電通グループの連結子会社で海外事業を統括する電通イージス・ネットワークは、世界22カ国・地域の32,000人以上を対象に、コロナ禍におけるデジタル化進展とそれに対する意識調査を実施し、「デジタル社会指標 2020」として発表した。

この調査は、新型コロナウイルス感染症が拡大していた2020年3~4月にかけて実施。デジタルテクノロジーの活用実態や、その幸福度への波及効果、家族や友人とのつながりへの影響などについての質問を通して、テクノロジーと社会の関係を明らかにした。

社会とデジタルテクノロジーの関係性が発展、健康管理にも活用

調査の結果、パンデミック宣言下において、社会は「Techlove(テクラブ)」と呼ばれる「デジタルテクノロジーに好意的」なフェーズへと移行し、前向きにテクノロジーと相互作用していることがわかった。例えば、ロックダウン中におけるデジタルテクノロジーは、家族や友人、周囲の人々とのコミュニケーションを可能にし、さらに潜在的なストレスを軽減する役割を担っていたと、全体の約3割が回答している。
デジタルテクノロジーは、どのような点であなたの幸福感に影響を与えますか?
デジタルテクノロジーは、どのような点であなたの幸福感に影響を与えますか?
また、新興国ではデジタルソリューションやオンライン化の進展により、職業や教育面においてもデジタルテクノロジーの恩恵を受けていることがわかった。南アフリカ(46%)、メキシコ(44%)、ブラジル(43%)などでは、半数近くの人が自宅学習の増加、教育用アプリやオンライン授業により知識が向上したと回答している。一方、先進国における恩恵の度合いは新興国に比べて低い傾向にあり、米国(24%)、英国(18%)、日本(12%)となった。

南アフリカでは回答者の29%が精神的・身体的な健康管理のためにデジタルテクノロジーを活用していると答えており、その比率は他の国に比べ高くなっている。ポーランド、シンガポール、ブラジルがこれに続く約22%、米国は17%、日本は最も低く7%となった。

社会影響をもたらすテクノロジーを活用したサービスに期待

パンデミックの最中、多くの人々がデジタルテクノロジーとの関わりが社会的な課題の解決につながることを身をもって経験し、テクノロジーの役割をポジティブに捉えるようになった。
世界の喫緊の課題解決におけるデジタルテクノロジーの可能性をポジティブに捉える人の割合
世界の喫緊の課題解決におけるデジタルテクノロジーの可能性をポジティブに捉える人の割合
このポジティブな見方は、企業への期待としても顕著に表れている。調査結果を分析すると、精神や身体をサポートするような新サービスの提供については、単に「欲しい」ということだけでなく、「今後5~10年を見据え、より良い社会影響をもたらすテクノロジーを活用したサービスに期待する」と回答。この傾向は特に中国(84%)や南アフリカ(82%)で強く出ているが、米国(60%)や英国(59%)でも高い割合となっている。多くの人が、将来的にすべての企業が健康や幸福度に貢献するようなブランドになることを期待していることが読み取れる。

一方で、テクノロジーへの懐疑的な感情も

パンデミック時において、多くの人がテクノロジーによる恩恵を感じている一方、複数の国で「Techlash(テクラッシュ)」と呼ばれるテクノロジーに対する懐疑的な感情も一定程度存在することが明らかになった。世界22カ国の約57%の人々が「テクノロジーの変化が速すぎる」と感じている。

また、約半数がデジタルテクノロジーによって貧富の差が拡大していると感じており、南アフリカと中国ではともに61%が、またフランスでも57%という結果が出ている。「テクノロジーは健康と幸せに悪影響がある」と感じている割合も、中国で64%、シンガポール(47%)や香港(41%)でも高い割合となっている。一方、日本では否定的な見方は31%と相対的には低い割合となった。
テクノロジーの使用があなたの健康と幸福度に悪影響を及ぼすと思いますか?
テクノロジーの使用があなたの健康と幸福度に悪影響を及ぼすと思いますか?
調査を行った電通イージス・ネットワークは、企業にとっての今後の課題は、テクノロジーをいかに人間味のあるものへと進化させ、生活者ニーズに寄り添うことができるか、にあると考えている。今後はEコマースのように生活者を支援する機動力のある分野への投資が増え、そうした分野への投資が必要不可欠になることが予測される。