Vol.54 自分の視点でなく他者の視点で「あるべき姿」を描くこと キャリアアップナビ
キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、BRUNO(ブルーノ)で商品統括部 統括部長を務める星野智則(ほしのとものり)さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
──新卒で都市銀行を選んだ理由を教えてください。
僕はゼネラリスト志向なので、大学卒業後はビジネスの幅広い知識を身に付けたいと思い、銀行に就職しました。銀行では主に法人営業や審査を経験し、中小企業を中心とする顧客に対して、事業の運転資金や設備資金などを融資する仕事をしました。当時、取引先の社長や財務・経理部長から教えていただいたことは、間違いなく僕のキャリアの基盤になっています。
ただ、さまざまな業種業態を見ることはできたものの、銀行の仕事は実際の経営とは少し距離があるように感じていました。仕事は好きでしたが、事業会社に行ってビジネスのど真ん中を経験したいという気持ちが強くなり、転職を決めたんです。
医薬品メーカーなど2社を経て、2007年に健康ホールディングス(現:RIZAPグループ)に入社しました。M&Aによる事業の多角化を進めている時期で、僕は買収した子会社の経営再建を担当するセクションに入社。各社の企業価値の向上がミッションでした。
中でも成長が期待されていた美容メーカーのジャパンギャルズでは鍛えられましたね。取締役として、自分で考えて決断し、結果に責任を持つ立場は初めてでした。高い業績目標を目指す中、創業オーナーからは「営業部門は任せた」と言われ、修羅場だらけでした(笑)。失敗体験も含め大きな経験値になったと思います。
現在、商品統括部長を務めるグループ傘下のBRUNO(旧:イデアインターナショナル)は、インテリア雑貨などの企画・販売を行う会社です。僕は2014年にプロモーション領域も管轄する販売統括として転籍。上場後、なかなか売上が伸びずに苦慮していた時期でした。
それまではどの会社でも、経営層やスタッフと話し、決算書や伝票を見ていくうちに、会社の強みが浮き彫りになりました。そこを重点的に強化すれば、売上を伸ばすことができたのです。
ところが、BRUNOはそうはいきませんでした。社内でインタビューを重ねても、イメージが全然湧かなくて…。そこで、元銀行員の本領を発揮することにしました。融資審査を幾度も経験したので、数字から仮説を立て、検証する力が身に付いていました。数字の方から語ってくる感覚があるというか。
最も役に立ったのは、数字の相関性を見抜く能力です。当社で導入したブランド調査の結果から、当社のブランドの興味関心層は「ギフト関心層」という切り口と相関性が高いという事実を発見しました。「ギフトとして贈りたくなるおしゃれなブランド」を「あるべき姿」としてブランディングしていくことが、BRUNOがこれから生きていく道だと確信したのです。
──現在のお仕事を教えてください。
BRUNOは2022年に組織改編をしました。同時に僕も商品部門を統括するポジションに。すでにある商品をどう売るかという思考だったのが、現在は商品企画の段階でマーケット調査を行い、商品の「あるべき姿」を描くことから始まります。
商品をつくる上で大切なのは、この「あるべき姿」を描くことにほかなりません。そのとき軸になるのは、自分たちがつくりたいものではなく、お客さまがブランドに対して求めているもの。どういうブランドであってほしいかというお客さまの気持ちです。 ──キャリア形成でも同じ考え方でしょうか。
はい、キャリア形成においても、他者の視点で自分自身の「あるべき姿」を描く姿勢が大事だと思います。つまり、自分が何をしたいかだけではなく、他者が自分に何を期待しているのかを常に問うのです。
若い人は、自分の強みを生かした仕事がしたいと言う。でも、本当の強みは、自分では意外とわかっていないものです。だから、誰かに何かを頼まれたら、まずはやってみてほしい。頼まれるのは、客観的にはそれができる人材に見えているから。そこにこそ自分の強みが隠れているかもしれません。経験を積み重ねた先に、自分だけのキャリアができていくのだと思います。
仕事も同じです。僕はジャパンギャルズの取締役になったとき、「あなたは工場の現場のことを知らなすぎる。2週間ラインに入ってみた方がいい」と言われた。それで、愛媛県の工場で、白衣を着て製造工程に加わり、梱包作業もやりました。真剣に取り組むうちに、梱包不良によるロス率を肌で感じるようになって。それを発生させないためにはどんな外箱であるべきかが見えてきたんですね。
一見、小さな仕事にも、「あるべき姿」が必ずあります。それはやってみなければ見えてきません。達成するべき価値が見えているだけで、仕事の完成度やそこから得られる学びの量と質は大きく変わります。好き嫌いせず、自分にとっての要不要を決めつけず、いろんな仕事にトライしてみてほしいと思います。
僕はゼネラリスト志向なので、大学卒業後はビジネスの幅広い知識を身に付けたいと思い、銀行に就職しました。銀行では主に法人営業や審査を経験し、中小企業を中心とする顧客に対して、事業の運転資金や設備資金などを融資する仕事をしました。当時、取引先の社長や財務・経理部長から教えていただいたことは、間違いなく僕のキャリアの基盤になっています。
ただ、さまざまな業種業態を見ることはできたものの、銀行の仕事は実際の経営とは少し距離があるように感じていました。仕事は好きでしたが、事業会社に行ってビジネスのど真ん中を経験したいという気持ちが強くなり、転職を決めたんです。
医薬品メーカーなど2社を経て、2007年に健康ホールディングス(現:RIZAPグループ)に入社しました。M&Aによる事業の多角化を進めている時期で、僕は買収した子会社の経営再建を担当するセクションに入社。各社の企業価値の向上がミッションでした。
中でも成長が期待されていた美容メーカーのジャパンギャルズでは鍛えられましたね。取締役として、自分で考えて決断し、結果に責任を持つ立場は初めてでした。高い業績目標を目指す中、創業オーナーからは「営業部門は任せた」と言われ、修羅場だらけでした(笑)。失敗体験も含め大きな経験値になったと思います。
──事業会社に転職後、銀行経験は活きていますか?
現在、商品統括部長を務めるグループ傘下のBRUNO(旧:イデアインターナショナル)は、インテリア雑貨などの企画・販売を行う会社です。僕は2014年にプロモーション領域も管轄する販売統括として転籍。上場後、なかなか売上が伸びずに苦慮していた時期でした。
それまではどの会社でも、経営層やスタッフと話し、決算書や伝票を見ていくうちに、会社の強みが浮き彫りになりました。そこを重点的に強化すれば、売上を伸ばすことができたのです。
ところが、BRUNOはそうはいきませんでした。社内でインタビューを重ねても、イメージが全然湧かなくて…。そこで、元銀行員の本領を発揮することにしました。融資審査を幾度も経験したので、数字から仮説を立て、検証する力が身に付いていました。数字の方から語ってくる感覚があるというか。
最も役に立ったのは、数字の相関性を見抜く能力です。当社で導入したブランド調査の結果から、当社のブランドの興味関心層は「ギフト関心層」という切り口と相関性が高いという事実を発見しました。「ギフトとして贈りたくなるおしゃれなブランド」を「あるべき姿」としてブランディングしていくことが、BRUNOがこれから生きていく道だと確信したのです。
──現在のお仕事を教えてください。
BRUNOは2022年に組織改編をしました。同時に僕も商品部門を統括するポジションに。すでにある商品をどう売るかという思考だったのが、現在は商品企画の段階でマーケット調査を行い、商品の「あるべき姿」を描くことから始まります。
商品をつくる上で大切なのは、この「あるべき姿」を描くことにほかなりません。そのとき軸になるのは、自分たちがつくりたいものではなく、お客さまがブランドに対して求めているもの。どういうブランドであってほしいかというお客さまの気持ちです。 ──キャリア形成でも同じ考え方でしょうか。
はい、キャリア形成においても、他者の視点で自分自身の「あるべき姿」を描く姿勢が大事だと思います。つまり、自分が何をしたいかだけではなく、他者が自分に何を期待しているのかを常に問うのです。
若い人は、自分の強みを生かした仕事がしたいと言う。でも、本当の強みは、自分では意外とわかっていないものです。だから、誰かに何かを頼まれたら、まずはやってみてほしい。頼まれるのは、客観的にはそれができる人材に見えているから。そこにこそ自分の強みが隠れているかもしれません。経験を積み重ねた先に、自分だけのキャリアができていくのだと思います。
仕事も同じです。僕はジャパンギャルズの取締役になったとき、「あなたは工場の現場のことを知らなすぎる。2週間ラインに入ってみた方がいい」と言われた。それで、愛媛県の工場で、白衣を着て製造工程に加わり、梱包作業もやりました。真剣に取り組むうちに、梱包不良によるロス率を肌で感じるようになって。それを発生させないためにはどんな外箱であるべきかが見えてきたんですね。
一見、小さな仕事にも、「あるべき姿」が必ずあります。それはやってみなければ見えてきません。達成するべき価値が見えているだけで、仕事の完成度やそこから得られる学びの量と質は大きく変わります。好き嫌いせず、自分にとっての要不要を決めつけず、いろんな仕事にトライしてみてほしいと思います。