音が流れ、カードやCDなどのモノが映ると高く速い効果音が出る。

インテックは、今回のアプリ公開を通して、実環境での課題やユーザー行動などを確認し、さらなる研究開発を継続する。また、公共、行政、視覚障がい支援機器メーカ等と協力してサービス化を行い、1人でも多くの視覚障がい者の生活がより豊かで独立したものとなることを目指す。

また、「画像処理」「音声読み上げインターフェース」は、視覚障がい者支援以外の分野にも応用が可能。今後は、外国人観光者向けの情報翻訳サービスや、レジレス決済、製造業における検品システム等への活用など、モノと情報をつなぐ技術を活用したサービス開発を推進していく考えだ。