博報堂の「博報堂SDGsプロジェクト」は、「生活者のサステナブル購買行動調査2021」を実施した。近年、国内でもSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた取り組みが活発になるなかで、2019年に実施した購買行動に関する項目に加え、生活者が普段の生活で社会・環境をどの程度意識し、どのような行動に取り組んでいるのかについて聴取している。

過半数が「名前を聞いたことがある」と回答、2年間で倍増

「SDGs(持続可能な開発目標)」について「内容を知っている」と回答した人は28.8%で、2年間で約20ポイント増加。「内容は知らないが名前を聞いたことがある」まで含めた知名率は2019年の26.8%から55.2%と倍増し、過半数を超えた。年代別でみると、10~20代で認知率・知名率ともに高い水準となり、学校教育などにより若い世代を中心にSDGsの認知・理解が進んでいることがわかる。


Q.「SDGs」について、あなたはどの程度ご存知ですか。(単一回答)

「新品を買わずに中古品を買う」「人にあげたり売ったりする」行動は若年層で高め

「ミニマル(最小限)」「ロングライフ(長期的)」「サーキュラー(循環)」というサステナブルな購買行動の傾向は、2019年から大きな変化が見られなかった。一方で、「物を買うときには必要最小限の量だけを買う」が4.3ポイント、「新品を買わずに借りたりシェアしたりする」が2.5ポイント上昇しており、コロナ禍で自宅で過ごす時間が増え、物を減らしたいと考える人が増加したことも影響していると考えられる。

性年代別で見ると、「不要になったがまだ使えるものは人にあげたり売ったりする」では女性10~30代で7割以上、「新品を買わずに中古品を買う」では男性10~20代で約5割、「新品を買わずに借りたりシェアしたりする」は男女10~20代で3~4割と、それぞれ全体の数値より10ポイント以上高くなっており、「サーキュラー」や「シェア」に関する行動の実施率は、若い世代ほど高めの傾向が見られた。


Q. 普段、あなたが買い物をする際、以下のようなことをどの程度意識して買い物をしていますか。(複数回答)

多くの人が社会・環境問題に対して、自らも取り組むべき課題であると認識

社会問題や環境問題に対する意識を尋ねたところ、「いますぐ取り組まなければ手遅れになると思う」と回答した人は65.9%でトップとなった。特に危機感を持っているのが女性50~60代で、7割以上が「そう思う」「ややそう思う」と答えている。続いて、「市民ひとりひとりが解決に取り組むべきだ」が64.4%と、「国や自治体が取り組むべき」、「企業が取り組むべき」を上回り、国や自治体、企業だけでなく、自らも取り組むべき課題であると捉えている人が多いことがわかる。一方で、52.8%が「社会問題や環境問題に対して自分は何をすればよいかが分からない」と回答。特に女性が高めの傾向が見られた。


Q. 社会全般に関する以下の項目について、あなたのお気持ちに最も近いものをお答えください。(単一回答)
 

若年層ほど社会活動への参加や情報発信に積極的

続いて、社会問題や環境問題に対する行動について尋ねると、8割以上の人が「スーパーやコンビニでの買い物にはエコバッグを持参する」、「ゴミの分別やリサイクルを行う」と回答。これらの項目は特に女性の実施率が高く、女性40~60代では約9割が「エコバッグ持参」「ゴミ分別・リサイクル」を実施していると答えた。

男性10~30代、女性10代などの若い層では、「社会問題に積極的に取り組む企業に就職・転職する(したい)」「社会活動に取り組むサークルやコミュニティなどに参加する」「社会活動に取り組むイベントに参加する」がほかの年代よりも高かった。SDGsの知名・認知率が高い若年層は、社会活動への参加意識も高いことがうかがえる。


Q. あなたは普段の生活の中で、以下のような行動をどの程度していますか。それぞれ、あなたの行動に最も近いものをお答えください。(単一回答)

同様に、社会問題について自ら情報発信したり、社会をより良くするための活動に参加する人も若年層で多く見られた。男性10~20代や女性10代では、「社会問題を取り上げた記事・投稿をSNS などで共有する」「社会問題について自分から情報発信する」といった自発的な情報発信行動や、「政府や自治体などへの働きかけを行う」「署名・デモなどに参加する」「クラウドファンディングで参加する」などで、全体よりも10ポイント以上高くなった。若年層は日常的にSNS などに親しんでいることに加え、各種メディアを通じてグローバルで社会・環境問題に関して声を上げる同世代の姿を目にしていることなどが、自発的な行動に影響しているのではないかと考えられる。


Q. あなたは普段の生活の中で、以下のような行動をどの程度していますか。それぞれ、あなたの行動に最も近いものをお答えください。(単一回答)

ファッションの購買においては、環境や社会、生産者に配慮した商品への潜在ニーズも

サステナビリティを意識したファッション・アパレル商品の購買意識について聞いたところ、購買実態、今後の購買意向ともに、「きちんとていねいにつくられたものを買う」がトップに。購買意向と購買実態の差を見ると「マイクロプラスチックが出ない素材」で39ポイントの差が出たほか、「生産者の生活や人権に配慮したもの」、「フェアトレードなどの認証を受けているもの」などでも、購買意向が購買実態より大幅に高く、ファッションにおいても環境や社会、生産者の人権に配慮した商品に対する潜在ニーズが見られる。

性年代別で見ると、男性10~20代、女性10代では、「生産・製造過程で環境に与える影響を考えて買う」「環境・社会問題に積極的に取り組むブランドを買う」など、環境や生産者に配慮した商品の購買実態がほかの年代よりも高くなり、ファッションの購買においてもサステナブル意識の高さが見られた。


Q. 普段、あなたが衣料品、ファッション、アパレル商品を購入する際、以下のようなことを意識して買物をしていますか。【実態】(単一回答)

Q. 今後、あなたが衣料品、ファッション、アパレル商品を購入する際、以下の行動をどの程度したいと思いますか。【意向】(単一回答)


<調査概要>
調査手法:インターネット調査
対象者:16~69歳の男女4125名、直近2~3カ月に食品・飲料・日用品・衣料品などを購入した人
対象地域:全国
調査時期:2021年1月4日~7日
調査機関:H.M.マーケティングリサーチ