3月24日、サイバーエージェントは、テクノロジー・クリエイティブ分野のカンファレンス「CyberAgent Developer Conference 2022」を開催した。この分野でのカンファレンス実施は同社として初めて。「Build Up Always」をテーマとして掲げ、同社の競争力である「変化対応力」を生み出してきたこれまでの事業開発や研究の成果とこれからの挑戦について、全26セッションで発表。クリエイターやエンジニアを中心に6000人以上(当日参加者)が参加した。

AI×クリエイティブ分野の3セッションのレポート

「AI Labの進めるクリエイティブ自動生成の研究」

スピーカー:AI事業本部 リサーチマネージャー 山口光太氏
  • 課題:AIを用い、自動でリッチな広告クリエイティブをつくりたい
  • 研究成果:ベクター形式の画像を生成するモデルを開発
    • 既存の画像生成技術はラスター形式の生成がメイン。そのままでは広告クリエイティブに使用できないが、編集もしづらかった
    • ベクター形式での画像生成ができれば、AIがつくったデータを人間が編集しやすく、実制作に活かしやすい
    • また、既存のラスター画像をベクター画像に変換し、テキストを修正できるようにする手法も開発
  • 今後の展望:フォント推薦エンジンをつくるなど、タイポグラフィへの応用
    • 広告クリエイティブにおけるフォントの選定には、審美性・広告効果への期待などの要素が関わり、クリエイターでも答えを出すのは難しい。そのフェーズを技術的に支援していきたい
    • デザイナーの判断過程をそのままモデリングするのは難しいが、機械学習でこれまでの傾向に基づきレコメンドすることはできる

「自然言語処理を用いた効果的な広告テキストの自動生成」

スピーカー:AI事業本部 リサーチサイエンティスト 張培楠氏
  • 課題:AIを用い、高品質な広告を自動で制作し続けたい
  • 研究成果:リスティング広告の広告文などを生成するためのテキスト生成モデルを開発。強化学習を取り入れ、広告効果を報酬としてモデルに組み込んだ
    • 既存の研究では、広告文をつくる主なアプローチが、キーワードやLPのテキスト情報のみに基づくため、広告効果を考慮できていなかった
    • 広告効果を「予測される配信実績」「自然さ・流暢さ」「検索ワードとの関連性」として定義。より高い広告効果が見込まれるテキストが生成できるようなAIモデルを開発した
    • 開発には、実用化されたときのユーザーである広告制作者も関与している
      • モデル制作時、「良い広告文とはどういうものか」を定義するための根拠のひとつとして、コピーライターなど広告制作者にヒアリングを実施。また、生成された広告文についての所感をエンジニアにフィードバックし、それをモデルに反映して……というサイクルを回している

「AIでクリエイターを拡張させる、AIクリエイティブ最前線」

スピーカー:AI事業本部 AIクリエイティブDiv. 統括 毛利真崇氏
  • サイバーエージェントのAIクリエイティブは、「テクノロジーでクリエイターを拡張させる」ことを目指している
  • Photoshopが登場したとき、制作ツールが紙からPhotoshopに進化したことで、クリエイティブ制作の量と質がともに向上した
  • 同様に、AIなどのテクノロジーでクリエイターを支援することで、さらに良いクリエイティブ制作ができる環境をつくりたい
  • これまでに「極予測AI」などをリリース。過去のデータを用いた広告効果予測で制作支援をしてきた
  • これからは、クリエイターのアイデア実現に対するさまざまな阻害要因(納期、キャスティング、レギュレーション、制作費など)をテクノロジーで乗り越えていきたい

上記の3セッションでは、いずれも、サイバーエージェントにおけるAIクリエイティブ研究の目的を、クリエイティブ制作の完全自動化ではなくクリエイターの支援と位置づけている。その場合、Adobeのソフトを使いこなすにはまず操作を覚える必要があるのと同様に、クリエイターもAIを使うための知識を身に付けることが必要となることも指摘された。

参加者からは、下記のような感想が寄せられている。
「広告業界最前線での試行錯誤がわかり、今後の研究の参考にしたい」

「AI技術による人物作成やLEDを使った新技術の進化に、更なる可能性を感じで感動した。ワクワクが止まらなかった。」

同カンファレンスはYouTubeライブでのオンライン開催で、当日はチャット機能を用いてライブQ&Aも実施された。「CyberAgent Developer Conference2022」公式サイト(https://cadc.cyberagent.co.jp/2022/)にて、ほとんどのセッションのアーカイブを視聴できる。