ブランド総合研究所は、国内有力企業のSDGsの取り組みを消費者視点で評価する「企業版SDGs調査2022」を実施した。20歳以上の男女を対象に、7月27日から30日にかけてインターネットで調査を実施し、各社1000人(1人の回答者には10社について評価)となるように計2万6000人の回答を集めた。その結果、最も評価が高いのは3年連続でトヨタ自動車、2位はイオン、3位はユニクロとの結果となった。
世界中で企業によるSDGsへの取り組みが進み、各社もその方針や状況を発信することで、企業評価の向上にも影響が見られるようになった。今回は、日本の有力企業260社を対象として、こうした活動が一般消費者にどのくらい認知・理解され、評価されているのかを数値化する調査を実施した。その結果、最も評価が高いのは3年連続でトヨタ自動車となった。

同調査は、SDGsに関する設問と、企業評価に関する設問から構成。調査対象は業界別に売り上げ規模の大きな企業と、SDGsやESGに積極的に取り組んでいる企業を中心に、ブランド総合研究所が独自に260社を選出した(2021年は210社)。SDGsに関する設問は、SDGsの認知、企業のSDGs取組評価、17ゴール別の評価、情報入手経路、ESGイメージの5項目、企業評価に関する設問は企業認知、好感度、利用経験、就職意欲、投資意欲の5項目となっている。

2位はイオン、3位はユニクロ

SDGsの取り組みが最も評価されている企業はトヨタ自動車が27.7点で3年連続1位となった。SDGsに「本格的に取り組んでいる」が18.3%と多く、他社より5ポイント以上も多い。逆に「全く取り組んでいない」「あまり取り組んでいない」との否定的な回答が6.0%と少ない。
2位にはイオンが22.1点で、前年の5位から上昇した。前年2位だったユニクロは21.7点で3位となったが、点数は前年の21.3点よりわずかに上昇している。(数字が同じでも小数点2位以下が異なる場合は順位が異なる)

前年も調査対象だった210社のうち、約75%にあたる157社は前年よりSDGs評価の点数が上昇している。そのなかで、前年からの伸びが最も大きかったのは11位のヤクルト。同社を「本格的に取り組んでいる」と評価した人は10.9%で前年の7.4%より増え、点数は14.7点から19.3点へと大幅に増加した。

ランキング上位のパナソニック、日本マクドナルド、アサヒビール、富士フイルム、本田技研工業、キユーピーなども大きく点数を伸ばしている。

ゴールでは「働きがい・経済成長」「産業と技術革新」の評価が高い

調査対象の企業に対して、17のゴールのなかから各社が取り組んでいると思うものを選んでもらった。その結果を、260社の平均が高いゴールから順に並べ、同時に、260社中最も高かった企業の結果も比較できるようにした。
最も平均値が大きかったのは「8.働きがいも、経済成長も」と「9.産業と技術革新の基盤を作ろう」の6.2%。ちなみに、この2項目とも最も高かったのはトヨタ自動車で、それぞれ12.1%、16.0%だった。

「6.安全な水とトイレを世界中に」は、260社の平均が3.5%だったのに対し、最大値となったのはTOTOの20.6%だ。同様に「7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」はコスモ石油の18.7%となった。いずれも関連する業界の取り組みがよく知られているケースと言える。なお、前年より平均点が伸びている項目が多い。

SDGs評価に影響が大きい「陸の豊かさ」「作る・使う責任」「平和と公正」

次に、どのゴールに関する活動が各社のSDGs取り組みの評価につながりやすいかを分析した。「重回帰分析」という手法において、目的変数をSDGs評価、説明変数を17のうち「パートナーシップで目標を達成しよう」を除く16のゴールに設定して、260社の結果を使って分析した。その結果から、重回帰係数の大きい項目から順に並べたのが下のグラフとなっている。数字(係数)が大きいほど、SDGs評価に与える影響度が大きいことになる。
最も影響が大きいのは「15.陸の豊かさを守ろう」で、次いで「12.作る責任、使う責任」、「16.平和と公正をすべての人に」、「8.働きがいも、経済成長も」の順となった。例えばある企業に対して消費者の10%が「陸の豊かさを守ろう」を評価した場合、理論上はSDGs評価が3.5ポイント上昇することになる。したがって、係数の大きい項目で大きく評価を伸ばすことが、企業のSDGs評価を高めるには効果的であるということになる。

ESGでは「商品やサービスの信頼」がトップ

同調査では、各社のESG活動への評価についての質問も設けた。その結果、260社平均では「商品やサービスが信頼できる」の評価が最も高く、9.8%だった。次いで「環境に配慮している」で7.8%。そして「社会貢献活動をしている」で7.1%となった。
前年の調査と比較可能な210社の結果で比較すると、これらの項目のなかで前年より平均が高くなったのは「若い世代を活かしている」(前年は4.5%)だけで、ほかの項目はすべて前年より低下している。

SDGsゴールで伸びている項目が多い一方、ESG項目は低下しているものが多いといった相反する結果となった。