育児・介護休業法が改正され、子どもが産まれる従業員に対して、4月から育児休業制度の周知や取得意向の確認などが企業に義務付けられた。また10月からは産後パパ育休(出生時育児休業)制度もスタートする。子どもが産まれた後8週間以内に4週間まで休むことができるようになり、男性の育休取得を促進する動きが進んでいる。
厚生労働省によると、2020年の育休の取得率は、女性が81.6%に対して男性は12.7%と、女性の社会進出や共働き世帯の増加などで「家事や育児は女性がする」という固定観念は徐々に変わってきたものの、男性が育休を取るのは当たり前ではないのが現状である。

2021年に国連児童基金(ユニセフ)が発表した「先進国の子育て支援の現状」報告書では、父親に認められている育休の期間が最も長いなどの理由から、日本の育休制度を世界41カ国中1位と評価している。その一方で、男性の就学前教育や保育への参加率は31位と、取得が進んでいない理由は、制度面以外にあることがうかがえる。

積水ハウスが男性育休の実態を明らかにするため、2021年に発行した「男性育休白書 2021 特別編」では、男性の育休取得に賛成する人が全体で9割近くとなっているものの、経営者・役員の約4人に1人は反対しており、経営層の理解の低さにも課題があることが判明した。
部長クラス以上のマネジメント層でも意見が分かれるようで、男性の育休制度を促進させる予定が「ある」と「ない」の回答者がほぼ半数という結果になっている。(「促進予定」52.3%、「促進予定なし」47.8%)

促進しない理由としては、「企業規模が⼩さい」「従業員の⼈数が少なく、休業中の従業員の代替要員の⼿当ができない」「休業する従業員以外の従業員の負担が⼤きい」などが挙げられ、部下に育休を取らせたいものの、快く後押しできない切実な事情を抱えている様子がうかがえる。
積水ハウスグループの男性育休制度は、最初の1カ月は有給休暇で、4回まで分割ができるようになっており、5月末時点で1319人の男性従業員が1カ月以上の育休を取得し、2019年の制度開始以来、取得率は100%が続いている。

男性の育休取得を積極的に推進しているのは社長の仲井嘉浩氏であり、2018年にスウェーデンを視察で訪れた際、公園でベビーカーを押している男性をたくさん見かけ、話を聞いてみると、スウェーデンでは男性が3カ月の育休を取得するのが当たり前だということを聞いて衝撃を受けたことがきっかけだという。「自社にも男性が育休を取れる仕組みをつくりたい」と考え、帰国後2カ月ほどで、制度を設計し社内外に発表した。

またこの取り組みで得たメリットや課題などの気づきを世の中に還元することで、男性の育休取得を日本全体に広げていきたい思いから、9月19日を「育休を考える日」と記念日として制定し、毎年9月には「男性育休白書」の発表や、Webフォーラムなどを通じて、男性育休についての議論を広く公開している。さらに、「とるだけ育休」にならないよう、育休中の質を向上させることが必要不可欠だと考え、積水ハウスグループでは、会社に提出する「取得計画書」のほかに、妻とのコミュニケーションツールとして「家族ミーティングシート」を作成し、家族内のコミュニケーションを促している。

育休前の業務引き継ぎを通じて、業務の内容の見える化や見直しが進むこともあるほか、育休を取った経験から「助け合い」「お互いさま」といった感謝の気持ちが芽生え、他の従業員が休みを取るときにフォローするようになり、女性の社会進出・家事育児の両立への理解が深まるなど、今後やって来る“大介護時代”を見据えた仕事と介護の両立について考える機会にもつなげていきたい考えだ。