デジタルコンテンツ協会は、9月1日に『デジタルコンテンツ白書2020』を発売した。本書は、毎年実施している国内のコンテンツ産業における市場規模調査データをまとめたもの。マンガやアニメーション、映画、音楽、ゲームといったコンテンツの分野別動向や、ソーシャルメディア、放送、新聞、出版などのメディア別動向、海外の状況などを、国内外の専門家の執筆により明らかにしている。書籍の発売に合わせて、本書を一部抜粋した内容を発表した。

2019年のコンテンツ産業の市場規模

2019年のコンテンツ産業の市場規模は12兆8,476億円、前年比101.0%と8年続けて底堅く成長基調をたどり、リーマンショック直前の市場規模を回復。コンテンツ区分別にみると、規模が大きい順に動画が4兆3,955億円(前年比99.6%)、静止画・テキストが3兆2,314 億円(同98.2%)、ゲームが2兆1,572億円(同98.4%)、複合型が1兆6,630億円(同114.8%)、音楽・音声が1兆4,005億円(同101.8%)となった。
メディア別では、ネットワークが3兆9,291億円(同108.9%)、パッケージが3兆5,413億円(前年比 97.3%)、放送 が3兆5,413億円(同97.3%)、劇場・専用スペースが1兆8,156 億円(同104.5%)となった。コンテンツ市場の成長を牽引し存在感を高めてきたネットワークが、放送、パッケージを超え最大規模に。ネットワークが両者に3,500億円以上の差をつけて主役に躍り出たことで、新たな時代へ突入する節目の年となった。
メディア別の構成比率の過去10年間の動向を見ると、ネットワーク区分3兆9,291億円が、パッケージ区分3兆5,616億円、放送区分3兆5,413億円を超えてコンテンツ市場の最大規模へと躍り出し、時代の節目を迎える結果となった。2018年に放送区分を超えて三者の市場規模は横並びとなっていたが、ネットワーク区分が頭一つ抜け出した。

一方で、劇場・専用スペース区分が1兆8,156億円と規模は及ばないが、徐々にその構成比を伸ばしている。同区分を定義し調査を開始して以降、コンテンツ市場における構成比10%を下回ったことはなく、近年では成長軌道をたどっている。コンテンツ消費の中心がネットワークへとシフトしていくなかで、ネットワークでは得られないリアルな「体験」が重視される傾向が読み取れる。今後はネットワークがマスメディアにシフトしていくことで、既存メディアの役割やその価値が改めて捉えなおされることが、国内におけるコンテンツビジネスの変革に繋がっていくとも考えられる。

2019年のデジタルコンテンツ産業の市場規模

2019年のデジタルコンテンツの市場規模は、9兆2,320億円(前年比102.2%)と順調に拡大し、コンテンツ市場全体に占める割合は71.9%と7割を超えている。

また、コンテンツ市場における、PCやモバイル経由で流通するデジタルコンテンツの割合を示す指標としてネット化率がある。2019年は30.6%(3兆9,291億円)と前年より2.2ポイント増加し、順調に推移した。ネット化率はスマートフォンの普及とともに、主にインターネット広告とオンラインゲームがその割合を押し上げている。5Gの普及が進められるなか、世界的な個人情報に対する規制強化の流れは避けられない課題となっているが、ネットワークとリアルが融合する社会、‘Society5.0’を見据え、コンテンツ産業におけるネット化率は着実に伸長することが予想される。