電通グループの社内組織である電通総研と同志社大学のメディア・社会心理学研究分野の池田研究室は、2019年9月に実施された「世界価値観調査」の日本調査に参画し、人々の意識の変化について時系列比較などの分析を行った結果を発表した。

「世界価値観調査」は1981年に開始され、現在およそ100カ国・地域の研究機関が参加している国際的な調査。

今回の調査結果で、前回調査の2010年からの9年間で大きく変化したのが「仕事」や「働く」ことへの意識だ。2010年の前回調査と比較すると、生活における仕事の重要度が低下。それと同時に「働くことがあまり大切でなくなる」ことを「良いこと」「気にしない」とする答えが倍増した。それと連動するように「人生を自由に動かせる」と感じる人が増加。特に若年層ほど高い自由度を感じていることが判明。

また、ダイバーシティを尊重する意識にも顕著な変化が見られた。同性愛や、ジェンダー意識について理解を示す回答が増加。調査開始依頼、初めて半数を超える結果に。

なお、初回調査から高水準を維持する幸福度と生活満足度は、今回も同水準。前回調査から微増で維持されている。しかし、生活レベルの意識については「中」の比率は変わっていないものの、「上」と「下」の双方が少しずつ増加。徐々に進行する格差の広がりが懸念される。

21世紀の日本・日本人のあり方についての調査に目を向けると、「日本文化や伝統的価値観」への意識は引き続き高く、自国の価値観を大切にしながら世界との協調・歩み寄りを望む意識が高まりを見せている。

一方で、「政治への関心」の高まりは見られず、なかでも若年層ほど政治への意識は低い傾向だ。このように人々の意識は大きく変化しているにも関わらず、それが必ずしも社会変革や政治への関心に結びついていないことが浮き彫りとなった。