日本オラクルは6月20日、「ユーモアを取り入れたマーケティングに関する意識調査」の日本における調査結果を公表した。同調査は、1月3日から27日の間、21歳以上の消費者とビジネスリーダーを含む約1万2000人を対象に行われ、日本は約1000人が対象となった。ビジネスリーダーは、世界14カ国のマーケティング、セールス、カスタマー・サービスに関わる3125人となっている。
昨今、日本でも幸福と訳されることが多いウェルビーイングがビジネスの場でも注目されている。今回の調査結果によれば、人々は、笑顔になり幸福感を得られる新しい体験を求めており、ユーモアを取り入れたブランドに対してはロイヤリティが高まる一方、そうでないブランドからは離れる傾向にあることが判明した。

調査結果は以下の通り。

調査結果

【1】人々は新しい形で幸福感を得る方法を探しており、そのためにはコストを惜しまない傾向に
これまでの2年間において、環境が大きく変化し、45%の人が幸福感を得られていないと回答。84%は、笑顔になり、幸福感を得られる新しい体験を求めているとの結果がみられた。幸福感を得るために人々が優先していることとして、健康に気をつかうとした人が84%、個人的な付き合いをすると答えた人が82%となっている。

幸福感については、「お金で幸福感を買えたらよい」と考えている人が48%を占め、79%においては「真の幸福感のためには割高でもよい」と回答している。人々はコストに関係なく、再び幸福感を得られる方法を模索しており、87%の人がコロナ禍でのオンラインショッピングでそれらを得ようと試み、42%は荷物を受け取る瞬間に実際に幸福感を得られた、と答えている。

【2】広告、マーケティングにおける顧客とのやり取りで求められる変化
消費者がブランドで心が和むような新しい体験を求めている一方で、企業はブランドがユーモアを用いたマーケティング施策をあまり活用していないと認識している。やり取りにユーモアを用いる際の顧客との関係を懸念していることが理由と考えられている。

56%の人が、ブランドは顧客に幸福感を届けるためにもっとできることがある、と考えており、89%の人がブランドは面白い方が良いと回答している。この数値は、ミレニアル世代においては89%、続くZ世代においては92%と高い傾向にある。

広告の与える印象として、84%の人が面白い広告のほうが記憶に残る可能性が高いと回答しているにも関わらず、自社ブランドのオフライン広告(テレビや看板広告)やオンライン広告におけるユーモアの積極的な活用は、企業の回答によるといずれの方法でも32%にとどまっている。

思わず微笑んでしまうような販売方法や、ユーモアのある営業担当者から商品を購入する可能性が高いと思う人が52%を示しているのに対し、自社ブランドの販売においてユーモアを活用している、と答えた企業はわずか20%であった。

SNSでユーモアのあるブランドを目にした際、フォローすると回答している人は56%であったが、自社ブランドが該当していると認識している企業は30%と少ない割合となっている。また、48%の人がメールの件名が面白ければそのブランドからのメールを開封すると回答している。これに対し、メールのマーケティングキャンペーンにユーモアを積極的に活用している、と回答した企業は45%だった。

【3】企業はユーモアの活用にメリットを感じつつ、マーケティング施策に用いることに躊躇
ユーモアを取り入れたブランドは支持され、ロイヤルティが高まり、顧客が再び購入したいという気持ちにさせる一方で、そうではないブランドからは人々が離れていくというデータもある。

62%の人はブランドから普段、幸福感を得られる体験がない場合、そのブランドから離れるであろうと回答を寄せている。この数値は、グローバル平均値41%に対して、日本は調査対象国の中で最上位になっており、こういった傾向が強いことが明らかとなっている。

ユーモアを用いることでCXの向上が可能となり、顧客を笑顔にできると考えている企業が83%である一方、実際の現場で顧客とのやり取りにユーモアを用いることに躊躇している割合は85%。そして、79%がユーモアのあるブランドを再購入する可能性を持ち、同割合で競合他社よりもそのブランドを好む、と回答している。また、家族や友人にそのブランドを進める人が74%、そのブランドに対してさらにお金を使う、と答えた人も61%に上った。

ユーモアを活かしたビジネスを行ううえで、企業の84%はユーモアをうまく伝えるために必要なデータやインサイト、ツールがないと回答しており、顧客とのエンゲージメントにおいて、相手を把握するツールや人工知能などの先進技術にアクセスできれば、自信を持ってユーモアを用いることができるとしている。

考察

同調査を行ったグレッチェン・ルービン氏は、この数年間で人々はつらい時間を過ごし、幸福感を得られていないと感じる割合が世界的に増加したと分析する。人々は笑顔を求め、心が和むような体験を望んでいるが、それらがブランドによって与えられる可能性があると考える。ブランドはデータを得て、より顧客を知ることが重要となり、そうすることで、パーソナライズされたブランド・エクスペリエンスを提供し、ロイヤルティを高め、ブランド支持者を増やすことにつながるとルービン氏は言及した。

また、同社のCX担当ロブ・ターコフ氏もブランドはデータをCX戦略の中心に据える必要があるとしている。同調査において、顧客に幸福感を与える要素のなかから最も抽象的といえる「ユーモア」に着目し、結果として多くの企業が顧客の笑顔を増やしたいと願い、幸せにしたいと考えていることが導き出された。ターコフ氏は、これらの事実は、顧客と真のつながりを築くための重要な要素であるとしている。