博報堂DYメディアパートナーズと博報堂の共同研究プロジェクト「コンテンツビジネスラボ」は、毎年実施している全国調査「コンテンツファン消費行動調査」の2021年版を実施し、そのデータをもとに最新の全11カテゴリ・計1000以上のコンテンツに関する「リーチ力・支出喚起力ランキング」を算出し、結果を発表した。

■調査時期:2021年2月19日~24日
■調査対象:全国15~69歳の男女5,000人

コロナ禍で楽しみ方が広がり、コンテンツの平均支出金額が上昇

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、エンターテインメント・イベントの中止が相次ぎ、業界全体が大きな打撃を受けた1年だった。しかし、調査結果では、2020年1年間の生活者のコンテンツへの平均支出金額は67,201円と、前年比で2,629円上昇している結果となった。

要因として、コロナ禍によりコンテンツの楽しみ方が多用したことが考えられており、各市場の推計規模を見ると、コロナ禍で「リアルイベント市場」は低迷を余儀なくされた一方で、「パッケージ市場(CDや本、DVDなど)」や「関連グッズ市場」、「スマホ・タブレット市場」、「ゲームアプリ市場」などが伸長している。また「雑誌・書籍市場」も伸びており、コロナ禍における生活者のコンテンツの楽しみ方が多様化していることが見て取れる結果となった。加えて、オンラインライブやライブチャットでの投げ銭、ライブコマースなど、新たな支出先の出現も支出金額上昇の一端を担っていると考えられる。
各市場の推計規模(前年比較)
各市場の推計規模(前年比較)

「デジタル+フィジカル」の顧客接点を増やしたコンテンツが伸長

2021年調査における「リーチ力・支出喚起力ランキング」TOP20を見ると、新たにランクインしたコンテンツには、デジタルからアナログまでさまざまなプラットフォームに生活者との接点が用意されている共通点がある。この傾向は、昨年調査までは音楽コンテンツに強く表れていたが、2021年調査ではアニメコンテンツでも見られる結果に。
2021年調査 リーチ力・支出喚起力ランキングTOP20
2021年調査 リーチ力・支出喚起力ランキングTOP20
音楽コンテンツでは、昨年の傾向と同様でストリーミングサービスで火がついた「YOASOBI」が、新たにリーチ力でランクイン。小説を原作とした楽曲でデビューし、ストリーミングサービスでの再生が伸びた後に、人気YouTubeチャンネルやラジオ番組、TikTokでのライブなどへの出演を経てNHK紅白歌合戦に出場し、さまざまな嗜好を持つ生活者との接点を築いていった結果と推察されている。また、原作となった小説の単行本化、初のCD作品発売など、デジタルでの接点だけでなく、パッケージ市場、雑誌・書籍市場といったフィジカルの接点においても積極的に展開しており、結果にも影響が出ている。

昨年からの大ヒットで、リーチ力・支出喚起力ともに首位にランクインした漫画「鬼滅の刃」は、国内歴代興行収入1位などさまざまなニュースが話題となるタイミングに、動画サブスクリプションサービスで随時視聴できたことがリーチ力の拡大につながった。同様の動きは、「呪術廻戦」や「新世紀エヴァンゲリオンシリーズ」などほかのランクインコンテンツにも見られる傾向となっている。また、アニメ視聴、原作漫画に留まらず、公式ファンブックや公式画集といった書籍販売、各種コラボグッズの展開といったフィジカルの接点を充実させている点は「YOASOBI」とも共通している。

さらに、「ドラえもん」、「クレヨンしんちゃん」などの長寿コンテンツがリーチ力に新たにランクインしており、これも動画サブスクリプションサービスで視聴できる環境が存在したことが大きく影響した結果に。コロナ禍でコンテンツ利用の間口が広がったことで、リーチ力が押し上げられたものと考えられる。

このように、コンテンツの楽しみ方、支出先もコロナ禍を機に一気に広がりを見せており、デジタルプラットフォームを核にしたコンテンツは、ジャンルを問わずますます加速していくことが予想される。同時に、デジタルの接点だけでなく、パッケージ市場(CDや本、DVD等)や関連グッズ市場、雑誌・書籍市場といったフィジカルの接点も伸長しており、デジタルとフィジカルの両方の接点を織り交ぜたコンテンツが、今後さらに求められていくと推察される。