Dentsu Lab Tokyoは、3月12日から15日に開催された世界最大級のテクノロジーと音楽・映画の祭典「SXSW 2023(サウス・バイ・サウスウエスト2023)」にて、ベスト型ハグ体験テクノロジーを用いたプロジェクト「Hugtics」の最新作を発表した。

同社は、「ハグ」による幸福感や自己肯定感を高める新しいメンタルヘルスを目指している。同プロジェクトでは、ハプティクス技術(触覚を擬似的に再現する技術)を用いてハグのデータを計測し、自身や他者の体へアウトプット。さらにその効果を脳波で測定し、メンタルヘルス領域を始め、多様な社会課題に貢献していく。初披露の場となるSXSW2023では、 “自分で自分を抱きしめる”新しいハグ体験や他者のハグを転送する体験型デモンストレーションに挑戦した。

「Hugtics」制作背景

医療技術が発展し平均寿命が伸び続ける一方、うつ病をはじめ精神面の課題を抱える人々は世界的に増え続けている。こうした状況の中、精神的な健康を目指す「メンタルヘルス」が注目を集めている。

「ハグ」は脳の中で分泌されるオキシトシンというホルモンが分泌され、人と人との信頼や愛着を強めたり、ストレスを低減させたりする効果があり、幸福感が増すとされている。ハグの力を、さまざまな場面で人の心を通わせ豊かさを感じるきっかけ作りとすべく、同プロジェクトは発案された。

テクノロジーによって時間、距離、概念までを越えた新しいハグへと進化させ、幸福の総量を生み出したいという思いから、まずはじめに自分で自分を抱きしめる新しいハグ体験に挑戦している。

「Hugtics」技術について

「Hugtics」の体験を実現するにあたり、研究者の髙橋宣裕氏とコラボレーションを行った。コア技術は人工筋肉が編み込まれたウェア型デバイス。このウェアを着ながら圧力センサーを付けたトルソーを抱きしめ、ハグのデータを計測し、人工筋肉にフィードバックすることで、自分で自分を抱きしめるという未知の体験を可能とする。

さらに、電通サイエンスジャムの「感性アナライザ」を用いて脳波をセンシングし、ハグ時の幸福度に関連する複数の感情変化を計測。その効果を独自のアルゴリズムで可視化し、ベスト型ウェアに内蔵したLEDの色に反映し、直感的に効果がわかる仕様となっている。

また、ベストと人工筋肉をセットにすることで人工筋肉をより面での圧力に変え、ハグの感覚に近づけた。実際に自分自身をハグすることは難しい中、同社はテクノロジーの力でそれを実現させ、今後ハグのデータで医療、孤独対策、メタバースなど、多くの分野にわたる課題に挑戦し、アップデートしていく。
トルソーを使用してハグのデータを計測
トルソーを使用してハグのデータを計測
人工筋肉にデータをフィードバック
人工筋肉にデータをフィードバック