ニールセンデジタルは、5月31日、動画コンテンツと動画広告の利用動向調査「ニールセン・ビデオコンテンツ アンド アド レポート 2022(Nielsen Video Contents & Ads Report 2022)」を発売、そのレポートをもとに若年層のリニアテレビとインターネット動画の視聴状況の分析結果を発表した。
調査背景
ここ数年消費者のエンターテイメントの選択肢が増えるのと同時に、インターネット上での動画視聴にも多くの注目が集まっている。さまざまなメディアやプラットフォームで費やされる視聴時間が分散化するにつれ、多くのマーケティング担当者は消費者にリーチするための最善な方法を模索しつづけている。特に若年層においては、デジタル上の動画利用が拡大するにつれ、リニアテレビ視聴の減少が懸念されてきた。インターネット動画の利用が拡大するなかで、マーケティング担当者はどのようにして若年層へのリーチを検討すべきなのか、あるいはクロスデバイスで消費者とコミュニケーションを図るうえでどのようなことを考慮すべきかに着目して調査が行われた。

インターネット動画とリニアテレビの役割
多くの消費者にとって、インターネット上の動画はリニアテレビの代わりではなく、追加のエンターテイメントオプションとして利用されている傾向がうかがえる。インターネット動画の利用が拡大しているなかでも、若年層を含む消費者の多くは、毎日リニアテレビを視聴していることがわかる。実際「ニールセン・ビデオコンテンツ アンド アド レポート 2022(Nielsen Video Contents & Ads Report 2022)」によると、35歳未満の約80%がリニアテレビを視聴し、半数以上は毎日視聴している(図表1)。また、これらの若い視聴者のもう一つ重要な特徴として、リニアテレビを視聴しているだけでなく、さまざまな形式のインターネット動画を利用する傾向もあることがわかった。リニアテレビを視聴している35歳未満の人の70%以上が、インターネット投稿動画や無料のインターネット動画も視聴している(図表2)。

計測指標の設計において留意すべきこと
リニアテレビでリーチできない消費者とコミュニケーションする場合や、リニアテレビでは接触回数が少ない消費者に対してデジタル上で接触回数を増やすために、テレビとデジタルを組み合わせて活用している企業も多いことが予測されている。場合によっては、テレビで放送している広告がYouTubeのようなプラットフォームで利用されることも少なくない傾向だ。ただし、特にリニアテレビを視聴する多くの若年層がインターネット上の動画サービスも利用していることを考えると、デジタル上で広告を配信することで必ずしもインクリメンタルリーチが改善され、目標どおりのリーチとフリークエンシーが獲得できるわけではないとされている。場合によっては同じ人に過度に広告があたってしまう可能性もあるため、ブランド毀損につながってしまう可能性も懸念されている。そのため、マーケティング担当者は、より効率的に広告キャンペーンを実現するためにも、意図した人にリーチできているか、リニアテレビとデジタルの両方のメディアで接触した場合に過剰フリークエンシーになっていないかを評価するために、重複を除いた“人”ベースの計測指標で測定していくことが重要となっている。
テレビを視聴しない若年層の傾向
若年層の大多数がリニアテレビを視聴している一方で、23%は視聴していないこともわかっている。リニアテレビを視聴しない若年層は、利用するインターネット動画サービスの数も少ない傾向にあり、31%は無料のインターネット動画や投稿動画などのカテゴリーのうち、ひとつの動画カテゴリーのみを利用する傾向がみられている。つまり、リニアテレビを視聴しない人が利用するインターネット動画サービスは分散化しているため、より多くの人にリーチするためにはさまざまなサービスをメディアプランに取り入れることが必要という見込みだ。

また、リニアテレビ視聴者のうち82%の人は動画コンテンツを見ながら別のことをすることがある、と回答している、非視聴者では63%にとどまっている。「バラエティー」、「ニュース」、「国内ドラマ」などのコンテンツは「ながら見」されやすい傾向がみられるが、このようなカテゴリーでもリニアテレビの非視聴者では、「ながら見」する割合は一桁にとどまっている(図表3)。つまり、リニアテレビを視聴しない人は、動画を視聴する際にコンテンツに集中して視聴する特徴があるため、コミュケーションを図る際にも、注目してもらい覚えてもらうきっかけに繋がりやすくなるといえる。マーケティング担当者にとり、このような動画コンテンツの活用は、効果的にコミュニケーションをしていくひとつの手段になると予測される。
調査概要
調査期間:3月7日~16日
調査方法:パソコン、従来型携帯電話、スマートフォン、タブレットいずれかのデバイス
調査人数:約2800人
調査対象:月1回以上インターネットを利用している日本全国の15才(高校生)以上の男女